カリフォルニアの新しい法律-2020年(1)_1195

法律ノート 第1195回 弁護士 鈴木淳司
Jan 12, 2020

 長年知り合いだったクライアントの方が他界されました。80年代にアジアから渡米、仕事も新たにはじめて、元気な孫3人もできました。奥様や家族に看取られて天国に旅立ちました。そのお葬式に参列されていただきましたが、色々苦労があっても、いつも明るく過ごしていた彼の顔を思い出すと涙がでてきました。人が去るのは寂しいものです。

カリフォルニアの新しい法律-2020年

 さて、2020年がはじまりました。年初というと、毎年新しい法律が施行されます。今年も、いくつか重要な法律がカリフォルニアで施行されていますので、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

労働法

 まずは、労働法のエリアから考えます。
 労働法については、2018年にDynamex事件というのがカリフォルニア州最高裁判所で判断され、その判例を受けて、どこまでが「雇用関係」なのか、それとも「請負関係」なのかという問題を、今回は立法府によって法制化されたのです。

 今回は、改正点を主に考えますので、将来的にはどうしても、法律ノートで扱いたい話題ではあるのですが、今回は表面的なところだけ考えていきたいと思います。

 要は、インターネットの発達で、様々な業種において、伝統的には雇用関係にあった場合でも、「個人事業主」という立場に置き換えられています。特にカリフォルニアは、もう追いつけないくらいの分野で、スマートフォンから物やサービスが頼めるようになっていますので、伝統的な雇用関係ではなく、人がそれぞれ好きに働くということがフォーカスされています。個人事業主というと聞こえは良いところもあります。

 たとえば、業種によっては好きな時間だけ働く、とか、自分の好きなことだけできる、とか、スマートフォンを使えば、簡単にお金が稼げるという謳い文句が人々にとって心地よいところではあります。ところが裏を返すと、自分で事業をしているわけですから、身の回りのことは自由も危険もすべて自分の責任となりますね。

 一方で、事業を行っている事業主、雇用者にしてみると、雇用関係が成立すると、残業代、休暇、失業保険の積立、健康保険関係など、考えることがかなり多くなります。しかしながら、請負契約だと、これらのことをすべて請け負った人に投げられるので、「楽」なのです。

 日本では、最近では伝統的な雇用関係の潜脱によって貧困層を生じさせているなどということがニュースになりますが、カリフォルニアでは、ある意味逆で、個人事業主になってハッピーになろう、的なトレンドなわけです。
時給も高いことが影響しているのかもしれませんね。

 ここで、今回カリフォルニア州の立法府は企業が企業内において通常の業務を行う人々を簡単に「個人事業主」、「請負関係」とみなすことを規制したのです。

 この法律はかなり現状のカリフォルニアでは衝撃が走っていて、いくつかのライドシェア会社ではすでに「従わない、争う」という姿勢のところもあるほどです。

 このような状況を踏まえて、2020年1月1日から、かなり請負関係とすることを規制する法律が施行されました(AB5)。
 細かい点は今後、法律ノートで取り上げますが、まずは、大まかな基準を考えます。
 今回の法律により、3つの点から「雇用」か「請負=個人事業主」かが判断されます。
(1)業務を遂行するにあたって、契約上、実体上、企業の支配下または指図をうけていないか
(2)企業の通常の業務の範囲外の業務であるかどうか
(3)労働者は通常独立して同業の他プロジェクトに参加しているか、という3点が考慮されて判断されます。

 結局は、本当に今まで独立した業者として活動していない限り、ほとんどの場合雇用に分類されることになりそうです。このことで、いろいろな企業が異論を唱えているのです。企業側の不利益と捉えているわけですね。

 もちろん、50に渡る分野で例外規定が定められています。私のような弁護士や医師などは、今回の法改正は適用されません。

 今回の目玉改正はこの法律といえるでしょう。これから、いろいろな法的なチャレンジが見込まれるところです。今回の法改正で、労働法3351条が改正され、同法2750.3条が追加され、関連条文も変更されました。

 まだまだ、重要な改正ポイントがありますので、次回続けて考えていきたいと思います。

 ベイエリアは雨が多いですが、フットボールの49ersは順調に勝っていますが、来週勝負なので気が抜けません。今週は少々喉が痛くなって困りましたが良くなってきました。みなさん、体調に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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