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Washington DC

19歳の娘は交際相手に問題あり。連れ戻せるか?(1)_1213

法律ノート 第1213回 弁護士 鈴木淳司
May 19, 2020

 週末に時間を見つけて木でできたデッキの床板を交換したり修復していたのですが、釘を打ち付けているところから木の痛みがでていることに気づきました。業界の人であれば「当たり前」なのかもしれませんが、なかなかじっくり見てみないと知り得ないことではあります。思ったのですが、湿気の問題もあるのでしょうが、伝統的に日本では釘を使わない工法が盛んに使われていました。宮大工さんの工法をみると芸術的だなと平面的に見ていましたが、実は釘を使わないことで建築物を長期保たせるための知恵という部分があるのかな、と思いました。日本の文化は奥深いですね。

19歳の娘は交際相手に問題あり。連れ戻せるか?(1)_1213

 さて今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。いただいている質問をまとめると「昨年カリフォルニア州の高校を卒業した娘(19歳)のことについてご意見を伺えると幸いです。高校のときから付き合っている同級生の男性と高校を卒業するあたりから同棲をはじめ、大学進学もせずに1年以上フラフラしています。親への連絡も怠りがちな状態です。この同級生の男性は21歳以下にもかかわらず酒浸りで、さらに最近になり、麻薬で逮捕されたということで、どうしても娘を私どもの家にいったん連れ戻したいのですが、何か法的な方法はないものでしょうか」というものです。

 たしか、以前法律ノート宛に類似の質問をいただきお答えしたと思いますが、もう一度ここで考えていきましょう。

親の監護権

 親の監護権が19歳の子に及ぶかということですね。

 アメリカ合衆国では未成年と成年の切り分けを18歳で行っています。どの州でも均一に18歳というのが成人という形で規定されています。これが原則となります。

 ところが、特別法があって、たとえば飲酒については21歳と引き上げて策定されています。    
 今回質問されている方も、飲酒については21歳なので、どうも飲酒をしているから親が何か言えないか、ということも書かれていますね。

 しかし、この飲酒についての21歳というのは政策的に引き上げられているので、自分のことについて自己決定権を行使できるのは、基本的に18歳(カリフォルニア州家族法6500条)からということになっています。例外的に日本の民法でいう成年擬制(Emancipation)は14歳から認められます(同州法7120条)。

自己決定権と成年擬制

 たとえば、親と離れて住む場合などが想定されています。
 また、婚姻した場合、軍隊に入隊した場合なども成年擬制が適用されます(同州法7002条)

 これらの例外はありますが、18歳になると、大人と同様に自分で法律上の権利を持ち義務を負うのです。

 ですので、たとえば契約も単独で締結できますし、投票の権利もあります。また、同様に政府などに対する義務も個人で発生します。

 18歳未満であれば、親などの監護者(Guardian)の許可を必要とする行為についても、18歳を境に個人で自由に行うことができます。裏から言うと責任も発生するのです。

21歳と飲酒

 飲酒については、アメリカは政策的に21歳までは禁止とされています。

 もともと禁酒法のあった国ですから、伝統的に酒に対しては厳しいところがあることや、車社会であることも今日の法規制に影響していますが、これは合法な酒類および薬物などについてのみ適用されるのであって、今回の質問のようなケースには、たとえ同居男性の酒問題があったとしても、娘さんにすぐに当てはまるということは考えにくいです。

親の立場でできることはないか?

 このように考えると、今回親の立場から、娘さんに対して監護権を行使して、「すぐに実家に帰ってこい」と命令することはできないわけです。もちろん、親として子が心配なのはもっともなことで、踏み込んで実家に帰るように説得することはなんら問題ありませんが、強制力のない「お願いベース」になってしまいます。

 そうすると、娘さんが自分の意思で戻らない限り18歳以上であれば、それ以上親が何かできることはない、ということになってしまいます。

 ただ、このまま放っておくわけにも行かないので、何か手を打たなくてはとやきもきされている気持ちもわかります。ただ、こういうときに弁護士に相談されたとしても、なかなか弁護士としてできる仕事は限られた状況になると思います。ですが、何かないかな、と考えるといくつかの方法論はありそうですので、次回続けて考えていきましょう。

