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カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(2)_1122

法律ノート 第1122回 弁護士 鈴木淳司
Aug. 12, 2018

 お盆休みを利用してサンフランシスコに来る一家に頼まれて。アルカトラズ島のツアーを探してみたのですが、8月一杯「売り切れ」だそうです。20年前は、その日に行って買えましたし、最悪翌日に回されたりしましたが、観光の状況もかなり変化しているのですね。しかし、アルカトラズが刑務所として「営業中」のときには、誰も行きたくなかったのに、今では先を争って行くというのもなんだか皮肉なものです。皆さんは夏休みの息抜き観光をされていますか。

カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(2)_1122

 さて、前回、東海岸で一人住いの老年女性のことを書きました。今回続けて書かせてください。夫にも先立たれ、子供もいない状況で、80代の耳が遠くなってきた女性は要介護の状態で過ごしています。彼女は、社交的でかなり友人がいます。ただ友人も同じように歳を取っていくもので、気持ちとは裏腹に友人同士の面倒をみるのは大変になっています。この女性にはかなり仲良くしてきた甥姪が日本にいます。ただ、日本とアメリカ東海岸は仕事を持っている甥姪にとってあまりに遠い。

老年女性のトラストには衝撃的な内容が

 この老年女性を巡って、「ファイナンシャル・プランナー(「FP」)」と「弁護士」が何年か前に登場しました。どうも、先立たれた夫の関係者の紹介ということでした。甥姪はこの2名と会ったこともありませんし、この老年女性もあまり信用していない様子だったと、甥姪は語ります。

 この弁護士が甥姪と交信をはじめたのが数年前でした。送られてきた英語の書類を甥姪が読んでも何が書いているかわかりません。日本では「信託」という法律的な道具がまだまだ浸透しておらず、トラストと言っても、どういう役割をしているのか、わかりません。法律ノートをずっと読まれている読者の方であれば、説明することは可能なのかもしれませんが、いきなり書類を送られても、内容がわからないのです。

 そこで、私が内容を見てほしいと頼まれて、実際に見てみると、かなり衝撃的な内容が出てきました。この「弁護士」が任意後見人に就任しており、毎月多額の報酬を受けています。FPの人も同様です。さらに、トラストの内容をみると、老年女性の死後、財産の管理はこの「弁護士」が加わり、さらにトラストの受益者(遺言でいう相続人ですね)として、この「弁護士」とFPが入っているのです。

弱者につけこむファイナンシャル・プランナーと弁護士

 この一群の書類を見たのが、20年前の私であれば、かなりこの「弁護士」に対して怒っていたと思います。ある意味利益相反ではないですか。疑いの目で見ると、自分がクライアントの財産をもらうようにしながら、さらに財産管理の名目で毎月多額のお金を吸い上げています。FPとこの「弁護士」は組んでいますし、親族も近くにいません。弱者につけ込んでいるように見えて仕方がありません。

 この女性はそれなりに財産が残りそうです。死後の旅行は限りなく長いですが、夏休みの旅行と違ってお金を含め持ち物を持っていく実益はまったくありません。したがって、この老年女性などは、特に子もいないのですから、「使ってしまえ」ば良いわけです。

 ところが、この「弁護士」は、財産をもらえる地位にいますね。そうすると、できるだけ節約をして、自分に財産がまわってくるのをじっと待っている可能性があります。私も20年以上弁護士をやっていると、こういう弁護士を何人か見ていますが、私に言わせれば「カス」です。ただ、私も大人になりました。

潜在的な利益相反だが、反応すべきか悩む

 この潜在的に利益相反をやっている弁護士のことを甥姪の方々に穏やかに説明しました。なんとなく甥姪の方々も、キナ臭い感じを嗅ぎ取っているようでした。ただ、実際現地で誰も対応できない状況であり、甥姪の方々もそもそも財産は老年女性に使い切ってほしいと思っています。老年女性が幸せに余生を過ごせることが第一と考えているのです。

 そうすると、現在この「弁護士」とFPが、面倒を見ている状況に対して波風を立てるのが賢明なのか、という話になります。遠く離れた老年女性の幸せをどうしたら成就できるのかを考えると、なにかすぐに「キナ臭い状況」に反応するべきなのか、悩みになるのです。

 私も相談を受けただけで、この老年女性の人生には、今の今までまったく関わりがないわけです。したがって、法律的なことはアドバイスできますが、家族関係、友人関係等については、なかなか踏み込んで言うことができません。ただ、一つ言えることは、甥姪の方々も私も、この老年女性の余生が幸せなものであるということです。ただ、正直モヤモヤした気持ちが拭えませんね。

