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アメリカで経営が困難に、破産すべきか(2)_1124





法律ノート 第1124回 弁護士 鈴木淳司
アメリカで経営が困難に、破産すべきか(2)_1124
August 28, 2018
この数日、付近の火事は鎮火しつつあるはずですが、ベイエリアはかなり「煙たい」空気に包まれていました。橋も曇って見えます。また、近所で火事が発生しているのか、と思ってニュースを良く見ると、オレゴンやワシントン、その上のカナダでも大規模な火災が発生し、太平洋を経由して、ベイエリアに流入しているとか。以前は、カリフォルニアの夏といえば、カラッと乾いているけど、樹々は緑、青い空が映えるというのが定番でしたが、過去のことなのでしょうか。日本でも猛暑がひどいようですね。
 
さて、前回から考えてきた質問を続けて考えていきましょう。
「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問内容です。
前回、アメリカの破産法には、チャプター7と13と呼ばれる方法があることを考えました。これらは個人の破産についてです。一方で、法人の破産については、チャプター7に加え、チャプター11と呼ばれるものもあります。このチャプターというのは、アメリカ法典の「第7章」という番号から由来するもので、あまり意味はありません。
個人でも法人でも、チャプター7というのは、いわゆるすべての負債で担保がついていない債務に関しては「免責」されるタイプの破産です。
免責というのは、負債があっても、もう払わなくても良いことにするという意味です。
この免責の許可は、アメリカの連邦裁判所のみが与えられることになっています。
保証人などの人的担保、抵当権などの物的担保がついていない債務、たとえばクレジットカードの債務などは、裁判所から免責許可を得れば、払う必要がなくなるのです。
このチャプター7は、個人にしても法人にしても、支払能力がまったくないような状態、支払能力が著しく低い状態の場合に有効ということになります。ある程度収支が存在しているような場合には、チャプター7を使わず、チャプター11や13を考えることになります。
たとえば、今回の質問をされている方は、どうも、毎月の収支はそれなりにあって、お金が回っている状態のようです。
そうすると、チャプター7を利用して、負債等をゼロにして、再スタートするよりも、手持ちにある財産をできるだけ保持しつつ、再建したいと思うはずです。
たしかにチャプター7を利用すると、担保の負債がついていない債務については、「チャラ」になる、すなわち免責されますが、担保がついている債務、たとえば家、車、高価な電化製品、家具、機器など割賦払いで買っている場合には、債務はなくなりますが、原則として、物を返還しなければなりません。文字通り、すべての債権債務をゼロに巻き戻すという感覚でいなければなりません。
このように、チャプター7によって債権者は不測の不利益を被る可能性があります。
そこで、一般的に金融機関が融資をするときに担保を取る、大家さんが商業物件を貸すときに担保を取る、というのは、破産対策というわけです。クレジットカードの発行審査も結局「チャプター7」の可能性が低い人、ちゃんと支払いを継続できる人、という観点から行われるのは、チャプター7による免責があるからです。
ここで、注意しなければならないことは、今回質問されている方の会社は、ほぼ質問者御本人の個人保証がついている借り入れで成り立っていますので、たとえ、会社がチャプター7をしても、結局は保証人である質問者本人の財務的力量が問題になってくると思います。
会社だけ潰してしまえば良い、というものではなく、会社の債務を保証している場合には、その保証人にも同額責任が生じるのです。また、場合によっては家族や第三者が保証人になっている可能性もあります。このような場合には、会社がチャプター7で免責されたとしても、保証人にはかかってくる可能性があり、こういう場合には「迷惑をかける」と一般的に言われる場合になるのではないでしょうか。
会社が破産する場合には、まずはどのような保証がついているのか、すべての債務を検証して、その影響を考えるのが第一歩となります。
次回続けて考えていきたいと思います。
 
まだまだ暑い日が続きますが、体調管理を万全にしてまた1週間がんばっていきましょう。
 


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アメリカで経営が困難に、破産すべきか(3)_1125

法律ノート 第1125回 弁護士 鈴木淳司
Sep. 4, 2018

 レーバーデーを含む3連休でした。天気も良く、野外活動に最高の週末でした。私もかなり体を動かして気分転換をしました。レーバーデーのときは、野外遊園地やフェスティバルも多いので、みなさんも楽しい時間をお過ごしになったのではないでしょうか。日本は台風などの話題で落ち着かないですが、皆さんお元気にされていますか。

アメリカで経営が困難に、破産すべきか(3)_1125

 さて、前回まで、まとめると「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問を考えてきました。今回、個人保証がついている会社の財産がある場合について続けて考えていきましょう。