 もう、コロナ自宅待機も解除されつつある方向ですが、油断すると怖いですね。本当に落ち着くまで体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。



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カリフォルニアの飲酒運転、許容範囲!?(1)_1180

法律ノート 第1180回 弁護士 鈴木淳司 Sep 30, 2019 アメリカ現大統領に対する弾劾調査がはじまるようです。ウクライナ政府に対して、アメリカ国内の来年の大統領選挙における政敵に関して調査をするように圧力をかけていた、ということが理由です。内部告発が発端ですが、告発文書を読むと暗澹たる気持ちになります。来年の大統領選挙にどのように影響するのかが関心事ですが、かりに弾劾調査が進まないと、原大統領の再選が確実になっていくのではないでしょうか。

カリフォルニアの飲酒運転、許容範囲!?(1)_1180

今回から皆さんからいただいている新しい質問について考えていきたいと思います。 いただいた質問をまとめると「カリフォルニア州の大学に留学している者です。学校内で色々なパーティーにも参加するのですが、田舎にある学校なので、飲酒をしたまま車で運転して帰っていく人たちも目にします。私はほぼ飲酒しないので、運転手として友人を送ったりしているのですが、会話のなかで、カリフォルニア州では血中アルコール値が0.08の濃度以上でなければ運転することは許されている、という話をしている人が複数います。しかし、絶対に飲酒して運転してはいけない、という人もいるので何が法律に違反するのか、わかりません。正確な情報を教えていただけないでしょうか」というものです。 今回質問をされている学生さんの質問原文を見ると、この学生さんのまっすぐな感じが伝わってきます。とても正義感の強い方なのだと思います。飲酒運転はいけない、ということで学校の友人たちと言い争いになったようです。ぜひ、今回の法律ノートを読み、正しい知識を広めてもらえれば良いと思います。

州ごとの法律は要チェック

車社会アメリカですから、飲酒運転というのはいつも影として存在するものです。最近ではライドシェアサービスなどが発達して、ずいぶん飲酒運転撲滅に貢献しているとは思います。しかし、いまでもなくなることはありません。飲酒に関する法律は、各州によって定められていますので、アメリカ国内で均一の法律があるわけではありません。 のちほど考えますが、血中アルコール濃度について、どこの線で法律に反するのか、州によっても違いがあります。 今回の法律ノートでは、カリフォルニア州の法律をもとに考えていきますが、他州で運転される方は、必ず適用される州法を参照されてください。

カリフォルニア車両法23152条

さて、カリフォルニア州における飲酒運転を司るのは、カリフォルニア車両法(Vehicle Code)23152条です。 まず、この条文をわかりやすく考えていきましょう。 さて、この23152条ですが、2つのコンポーネントにわかれています。(a)項と(b)項という規定になっています。 (a)項に関しては、飲酒の影響下で運転をするのは違法である、とだけ規定されています。 そして、(b)項は、血中アルコール濃度が0.08%(逮捕時から3時間以内に計測されれば良い)以上の状態で運転をするのは違法である、と規定されています。 この血中アルコール濃度というのは、100ミリリットルの血の中、または210リットルの呼気の中、何グラムアルコールが含まれているのかで計算されます。この計算方法はかなり細かいところまで争われることがありますが、ビール小瓶1本程度でも、0.08%でる人もいますし、体調、睡眠時間、体格などでも、変わってきます。携帯用の呼気検査器具なども売られていますが、日によっても変わるものです。

「飲酒の影響を受けた運転」とは?

この2つの項目を見ると、まず、(b)項ですが、血中アルコール濃度が0.08%以上検出されれば、運転手はいかに交通法規にしたがった運転をしていてもアウトということになります。 一方で、(a)項は、単に飲酒の影響下での運転は違法としているところが違うのです。一体どういうことでしょうか。 (a)項は、飲酒で影響を受けた運転をしている場合を規定していますので、飲酒が少々あっても、交通法規に従って運転していれば、場合によっては「飲酒で影響を受けていない」という申し開きが可能ではあります。 ただ、この可能性は画餅であるのが実務ではあります。