 次回皆さんから頂いている質問にお答えしていきたいと思います。また、1週間天気や天災に気を払いながら、がんばっていきましょうね。


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カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(1)_1121

法律ノート 第1121回 弁護士 鈴木淳司
Aug. 7, 2018

 ある朝、サンフランシスコ市内にある時間貸しの駐車場に車をとめ、「昼頃戻ってくるよ」と知り合いのアテンダントに言い鍵を預けたのですが、結局駐車場に戻ったのは夕方になりました。そうしたら、そのアテンダントが、「昼頃」と書いてあるチケットの半券を眺めながら「おまえ、トランプみたいだな」と私に皮肉交じりに言いました。大笑いしてしまいました。たしかに私は言っていることとやっていることが食い違っていますね。皆さんは、笑いある生活をされていますか。

カリフォルニア州弁護士コラム「遠く離れていても…」(1)_1121

 さて、皆さんからいただいている質問にお答えするのを今回は休ませていただき、最近感じたことを書かせてください。

 前にも法律ノートで似たような話を書いたいと思います。別の、ある日本人女性の話です。東海岸の富豪の三度目の結婚相手の方です。未だに東海岸にお住まいですが、男性はすでに死亡しています。婚前契約があるようで、婚姻前の財産は別々の所有ということが前提での結婚だったようですが、それなりに財産を残され、女性は悠悠自適に過ごされていました。お子さんはいません。女性には実子がいないので、彼女の兄弟の子供たちをかわいがってきました。「姪っ子」、「甥っ子」ということです。甥姪は、彼女のことが好きで、何度も日本から東海岸に遊びに行きました。家族ですので、距離があろうと、甘えられます。月日は経ちました。甥姪も、歳を重ね、家族や仕事で忙しくなりました。この東海岸の女性も歳を取りました。夫と死別して、一人暮らしとなりました。

アメリカで一人暮らす老齢の叔母の遺言や信託が日本の甥と姪に

 私が、彼女の甥姪から相談を受けたとき、彼女はすでに80歳を超えていて、要介護の状況で一人きりで東海岸のマンションに住んでいました。甥姪は全員日本に住み、家族を持ち、仕事に励んでいます。一人暮らしの高齢女性の将来を慮って、甥姪がかなり心配しているのですが、現地に飛んで面倒をみることもなかなか難しい現状があります。

 甥姪の方々は、彼女の弁護士という男性から、多くの書類を受け取りました。遺言や信託に関しての書類です。「トラスト」なんていっても、日本で最近柳沢慎吾と中井貴一の掛け合いで「信託」って知っている、という程度で、さらに海外であるアメリカのトラストなんて、日本にいる甥姪の方々にはわかりようがありません。遺言とトラストのどちらの方が優先するのか、ということもなかなか理解することは容易ではありません。もちろん、法律ノートの長年の読者はある程度理解されていると信じていますが。

 私もカリフォルニア州ではなく、他州の案件なので、そこまで詳細な法律を知り得ていませんが、もちろん似たり寄ったりなので、だいたい見当はつくものです。甥姪の方から、女性の弁護士が作成したという書類について見せていただくと、いつも私が目にしているトラストの書類、遺言の書類などでした。

弁護士らに10万ドルずつの死後信託?

 ところが、ある一つの書類を見て、私の手が止まりました。2015年に作成されたという「信託変更」のための書類です。もともとの信託を確認すると、彼女は実子がいないので、自分の財産を身近で世話してくれている友人や、甥姪に死後信託する(つまり、「あげる」こと)と記述していました。しかし、2015年の「信託変更」をみると、この「彼女の弁護士」と名乗る男に10万ドル、そして、ファイナンシャル・プランナーに10万ドルをそれぞれ死後信託(つまり「あげる」こと)すると書いてあるのです。

 私は、この弁護士とファイナンシャルプランナーについて、知っているか甥姪に聞いてみたところ、「知らない」し、この女性もあまり「信用していない」と言っていたようです。そうすると、益々キナ臭い感じがします。

耳も遠く、認知症もひどくなっている叔母

 この女性は、親族もなく一人きりで東海岸で居住しています。ここ数年、認知症もひどくなってきています。日本にいる甥姪もなんとか話をしようと、電話や、インターネットの通信技術を駆使しますが、なにせ女性は耳が遠い。

 現地では、自分を受益者としている弁護士とファイナンシャル・プランナーが取り巻いて、法律的には「守ってあげている」形をとっています。一方で、甥姪は現地に飛んで、女性の面倒はみられない現実があります。次回続けていきたいと思います。

 カリフォルニア州の火事はとどまるところを知りません。人びとはこの状況を「ニュー・ノーマル」などと言いますが、一体この夏はどうなるのでしょうか。また、来週まで異常な天候を気にしつつがんばっていきましょうね。


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