破産でも内容が異なる消滅型と再建型

 前回、個人保証がついている場合は、会社が破産をしたとしても、債権者は個人を追いかけてくるということを考えました。ですので、会社のように、ある程度の収入があり、個人保証のついた財産がある場合には、完全に債務を消滅する形のチャプター7は使いにくいことになります。

 かりに、会社がある程度収入を維持でき、将来的に収支の計画を建てることができれば、いわゆる再建型である破産を利用することがオプションとして考えられます。チャプター7は、担保のついていない債務に関しては免除されるというメリットはありますが、一方で、担保そのものは消滅しないので、残額が残っている不動産やら、車などは手放さなくてはならないことになりますし、保証人に対して追いかけることができます。

 他方、再建型においては、今までの負債について一旦整理をして、払えるだけ払っていこうという、ある意味、責任のとり方を再構築する方法ですので、将来を見据えての財務的な責任は負うことになります。どちらも「破産」ですが、内容的には異なるものなのです。どちらかというと再建型であるチャプター11とか13などは、責任からすべて逃げるということではなく、過去の負債を将来においてどのように整理するか、という方法論を取るわけですから、ある程度責任を負い続けるというところに、いわゆる「責任感」はあるとも言えると思います。

 しかし、日本社会と違ってアメリカでは、他人の目はあまり気にしません。自分で何をしなければならないのかを第一次的に考える文化ですので、消滅型、再建型、どちらの破産方法をとるかは、まず自分の財務的状況に応じて判断するしかないと思います。

破産しても免責されない債務もある

 破産申請が受理され、免責がされるといっても、上述したように担保はなくなることはありません。金融機関は、お金を貸すにあたって担保を取りますが、一部この破産を想定していることは明らかです。担保がついていない場合でも一定の場合には、破産しても、免責されない債務があります。

 アメリカでは、主なものを挙げると、離婚に伴う元配偶者や子の養育の支払いは、破産があっても免責されません。払えないとしても、その債務は残ります。税金の支払いについても、例外はありますが、基本的には支払義務は破産をしても残ります。税金はどこまでも追いかけてくる、というのはこのことです。

 税金に似ているかもしれませんが、罰金や被害者弁済など裁判所を通して支払い義務が生じたものについては、基本的に支払義務は残ります。私が経験したものでは、通常の交通事故によって発生する損害賠償義務は破産で免責の対象となりますが、これらの損害が飲酒・薬物に起因した事故で発生した場合には、免責の対象外となります。こういったファクターを考慮して、どのような破産をするのかを考える必要があります。

破産をしてもすぐに永住権の保持に影響しない

 それから、今回質問されている方は永住権保持者ということですが、破産をしたからといって、すぐに永住権の保持に影響はしません。まったく別系統の話なので、永住権を持っていれば、何も滞在資格に直接的な影響はありません。一方で、非移民型のビザで滞在されている外国人が破産をする場合には、滞在資格が影響することがありえます。ビジネスビザで滞在している場合、更新はかなり難しくなると思います。

 まだ色々考えたいところですが、今回はこの辺までにしておきたいと思います。また、皆さんからの質問を待って考えていきたいと思います。今週もまだ「夏」が続きますが、今週末、鹿の子供を見ました。秋が近づいてきているということでしょうか。体調管理に気を配りながらまた1週間がんばっていきましょうね。


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アメリカで結婚した娘、日本で離婚できる?(1)_1080

法律ノート 第1080回 弁護士 鈴木淳司
Oct. 24, 2017

 火事が相次いでいた北カリフォルニアにやっと恵みの雨が降りました。かなり雨が降ったのですが、それでも火事が完全に鎮火するわけではないのですね。火事に注意といっても、今回のように強風で火の広がりが早いと注意しようがないですね。まだ、色々な傷が癒えていない状況ですが、復興をしていかなければなりません。何かできることがあったら手伝いたい気持ちでいっぱいです。

アメリカで結婚した娘、日本で離婚できる?(1)_1080

 さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「日本に住んでいる者(夫婦)です。私どもの娘が米国に留学していたのですが、精神的な病で日本に戻ってきました。現在、私どもと同居をしながら治療を続けています。多くは話さないのですが、アメリカ人男性と結婚して、結婚生活がうまくいかなかったようです。最近この男性から私どもに連絡があり、どうも日本に来て話し合いたいということでした。娘は会いたくもなく離婚をしたいということでした。こういった場合、本人がアメリカに行かないと離婚をすることができないのでしょうか」という質問です。

親といえども本人以外に離婚のアドバイスは難しい

 今回の質問は、お答えするのに少々困った状況であります。本来であれば離婚をしたいという意思を持っている娘さんが質問をされるべきであり、親御さんといえども、婚姻関係についてはある意味第三者であります。そうすると、細かい事情もわかりませんし、どのような婚姻関係にあるのかもよくわかりません。一方で、娘さんが実家に居るわけですから、親御さんにとっても影響のあることではあります。