現状はアウトと考えるべき

このような構造になっているので、血中アルコール濃度が0.08%入っている状況で運転していれば、運転しているだけでアウトとなりますが、0.08%未満の場合には、「飲酒で影響がある運転」をしている場合にアウトになります。蛇行運転や、交通違反がある場合が最たる理由であろうと思います。ここから次回続けていきたいと思います。 日が短くなってきていることを体感すると、「秋だなぁ」と感じますね。陽の照りが収まってくると、日中、外でのアクティビティも楽しくなりますね。冬が来る前に、秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[2]

法律ノート 第1016回 弁護士 鈴木淳司
July 18, 2017




 
日本は「海の日」だそうで、三連休羨ましいものです。「ゆとり」を意識しているのかはしりませんが、この20年で、三連休がたくさんできているようですね。とはいっても東京都知事選もあるし、あわただしかったりもするのでしょうか。日本の皆さんが、のんびり過ごされると良いと思います。
 
機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[2]
 
さて、「先日、日本から出張でアメリカに行きました。帰り(日本行き)の飛行機のなかで、ワインをもらって飲んでいたのですが、疲れもあって酔ったようです。さらにワインを頼んでも、客室乗務員に出してもらえず、やむなく免税店で買ったウイスキーを開けて飲んでいました。そうすると客室乗務員と口論になり、ウイスキーを取り上げられただけではなく、最後には手錠のようなものをはめられ空港で警察に調書を取られました。現在日本では更なるトラブルになっていないのですが、今後問題になるのでしょうか。」という質問を前回から考えてきましたが、今回続けて考えていきたいと思います。
前回、今回のケースでは、アメリカの法律が主に適用されるシナリオだということを考えました。
 
航空乗務の妨害行為
アメリカでは、連邦の法律で、航空乗務をする人達の仕事を妨害する行為について、かなり厳しく明確な条文が用意されています。
航空機の乗務員の仕事を妨害する罪(49 U.S.C. 46504)として規定がありますが、乗務員に対して、暴行、脅迫などを既遂、未遂を問わず行った場合には、最高で20年間の禁錮となる刑となっています。かなり深刻な罪ということになっています。
この罪は、酔っ払っていた場合など、あとになって「あの時酔っていたのでよく覚えていません」と言っても許されないように規定されています。大体酔っぱらいが騒ぐことを前提にしていると考えられます(判例でいうと、United States v. Meeker, 527 F.2d 12 (9th Cir. 1975).などが挙げられます)。
六本木や新宿のキャバクラやクラブで騒いで問題を起こすレベルとはまったく次元の違う罪に問われることになるわけです。
 
乗務員の真の役割はフライトの安全確保
 
乗務員は、ただ単に飲食物を提供したりする役割ではなく、フライトを安全にするための一般的な重い役割を負っているとアメリカでは考えられています。これは一般論です。
日本でもアメリカでもかわりなく乗務員の教育は行われていますが、一般の人達が期待する役割としては、アメリカの方が、より「安全確保」ということに主眼が置かれている考え方をしている傾向にあると思います。
 
日本法の適用は微妙。しかし米法適用の可能性
 
今回の質問をされている方のケースでは、日本で警察に行ったとしても調書を取られておしまい、ということになるかもしれません。日本の法律の適用が微妙だからです。そうすると、今後日本の警察や検察が動くということはないかもしれません。
一方で、アメリカの航空会社のクルーの人達は、アメリカに帰属する航空機内で起こったことですので、上記の連邦法が適用される可能性が大きいので、現地の警察に「一応は」届出をすることにはなります。
私も以前似たような事案を担当したことがありますが、日本では何も罪に問われませんが、日本で取られた調書をもとに、アメリカの検察局に被害届を出す場合がほとんどです。航空会社のプロトコルでそのように決まっているようです。
そうすると、アメリカでは充分に罪になり得ますので、この事件はアメリカの検察局によって起訴相当かどうかが決まります。かりに起訴が決まった場合には、すぐに逮捕されるということはないとは思いますが、現在では連邦検察局と移民局が情報共有をかなりの範囲で行っていますので、次回アメリカに入国するときに、入国管理局に逮捕されて、裁判に移行していくということになりそうです。
今現在、日本国内にいらっしゃって問題になっていないかもしれませんが、次回、渡米されるまでに、一応アメリカで、起訴がされていないか、何か逮捕状が存在しないか、など、弁護士に相談するなりして確認する必要があると思います。
 
