法律ノート 第1338回 弁護士 鈴木淳司
Oct 30, 2022
ペロシ上院議員の自宅が襲われ議員の配偶者が大怪我を負いました。
中間選挙を前に、このような暴力で選挙に影響しようとすることは言語道断です。
民主主義において政治に参加するという権利は国民一人ひとりに認められた権利です。
一人がこのような暴挙に出ると、皆が迷惑するというのに、そのようなこともわからないほど視野が狭くなってしまっているのでしょうか。
連邦議事堂への乱入もそうですが、自己の偏狭な立場を信じて人を避難したり傷つけたりすることで自分を正当化する人間がこのところ本当に増えてきたように思います。
情報過多のこの時代、自分の好きなニュースだけを切り取って吸収することが増えてきましたが、いろいろな意見に接するチャンスを逃すので偏狭な考えにつながるのでしょうかね。
サンフランシスコで、このようなことが起こって本当に残念です。
米_子どもなしの遺産相続(1)_1338
さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると「はじめまして、日本在住の者です。私の叔母はアメリカ人と結婚したため、若い頃からずっとカリフォルニアに住んでいましたが、最近他界しました。叔母の夫はすでに15年以上前に他界しています。叔母は子供がいなかったため、私がアメリカに行くととても可愛がってくれましたので、よく叔母に会いにいき交流していました。叔母がなくなったあとも、私がアメリカに行き、英語があまりできないのですが、色々な処理をしていました。その叔母が遺産を私に全部残すということを遺言に書いていました。現地の弁護士に叔母が依頼していました。日本には、叔母の兄弟そして、その兄弟の子らがいて、自分たちにも遺留分というものがある、ということを私に言ってきています。遺産はわけなくてはいけないのでしょうか」という質問です。
遺言かトラストの作成は必須
子供がいない場合、自分の相続はちゃんと遺言とかトラストを作成して用意しておくべき例だと思います。
私は別に過度に遺言やトラストを作成することを推奨しているわけではありませんが、子供がいない家庭から相談を受けると、作っておいたほうがよいのではないかとアドバイスをしています。
遺言やトラストを作成していなくても、基本的には「法定相続(Intestate)」という制度がアメリカでも日本でも存在するので、法律に従って遺産は分配されていきます。
日本とアメリカでは微妙に違うところがありますが、想定としては、夫婦で子供がいる場合には、一方の配偶者が死亡した場合には、遺産は他方の配偶者と子で分配するというところからはじまります。
しかし、配偶者は概ね歳が近いものですから、将来的にはやはり子が相続していくというのが法定相続の根幹にあります。
今回の質問の叔母さんのように、子がいない場合、配偶者が亡くなっていると、まずはその死亡した人の父母、そして兄弟という流れで法廷相続されていくことになるわけです。
兄弟というのは、微妙な関係であったりする場合も多いですよね。
私も法律問題に発展するほどの兄弟姉妹の喧嘩は嫌というほど見てきました。
子がいない場合には、法定相続に頼らず、できれば遺言やトラストなどで自分の財産をどのように分配するのかを決めておいた方が良いわけです。
遺言やトラストを作成すれば、たとえば親族だけでなく、お世話になった人、団体そしてチャリティーなどに自分の遺産を分配できますので、法定相続に比べると俄然自分の思いを反映させることが可能になります。
今回質問を送ってくださっている方は、叔母さんと近い関係にあったのでしょう。
そして叔母さんとしては、質問者の方に財産を残してあげたいと強い思いを持っていたのだと思います。
このように、誰か一人を名指しで受益者とすることは、遺言やトラストをつくれば可能です。
今回の質問者さんから具体的に叔母さんの残された書面を確認させていただいているわけではありませんが、基本的にアメリカでも日本でも遺言は有効です。
結論から言うと、今回の質問者の方が叔母さんの意思通り、財産はすべて相続するのが法律的には妥当です。
しかし、親族からの横やりが入っている様子が伺えます。
次回になりますが、遺言がどのように執行され、はたして親族の方々が主張する「自分たちの分前」は成り立つのか考えていきたいと思います。
もうハロウィンですね。
みなさんはコスチュームを着て練り歩く予定なのでしょうか。
韓国では大惨事が発生したようですが、コロナ禍があけて、どこでもたくさん人が集まるでしょうから、外に行かれる方は注意しながら楽しんでくださいね。
朝晩寒い日も多くなってきましたが、体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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