 一般論として、本来娘さんが離婚をしたいということで相談をしなければ、弁護士は多くのアドバイスはできません。第三者に対して、他人の離婚についてアドバイスをしているようなものです。今回の質問は詳細が書かれておらず、推測しながら考えていかなければならない状況にあります。以下、がんばって考えていきましょう。

婚姻証明(Marriage Certificate)の発行により成立する婚姻

 さて、最初に考えなければならないのが、質問されている方の娘さんが、どこで誰といつ結婚したか、ということでしょうか。アメリカにいてアメリカ人と結婚しているわけですから、アメリカで留学中に婚姻したと考えられます。

 婚姻は日本でいう婚姻届の受理、アメリカでは婚姻証明(Marriage Certificate)の発行によって成立します。したがって、どこの州のどこに婚姻申請をしたのか確認する必要があります。

 もしアメリカで婚姻をしていた場合、簡単なのはアメリカ内で離婚の申立をすることです。できれば婚姻をした州で行えば、情報等も州内にとどまっているのですから、色々な作業が省略できる可能性があります。

 問題は、米国では一般的に、離婚を申し立てるためには、その申し立てを行う裁判所が管轄する地域に少なくとも6ヶ月住んでいなければならないという居住要件があります。したがって、現在娘さんが日本に帰ってきている状況では、どの程度の長さ実家に留まっているのかわかりませんが、居住要件を満たさないという可能性もあります。

 居住要件には色々な例外もありますので、まずは最後に娘さんがお住まいだった地域の弁護士に相談されるのが良いかもしれません。もちろん、相手方男性も離婚に合意をしているのであれば、話がはやいです。

裁判所の判決がないと離婚が成立しないアメリカ

 アメリカと日本の離婚手続きの違いは、日本では離婚届という行政に対する届出をすれば、離婚が成立しますが、米国では、形式的ではありますが、裁判所の判決がないと離婚が成立しません。しかし、判決まで必要とはいっても、お互いに争いがなければ合意によってスムーズに離婚まで持っていくことは可能です。

 ただ、今回質問にあるような状況では娘さん本人が本当に離婚の意思を持っているのか確認しなければなりません。ご両親が「離婚をさせたい」と思っても、本人がいくら病気でも、本人の意思がなければ離婚は難しいことになります。

 家族同士で話合いが難しければ、第三者を介して、娘さんの意思を確認することが必要になります。その意思を確認したうえで、娘さんが弁護士を選任し、離婚の手続きをアメリカまたは場合によっては日本で進めていくことになると思います。

 ここからさらに次回考えていきたいと思います。まだ、暑い日もありますが、朝晩は冷え込んできましたね。仕事であちこち出かけることが続き、私はなぜか寝ても寝ても寝足りないような一週間でしたが、英気を養いつつ、秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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アメリカで結婚した娘、日本で離婚できる?(2)_1081

法律ノート 第1081回 弁護士 鈴木淳司
Oct. 31, 2017

 この週末は夏のように暖かかったので、外出して天気を楽しみましたが、異常な天気ですね。気のせいか、まだまだ虫も多いように感じますし、蜘蛛も例年より多く巣をつくって活動しているようです。一方でシエラの山の方に住む人達は来週あたり初雪が降るのではないか、と言っていました。天気が至る所でぐちゃぐちゃになっているように思います。寒暖の差が激しいので、体調管理は重要ですね。

アメリカで結婚した娘、日本で離婚できる?(2)_1081

 さて、前回から考えてきている「日本に住んでいる者(夫婦)です。私どもの娘が米国に留学していたのですが、精神的な病で日本に戻ってきました。現在、私どもと同居をしながら治療を続けています。多くは話さないのですが、アメリカ人男性と結婚して、結婚生活がうまくいかなかったようです。最近この男性から私どもに連絡があり、どうも日本に来て話し合いたいということでした。娘は会いたくもなく離婚をしたいということでした。こういった場合、本人がアメリカに行かないと離婚をすることができないのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。

日本で離婚が成立していれば、アメリカでも離婚を主張できる

 前回は、離婚というのはいくら両親でも代わって行うということはできないので、やはり本人の意思がかなり重要になってくる、ということを考えました。そして、離婚については、米国か日本で行うことが可能かもしれないというところまで考えました。今回続けて考えていきたいと思います。

 今回質問されているご両親の知識では、娘さんがどこの場所で結婚したかがよくわかりません。しかし、基本的に離婚をアメリカで行おうが日本で行おうが、法律的な手続きに沿って離婚が成立していれば、日本においてもアメリカにおいても、離婚の成立を主張することができます。

 たとえば、今回質問の対象となっている娘さんが相手方とアメリカで結婚していた場合でも、日本で離婚が成立していれば、その離婚について、アメリカでも主張することはできます。

