アメリカ_協同組合形式での不動産所有(1)_1351

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1351回 弁護士 鈴木淳司
Jan 31, 2023

 このところ、私の所属する事務所で今年の夏から研修を受けるインターン生のインタビューを行っています。
東海岸からもわざわざ来ていただいたりしていて、色々話が聞けて面白いものです。
皆さん、本当に色々な理由があって、法律を勉強されているのだな、と思います。
まだ、誰を選ぶのかはわからないのですが、皆さん優秀で感心させられます。
どういう形であれ、私の所属する事務所に関わってくれている若手には、弊所での経験を踏み台にして、素晴らしい法曹になってもらいたいなと心から思います。
皆さんは、どのように1月末をお過ごしでしょうか。
もう少しでスーパーボールですね。

アメリカ_協同組合形式での不動産所有(1)_1351

 さて今回から皆さんからいただいている新しい質問をまた皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 いただいている質問をまとめると「ベイエリアの不動産が高騰していているのですが、友人から Cooperative という形で不動産の所有者になってメリットが大きいと聞きました。普通に家やマンションを買うときに比べて、この Cooperative という形態にどのようなメリットがあるのか、わかりません。」という質問をいただきました。

Cooperativeとは?

 ベイエリアの一部で、この「Cooperative」という形態の家の所有が注目を浴びているというニュースが以前ありましたが、今回いただいた質問を使って皆さんと一緒に考えていきましょう。

 まず、「Cooperative」というのは、日本で言うところの「協同組合」ということになります。
協同組合というのは、一般的に言うと、一人ひとりのメンバーが共通の経済的な目的を持ち、自発的に力を合わせてその目的達成のために作る組織です。組合員であるメンバーが、その事業の運営を行い、一方でその事業から発生する利益を享受するという仕組みをつくる形になります。

 そして、協同組合の出資者は基本的に一人ひとりが同じ目的達成のために能動的な活動を行うことが前提とされています。

 ですので、協同組合においては、(異なる設定もありますが)、基本的にはメンバーが一人一票を持ち、目的達成のために活動を行うということになります。これは世界共通の考え方です。

カリフォルニアにおける協同組合

 それでは、カリフォルニア州では協同組合はどのように存在するのか考えましょう。

 多くの協同組合は、株式会社のように法人化しているところが多いです。一般的に「株式会社」と聞くと、株を発行し資金を調達し運営される、というイメージを持たれるでしょう。

 そして、オーナーである株主は直接的には経営に口を挟まずに、会社に生じる配当などの利益を享受する、いわゆるパッシブな立場であるというのが一般的だと思います。

 皆さんも株を買われている方もいると思います。株を買うときに、その株が将来的にどの程度儲かるのか、ということを前提に投資をしますよね。

 その企業がどのような活動をしているとしても、儲からない会社には投資をしない、ということになります。そして、会社も利益を生むような努力をして株主に還元するということを目標にするわけです。

 このような営利、すなわちお金儲けを目的にしている株式会社もあるのですが、協同組合としての株式会社も存在するのです。株主一人ひとりが同様の目的を持ちながら、運営にも関わるのです。

協同組合は互助要素が強い

 もともと協同組合というのは、運営するメンバー同士が相互に助け合って目的に向かうという、いわゆる「互助」の要素から成り立っています。

 営利の株式会社と色合いが違う部分は単にお金儲けを主眼にしているのではなく、それ以外の目的を強調しているところにあります。

 この互助の目的は様々なことが考えられます。

 森林保護など環境問題に取り組むことも考えられますし、今回の質問にあるように、メンバーで不動産を所有して相互に助け合って行くということも考えられます。安く質のよい食材を継続的に買うということも目的になると思います。一人では目的達成が難しくとも、人数が集まれば力になります。

協同組合を株式会社化するメリット

 このように目的を達成するために人が集まるのであれば、わざわざ会社なんて設立しなくてもいいじゃないか、と思われる方もいると思います。そのとおりで、メンバーが集まってちゃんと約束事を取り決めて、それに全員自発的に従って運営がなされれば十分に協同組合として機能すると思います。

 しかし、問題が起きたときにはどうでしょう。

 たとえば、協同組合の活動で、第三者に損害を与えた場合です。単に、個人が集まって組合を形成した場合、その個人一人ひとりが、第三者が負った損害を全額負わなくてはいけないことになりかねません。メンバーが同じ目的を持っているとはいえ、他のメンバーが生じさせた損害を全メンバーで被るというのは、酷な場合があります。そこで、株式会社という枠組みを利用して、メンバーひとりひとりの責任を限定するのです。

 株式会社とは、出資した範囲でのみ責任を負うというのが原則で、株式会社の責任は、個人の責任と切り離されます。

 そうすると、ある程度個人的な責任を限定できる一方で、全メンバーの持つ目的が達成可能になります。このようなメリットがあるので、協同組合も株式会社化するのが一般的なのです。

 また、小規模の協同組合であれば、LLC(有限責任会社)でも良いのですが、「Community Investor」と言い、株式会社化しておくと、第三者から投資を受けることも可能になります。税法的な観点も影響するのですが、株式会社化する協同組合が多いのには理由があるのです。

 次回続けて考えていきたいと思います。少々、抽象的なことを書きましたので、今回の法律ノートは難しかったかもしれません。
もし、疑問等があればいつでも法律ノート宛て(question@marshallsuzuki.com)まで、質問をしていただければと思います。

晴れの日が多くなってきましたが、まだ雨も多いベイエリアです。皆さんのお住いの地域はいかがでしょうか。春を待ちながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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