法律ノート 第1272回 弁護士 鈴木淳司
July 21, 2021
また、デルタ種というコロナ株が増加をしているということで、アメリカでも罹患者数の増加とともに経済への影響が懸念されています。
これから毎年恒例になりそうな感じで、もううんざりですね。
カリフォルニア州でのコロナ対策-主に労働法(2)_1272
さて、前回から考えてきた「カリフォルニア州ではずいぶん、コロナ禍に比べるとビジネスや社会的な活動が再開してきましたが、何にどのように注意していったら良いのか、法的観点から教えてください」という質問を続けて考えて行きましょう。
有給の病欠申請
まずは有給の病欠申請についてです。
2021年1月1日にさかのぼって、補助的な有給病欠(Supplemental Paid Sick Leave)がカリフォルニア州で法制化されました。
25人以上被用者がいる職場(公的、私的を問わない)では、義務付けられ、最大で80時間の病欠を有給で認めなくてはいけません。
この有給病欠を利用するためには、テレワークなどができない職種であること、コロナに関連する自己、または家族などの、隔離、療養、子供の学校が閉鎖された場合のケアに当てる時間など、の場合に認められます。
支払額は一日につき511ドル、総額で5110ドルに限定されています。
コロナに直接は関連しないですが、2021年1月1日付で、the California Family Rights Act(CFRA)で規定されている休職(Leave of Absence)をする権利が拡大されました。
拡大後は、5人以上賃金を受ける被用者がいるすべての会社に適用されるようになり、家族の病気のため、という休職の理由についても、以前は配偶者、子、親についての理由に限られていましたが、祖父母、孫、兄弟、パートナーなどにも広がることになりました
直接的なコロナ関連法ではありませんが、家族の健康がコロナによって影響を受けた場合、そのケアをできるだけできるように職場にも妥協を求めたものと考えられています。
以上のように休暇・休職についてもかなりコロナ対策の観点から、被用者へのケアを手厚くしていることがわかります。
変異株の蔓延と職場復帰の延期
それから、先週からずいぶんデルタ種の話が盛り上がっています。
そして、大手の会社も従業員の職場復帰を遅らせるべきではないのか、という話があります。
大手IT会社では、9月から職場復帰を求めていましたが、10月まで様子を見るということで変更したところも出てきています。
今後、デルタ種の広がりがどのようになっていくのか、まだ誰にもわからないところですが、またマスクも含めてある程度後ろ向きな状況も考えられます。
そして、会社側としても、できればテレワークだけではなく、実際に会社に来てもらいたいと考えているところも少なくありません。
では、今後、会社が従業員に対して、「会社に来て仕事をするように」通知した場合には、従業員は従わなくてはいけないのでしょうか。
会社と従業員による相互理解が大前提
給与をもらって働いている以上、会社側の要請があった場合には原則従わなくてはなりません。
ですので、「私は、テレワークで続ける」と言っても、会社側は拒否することができるわけです。
ただし、法律に基づいて医療等に関わる会社への通勤ができない場合など、ケースによっては会社もテレワークを続けることを許さなくてはいけない場合もあると思います。
真摯に会社と従業員で話を最初にしておくことが重要ですね。
ただ、法律的に正当な理由がないにもかかわらず、通勤を拒みテレワークをしたい、と言っても、それだけでは筋が通らない話ですので、解雇などのトラブルに発展する可能性もありますから、注意が必要です。
以上で、主に職場に関することでしたが、コロナによってワークスタイルも変わってきたこともありますし、自分や家族の健康のことで、色々考えさせられることもできているわけです。
会社にとっても従業員にとっても、難しい時期だと思いますが、とにかく遠隔であろうがコミュニケーションをよくとって、皆の利益を損ねないように社会全体でがんばっていくしかないでしょうね。
また次回新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
夏真っ盛りですが、サンフランシスコは寒いくらいです。
周辺の暑いところの人からは「いいなぁ」と言われますが、夏に寒いのはちょっと拍子抜けでもありますね。
どのような気候でも体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
■カリフォルニア州でのコロナ対策について(1)_1271
■カリフォルニアの新しい法律-2020年(1)_1195
■カリフォルニアの新しい法律-2020年(2)_1196
関連サイト
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