 したがって、今回の事例でも、どこで結婚されているかわかりませんが、おそらく日本かアメリカで婚姻届を提出しているということになろうと思います。そうすると、日本で離婚が正式に成立すれば、相手方男性に対して離婚した事実を主張することは国を問わずできます。

アメリカでの離婚申立には一定期間の居住が必要

 ここで、かりに娘さんがアメリカで離婚の手続きをしたいと考えた場合、アメリカでは一般的に、離婚を申し立てるには、少なくとも、申立をする場所に6ヶ月は居住していなければなりません。離婚申立の要件として、一定期間の居住が必要なのです。

 男性側が離婚を申し立ててくれれば、その申立に乗っかって離婚を進められる可能性が高いのですが、娘さん側から申立をする場合には、この居住要件が引っかかってくる可能性があるのです。

 もちろん、必ず物理的に娘さんが6ヶ月まるまる離婚を申し立てる場所にいなければならないということはありません。例外もいくつかあります。かりに、娘さんにとって、アメリカでの離婚申し立ての方が良い事例であれば、色々な例外規定や判例を探って、居住要件を満たしているという主張をすることも可能かもしれません。今回の質問に関して、アメリカで離婚をできるかどうかは、居住要件がハードルになるかもしれません。

 一方で、日本で手続きをするという方法も考えられる可能性があります。娘さんが日本に居住していれば、日本での手続きも可能かもしれませんが、日本での裁判をするとなると、今度は、相手方がアメリカにいることから裁判に呼び出すための送達に手間がかかります。色々民事手続上の問題が発生する可能性があります。

話し合いでの離婚が解決として最善

 このように、裁判を通して対立する形で離婚をすると、手続きで面倒なことが起きそうなパターンではあります。娘さんの婚姻期間および夫婦間で共有している財産がどの程度あるのか、などわかりませんが、かりに子もいない状態で、共有財産もほぼないような形であれば、相手方の男性が日本にくると言っているのであれば、そのときに話し合いで離婚の方向に持っていくのが一番手っ取り早いように思います。

 話し合いを娘さんが嫌がっているのであれば、娘さんから代理権を受けた弁護士でも良いですし、親御さんが付き添ってでも、会うことが解決としては最善ではないでしょうか。もしかしたら、相手方もよりを戻すというよりは、離婚をしたいのかもしれません。

 事情が細かくわからず、漠然と考えてしまった質問ですが、他の角度からご質問等がありましたら、法律ノート宛まで宜しくお願いいたします。

 もう、アメリカはハロウイーンです。なんだか1年も終わりに近くなってきたと感じる季節ですね。夜は寒くなってきましたので、体を温めながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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子どもの監護と養育費[1]-1071

法律ノート 第1071回 弁護士 鈴木淳司
August 21, 2017




 
夏休みも佳境ですね。今年の夏は、カリフォルニア州でもかなり大規模な火事が相次ぎました。さらに異常な暑さも続きました。乾燥しているのは、まだ暑さ対策をし易いのですが、冬に大雨になった反動なのかカピカピに乾燥しきっています。日本でも、梅雨のような天気になったり異常な暑さになったりと、夏バテの方も多いと思います。気候が変だと思うのは私だけではないと思うのですが、政治家はそう考えない人もアメリカではいるようですね。
皆さんはこの夏をどのようにお過ごしでしたか。
 
子どもの監護と養育費[1]-1071
 
さて、今回から皆さんからいただいている質問に新たにお答えしていきたいと思います。今回いただいている質問をまとめると以下のようになります。
「日本在住のシングルマザーです。アメリカで結婚、出産しました。夫とアメリカで離婚し、子供を日本(関西圏)で育てています。夫はアメリカと日本を行き来し、夏休みの間は子供と時間を過ごすという取決めでしたが、夫の仕事の都合もあって、それもできずに、再度、子供の監護について揉めています。揉めている一つの理由として、今まで養育費を夫はまったく支払っていません。私は日本にいるのですが、このような場合に養育費の請求をまずできないものでしょうか。私は、私の父母に頼って肩身が狭い思いをしながら、子供を育てています。」という内容になります。
かなり具体的な質問でしたが、できれば離婚を認めた裁判所(アメリカですが)での対応を至急考えた方が良いと思います。
今回は養育費の取決め遵守について考えていきたいと思います。
 