カリフォルニアは、まだまだ水不足が解消していませんが、火事に気をつけて、アウトドアを楽しんでいきましょう。夏の暑い日が続きますが、また一週間夏バテを気にしつつまた一週間がんばっていきましょうね。




 
 

機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[1]

法律ノート 第1015回 弁護士 鈴木淳司
July 12, 2016




 
 
一方で、警察官による暴行が問題になり、他方でスナイパーによる警察官の射殺など、銃による問題が露呈したアメリカの一週間でした。銃は怖いです。猟などで必要になる場合もあるでしょうが、マシンガンなどの自動小銃はどうみても生活にも職業上も不要だと思います。私が学生の頃、ある教授が刑法にいう正当防衛というのは、銃が一般人の生活に登場してから、発展した概念だ、ということをおっしゃっていました。今では警察官が一般人を撃つときにグレーなケースでも第一の理由付けになってしまったように思います。アメリカの影の部分でしょうか。
 
機内で飲酒、トラブルに。その後の米国入国に問題ない?[1]
 
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
頂いている質問をまとめると、「先日、日本から出張でアメリカに行きました。帰り(日本行き)の飛行機のなかで、ワインをもらって飲んでいたのですが、疲れもあって酔ったようです。さらにワインを頼んでも、客室乗務員に出してもらえず、やむなく免税店で買ったウイスキーを開けて飲んでいました。そうすると客室乗務員と口論になり、ウイスキーを取り上げられただけではなく、最後には手錠のようなものをはめられ空港で警察に調書を取られました。現在日本では更なるトラブルになっていないのですが、今後問題になるのでしょうか。」というものです。
 
飛行機で飲酒することの意味合い
 
私も飛行機に乗ると必ずと言って良いほどお酒を呑みますが、たしなむ程度にしています。もちろんお酒を飲むことは悪いことではありませんが、人に迷惑をかける飲み方はかっこよくありません。
今回質問されている方も、あまり悪いとは思っていないようですが、客室乗務員の指示に従わないと場合によっては、刑事上の罪に問われる場合もあります。
質問をまとめたので、かなり割愛した部分はありますが、今回質問された方は最後に身柄を拘束されるまで結構派手にやられたようです。酒癖があまりよろしく無いのかもしれません。本人はあまり覚えていないようですが。
 
機内で適用されるのは日本法か米国法か
まず、今回の質問を考えるにおいて大事なのは、日本法と米国法の適用についてです。まず、飛行機がどこの国に登録されているのか、ということが問題になります。
日本法では、航空機が登録されている国が裁判管轄を持つ(刑法1条2項)と定められています。アメリカ国籍の飛行機であれば、米国連邦法が適用されることになります(49 U.S. Code § 46501)。これが基礎になります。
今回質問されている方は、アメリカの航空会社の飛行機に搭乗していて、問題が発生したようです。そうすると当然にアメリカ飛行機内で発生した問題なので、米国法が適用されます。日本の法律が適用されるかは微妙なケースとなるかもしれません。
もっともなんらかの被害を受けた人が日本人である場合には、日本の刑法でも何か問われる可能性はあります。このように、航空機がどこの国に登録されているのかで適用される法律も変わってきます。
 
飛行機がどこの領空を飛んでいるか
次に、飛行機がどこの土地を通っていたかも問題になります。
日本上空であれば、日本の法律や条例が適用されるかもしれませんし、実際に適用された事例もあります。アメリカでも、法律でアメリカの管轄内にある飛行機についてはアメリカ法の適用があります(49 U.S. Code § 46501 (2)(c))。
更に、アメリカの法律では、アメリカが到着地である場合は適用されるとなっています。
そうすると、日本の航空会社の飛行機でもアメリカが目的地の場合であれば、どこの土地を通っていたかということにかかわらず、アメリカ法の適用対象になってしまいます。
米国法は、かなり広い設定をしていることがわかります。
 
可能性としては米国法が適用される事例
今回質問されている方は、アメリカに登録されている航空機に乗っていたと思われますので、米国連邦法が適用となりそうです。日本に到着する前に、すでに身体を拘束されていたわけですので、日本法がすぐに適用されるかというと疑問です。
 
では、アメリカの法律が適用された場合を次回考えていきたいと思います。色々深刻な事件がアメリカではあった一週間ですが、また気分を入れ替えて一週間がんばっていきましょうね。