シングルマザーの現実
まず、今回の事例のように離婚が成立し、子供も母親方に基本的には引き取られ、監護権は父母が行使をするというような場合、子供の面倒を見るための費用は稼いでいる方が支払うことになるのが一般的です。
今回質問されている方のようにシングルマザーになると、子供の世話もあり、かなり生活を維持することが難しくなるのが現実です。
今回質問されている方も、日本でパートを2つ掛け持ちで行いながら、親の手を借りて子供を育てている様子が伺われるのですが、自分も無理をしていらっしゃることは明らかですし、その歪が子供さんにも影響している様子がわかります。
自分が一度は好きになって子供まで産んだのですから、自分はがんばらなければならないという気持ちは良くわかるのですが、子供にしてみたら単なる迷惑かもしれません。やはり、子供ができるだけ良い環境で育ってもらうためには、親の問題は親の間だけにしておくべきかもしれませんね。
 
養育費ー子どもにとって最良の方法は何か
基本的に養育費というのは、カリフォルニア州では、両親の収入や財産を勘案して決められます
多く稼いで、多く財産を持っている方から支払われるべきであるということが基本で、ある程度「相場」というのは決まっています。
もちろん、両親にも、山もあり谷もあるわけですから、それに応じて支払いの変更も裁判所に申し立てることができますが、離婚の際に決まった養育費の支払いは、裁判所の変更が認められるまで続ける必要があります。
子供のことを考えたら、そうするのが子供の利益になるという法律の判断です。
 
カリフォルニア州の養育費ー泣き寝入りしない方法
そうすると、今回質問されている方のように、すでにカリフォルニア州の裁判所で養育費の取決めがなされているのに、養育費を受けられていない場合には、まず、今まで生じている養育費の支払いについて請求をしたいと思うのは当然です。
ところが、すでに今回の質問をされている方は日本にいます。そうすると、どのように養育費を請求すればよいのかわかりません。夫が自発的に養育費を支払わなければ、何らかの法的な請求をしなければならないことになります。
このような場合、日本に在住していると日本の弁護士に相談しなければならなくなりますが、日本の弁護士であれば、泣き寝入りするか、日本で裁判を提起して、判決を取って、その判決をなんとかアメリカで執行していかなければならない、といったアドバイスをすることになるかもしれません。
しかし、少なくともカリフォルニア州ですでに決まっている養育費の取決めにおいては、そのようなことをする必要はありません
ここから次回考えていきましょう。
 
アメリカの街では、もうハロウィンに向けて、仮装を売る店がオープンしています。夏が終わると、バタバタと年末に向けてイベントが目白押しですね。
一年経つのは早いですが、一日、一日大事にしながらまた一週間がんばっていきましょうね。




 

トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[3]





 
法律ノート 第1065回 弁護士 鈴木淳司
July 11, 2017
アメリカではラーメンが大流行していますね。かなりの数の日本食店舗がラーメンを出しています。日本では、ラーメンは短時間で食べて、店を出るというのがお約束ですが、アメリカではずいぶんゆっくり食べているのをみかけます。のびちゃうように思うのですが。極めつけは、残った麺と汁を容器に入れて持ち帰る人もいます。次の日に食べている姿は想像したくありません。外国から入ってきた新しい食文化の波という感じなのでしょうか。
 
トラストとトラスティ、仕組みを知りたい[3]
引き続き、以下の質問を考えてみましょう。
「私と夫は(あるカリフォルニア州外)90代と80代で二人で暮らしています。現在、トラストを作成してあるのですが、ある税務会計事務所の方に相談をしたところ、その事務所の方がトラスティになってくれるということになりました。とても親切な方で最初は感謝したのですが、月500ドルを支払うように要求された上に、トラストを書き直して、今我々が住んでいるアパートは、我々夫婦が死んだら彼女の所有になることになってしまいました。そこで質問ですが、何故、トラスティには無料のトラスティと有料(月500ドル+実費)の2種類のトラスティがあるのでしょうか。アメリカの法律では、有料のトラスティを認めているのでしょうか。」という質問です。
 
裁判所が関与する後見制度、そうでないトラスト
前回、皆さんと考えたのは、後見というのは裁判所が精神的、肉体的に自分自身の判断をするのが難しい人を後見人という立場の人を付けてモニターする制度であるということです。
後見制度の対象となる人のことを被後見人と言います。日本の法律用語で「被」なんとか、という言い方があった場合、何らかの法律的な効果が及ぶ、という意味です。被後見人といえば、後見の効力が及ぶ人ということになります。
後見制度は裁判所が監督する制度ですので、被後見人の自由になんでも決まるわけではありません。後見をする人の費用や、被後見人に関して生じた出費については裁判所の許可が必要となります。
さらに前回、トラストについて後見と対比して考えましたが、トラストというのは裁判所がかかわるわけではなく、自分の意思で作成し、その内容が実行されていくということになります。
 
トラストは自由意思で財産管理を決定
トラストというのは、設定する人の自由意思で色々決められるわけですから、後見制度の被後見人とは色合いが違います。
あくまでも設定する人が自分の財産をどのように使うかを決めるのですから、今回の質問にあるトラスティを誰にするのかも、自由意思で決められることになるわけです。
今回質問されている方は、80代ということですが、かなり意思もしっかりしていて、質問の内容もよくわかります。ただ、トラストというものの性質について、「自分で決めるのが基本である」ということを理解していれば、自ずから答えはでるようにも思います。
 
自分の死後のトラスティ継承者を指定
トラスティの設定は自分の意思でできるのですから、たとえば自分が生きている間は自分や配偶者がトラスティになり、死亡した場合には、承継するトラスティ、通常は家族(子や兄弟など)を予め指定しておきます。これが、鉄板のパターンです。
 
契約内容の確認を
今回質問されている方のように有料でトラスティを設定するというのは、かなり変則的です。そもそも、トラスティになっていたとしても、毎日何かするということではないので、もしかしたら、通常のトラスティの業務を超えて、何らかのサービスを提供する契約になっているのかもしれません。
いずれにしても、トラストにトラスティがどのように規定されているのか、自分の意思を確かめることと、このように有料のトラスティ・サービスというのがあるのであれば、その契約にかかわる契約書が存在するはずですので、その内容を確認する必要があります。トラスティを誰にするかは、あくまでも自由意思ですので、無料であろうと有料であろうと、自分がどのような契約をしたのかにかかってきます。もし、自分で色々なことをする能力があるのであれば、御自身が生存中は御自身をトラスティに指定すればお金はかかりませんし、家族をトラスティにしておけばお金はかかりません。もちろん、お金を要求する家族もいるのかもしれませんが、それは例外的だと思います。
とにかく、有料のトラスティなどいるのか?と思われているのであれば、トラストと有料サービスの契約書を利害関係のない法律家にみてもらうのがよいかもしれませんね。
 
 
次回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
カリフォルニア州では、異常に暑いところもあり、気候が変だな、という気がします。皆さんがお住いの地域も暑いのでしょうか。熱中症などに気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
 
 
 



『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[3]





 
法律ノート 第1055回 弁護士 鈴木淳司
April 25, 2017
やっと雨が降り止んで、晴れの日が一週間は続く、というラジオのニュースを聞いて、チャンスだと思って、洗車をしましたが、翌日雨が降りました。昔から、私が洗車をすると雨が降るという運命を持っているようなのですが、今回もまたやられました。干ばつで困っている地域の方は今度私を呼んでください。洗車しにいきますので。皆さんは週末いかがお過ごしでしたか。
 
『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[3]
さて、前二回、「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」という質問を考えてきました。
今回も続けて考えていきましょう。
 
選任後の手続き
今回は、遺言執行者に選任された場合に、どのように実際の手続きがながれていくのか、みなさんと一緒に考えていきましょう。
前回、遺言執行者に選任されたとしても、いきなり大きな仕事を引き受けるということには実際にならず、通常は、弁護士に委任をして、裁判関係の手続きを代理してもらうという流れになります。弁護士が出廷すれば遺言執行者はほぼ裁判所に行く必要はありません。報告だけはちゃんと受けている必要はありますけれども。
 
遺言執行者の具体的な役割ー財産の確定と分配ー
さて、では遺言執行者として、具体的に何をするかというと、内容は遺言に書いてあります相続財産がどのくらいあるのか確定して、遺言に書かれた相続人に対して分配をしていくということになるのです。つまり、どの程度の財産があるのか全体像を調べて、そのうえで、割合などに応じて分配をすることが仕事になるということです。
まず、財産がどの程度あるかを調べなければいけませんが、通常は遺言にかかれています。
しかし、人間は生きているうちに、銀行口座を変えたり、家を買ったり売ったりするなど、変化が生じます。ですので、遺言を作成した人がどのような財産を持っているのか、手持ちの資料や、情報の調査をして全体像を明らかにします。
具体的に、どのような書類があるのか探したり、郵便の内容を確認したり、遺言執行者がしなければならない仕事になるかもしれません。家族や友人にどのような財産があるのかを聞いたりしなければならないでしょう。また、家が残されていれば、その家の管理をしなければならないですし、動産があればその動産の管理もしなければなりません。車や宝石などが主な動産でしょうか。
 
遺言者に代わって財産処分する権限
これらの動産や不動産を売却して換価することも一つの遺言執行者の仕事になります。もちろん代理している弁護士がどの程度深く関わってくれるのかにもよりますが、不動産の価値を把握したり、色々な業者に連絡するといった業務もあるわけです。
このような業務を行うについて、遺言執行者は、他界した遺言者の代わりになって行うのですが、裁判所から、遺言執行者にその権限を与える書類をもらえるので、問題なく遂行できるのです。金融機関にある口座などにしても、権限があるので、内容を確認することができます。
 
かかる費用は相続財産から拠出
以上のような業務を行うにあたって、コストが発生します。家や動産の維持、財産の評価など、様々な費用がかかることになります。これらのコストは遺言執行者が捻出するわけではなく、通常相続財産から支払われることになります。
 
相続財産の分配、裁判所の見守り
全体的な相続財産が把握できると、今度は相続人の人たちにどのように分配するかを考えていきます。
この財産の分配が多くの相続関係の紛争になり得るのですが、とにかく遺言に沿って分配がなされます。遺言執行者は、相続される財産が、相続人に渡ることを確認しなければなりませんし、いったん財産が遺言通り分配されれば、そこで役割は終了することになります。
裁判所は、財産が遺言通り分配されたことを見届けて、遺言執行者に法律で決められた金銭的な費用を支払うことで、相続手続きが終了することになります。
 
遺言執行者を選ぶときは慎重に
以上が遺言執行者の役割ですが、それなりに仕事をしなければなりません。それに、そもそもある程度どのような財産があるのかなどプライベートのことを知っている人の方が適任ということも言えると思います。
遺言執行者を指定するときも、以上の流れを考えて、誰にするかを決めてくださいね。
 
次回、新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
北朝鮮の情勢に不安を感じますが、平和な世の中を願ってまた一週間がんばっていきましょうね。




 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]





法律ノート 第1054回 弁護士 鈴木淳司
April 17, 2017
しかし、今年の天候は異常で、ベイエリアは雨が多いです。あれだけ騒いでいた干ばつ問題が解決したのは良いことではありますが。雨だけではなく、例年に比べて花粉もすごいように思います。今までカラカラになっていた植物が、水を得て活発に活動しているのでしょうか。皆さんは、花粉対策に何をされていますか。
 
『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[2]
さて、前々回から考えてきた質問を今回も考えていきましょう。
いただいている質問は「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。
 
遺言執行者は遺言で指定
前々回考えたとおり、遺言執行者というのは、「ぼくの遺言の執行は君がなってくれ」と肩を叩かれるわけではなく、遺言に、執行者の名前を記載する方法を取ります。したがって、遺言の内容を見なければ、誰が執行者として指定されているのか、わからないわけです。
もちろん、遺言者も身内などには、遺言の内容を見せることもアメリカでは可能です。
したがって、執行者が誰になるのかは、事前に開示をすることはできます。
しかし、一般的に自分の遺言を見せて回る人はいないわけで、口頭で、「執行者に指名したよ」と伝えたりする程度になるのではないでしょうか。
また、遺言は、遺言者が一人で行う法律行為ですから、気が変わったらいつでも変更することができますので、いったん「執行者に指名したよ」と言われていても、蓋を開けてみたら、すなわち遺言を確認してみたら、別の執行者が設定されていたということもあるかもしれません。周りに、知り合いがいない場合もあります。その場合には、遺言の作成を頼む弁護士を執行者に指定する場合もあります。
 
遺言執行者、選任の流れ
さて、遺言執行者に選任されると、遺言者が生きている間には、何もすることはありません。遺言が発効するのは、遺言者が死亡したときですから、当たり前ではあります。
遺言者が死亡すると、信託が別途存在しない場合、相続財産の分配などの処理は、裁判所の手続きに乗せなければなりません。裁判所が財産管理をモニターしながら分配をしていくのです。この裁判所の手続きは、はやくても、6-9ヶ月かかります。この手続を避けるのも信託作成の一つのメリットと言われています。
あまり法律の手続きを難しく書いても、読者の方にとっては馴染みがないと思いますので、簡単に遺言者の死亡から、どのように遺言の内容が現実化していくのか、簡単に考えてみます。
 
遺言執行手続きの開始
まず、遺言を見つけた家族や、保管者が、その遺言を裁判所に提出します。その提出を受けて、裁判所が遺言執行の手続きをはじめます。裁判所が手続きを「はじめる」と言っても、関係者の請求に応じて判断をしていくことになりますので、自動的に裁判所が何かをやってくれると期待してはいけません。
次に、裁判所が遺言を確認すると、遺言執行者を遺言に沿って指定します。指定された人が拒否する場合などは、裁判所が遺言執行者を決めます。遺言執行者となった人は、裁判所から相続財産がどの程度あるのかを把握して、遺言に沿って、分配をするという役割を負います。
そして、その役割を負うことによって、法律で定められた報酬を得ることができます。
 
 
実際は弁護士との共同作業
ここで、遺言執行者となったとすると、法律にあまり詳しくない人が、いきなり裁判所に提出する書類を作成したり、審理に参加したりすることは難しいわけです。仕事を持っている人などは特にそうでしょう。
しかし、実際裁判所は遺言執行者にここまでの多岐にわたる業務を行うことを期待していません。ほとんどの場合には、遺言執行者となった人に弁護士がつくわけです。そして、その弁護士が実際の法律業務等必要なことをして、遺言執行者の代わりに業務を行うことになります。
次回、遺言執行者とその弁護士がどのような業務を行っていくのか具体的に考えていきましょう。
 
私の鼻と目がグズグズしていますが、みなさんも花粉に注意しながらまた一週間春を楽しんでいきましょうね。




 

『遺言執行者になって欲しい。』どうする?[1]





 
法律ノート 第1052回 弁護士 鈴木淳司
April 4, 2017
先週、一緒に仕事をしている日本の弁護士とお客様と夜の食事会になりました。この弁護士は、熊さんみたいに髭を生やしている60代なのですが、風貌が宮﨑駿そっくりなのです。日本食レストランに行ったのですが、店員が全員、宮﨑駿本人と間違って、もう少しで撮影会になるところでした。そこまで顔は似ていないのですが、髭が決めてだったようです。周りが本当に宮﨑駿じゃないんだ、と言っても店員の方が信じてくれないのです。私は大笑いして見ていました。よく「この世に3人は自分そっくりの人がいる」といいますが、有名人に自分に似ている人がいると大変でしょうね。
「『遺言執行者になって欲しい。』どうする?」[1]
さて、今回からまた皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「ベイエリアで、長期に渡って住んでいる者です。すでに、子供達は巣立っているのですが、子供の学校関係を通しておつきあいを長い間続けている夫婦から、遺言で遺言執行者になってくれないか、と打診を受けています。その夫婦のお子さんも大きくなり、日本に戻ってしまったため、今は、夫婦のみがカリフォルニアに住んでいる状況です。遺言の執行など、私はまったく知りませんが、できることなら力になってあげたいとも思っています。遺言執行者とはどのようなものなのか、教えていただけないでしょうか」というものです。
 
遺言執行者とは?
遺言執行者と聞くとなんだか、重々しい感じがしますし、責任もかなりあるような印象を受けるかもしれませんね。カリフォルニア州では、遺言執行者をExecutorと呼びます。執行する人という意味ですね。ここでは、遺言執行者という日本語を使っていきたいと思います。
さて、遺言執行者というのは、簡単に言ってしまえば、遺言を残した故人になりかわって、残された財産を指示通りに分けるという役割を負う人をいいます。人は他界してしまえば、持っている財産について、幽霊にでもならない限り、どのように分配するのか指示は出せませんね。
したがって、生きている間に自分の財産について、死後どのように処分するのかを決めておくのが残された人たちのためにもなるので、遺言というものをつくります。また、アメリカでは生前信託(トラスト)という制度が一般的なので、遺言と平行して信託をつくります。
なぜ、残された人たちのためにも、遺言や信託をつくるかというと、よくお聞きになると思いますが、「遺産の骨肉の争い」などを避けるためです。10年かかって裁判で争うような場合もあるので、できるだけ、はっきり財産の処分について、生前に決めておくことが周りに迷惑をかけない重要事項でもあるわけです。
 
遺言執行者、誰がなれるのか?
遺言執行者というのは、遺言に沿って、残された財産を分けていく責任を負いますが、通常家族の誰かを指定するのが一般的です。夫婦であれば、相互に指定したり、子供が大きければ子供も指定できます。兄弟でも良いです。
ただ、遺言を書く人が生活をしている場所に近いところに住んでいる人の方がベターである側面もあります。不動産の売却が必要になるとか、貸金庫を整理するとか、かりに第三者に任せるとしても、コントロールが効くのは近くに住んでいる人の方なのだと思います。
もちろん、今回質問されている方のように、信用できる友人の方でも、執行者に指定できますし、弁護士銀行なども指定される場合があります。
 
遺言執行者の指定方法
この遺言執行者の指定というのは、遺言のなかに書くだけなので、通常は指定された人は、遺言が公になるまでに知らないことになります。
もちろん、口頭で、今回のように遺言執行者になってほしい、と頼まれることもありますが、法律で事前に執行人になる人の同意をとっておかなければならない、ということではないので、遺言の記載を見なければ執行人に誰が選任されるのかは、わかりません。
また、場合によっては、執行者に指定された人が、色々な理由で執行者になることを断る場合もあります。断られた場合には、裁判所を通して、適任な人が選任されることになります。
 
 
遺言については、信託との兼ね合いも含めて、何度も法律ノートで取り上げてきました。もちろん、最近法律ノートの読者になった方もいるわけですが、もし質問があれば、再度取り上げても良いと思いますので、質問をお待ちしております。
次回は、引き続き遺言執行者にフォーカスを当てて考えていきたいと思います。
春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。