Nov 10, 2001 弁護士 鈴木淳司
反テロリスト法発効
ブッシュ大統領はさる10月26日に反テロリスト法(USA PATRIOT Act)に署名し、法律として発効しました。移民法にも重大な影響がでることが考えられます。反テロリスト法案(H.R. 3162)は下院で357対66、そして上院では98対1という強力な支持を得て成立しました。以前から議論されていた法案よりもある程度緩やかな規制になりましたが、それでもアメリカに入国しようとする外国人、またアメリカに滞在をしている外国人に影響がでるのは必須です。
この法律の重要な点をいくつか考えましょう。
テロリズムの定義が拡大
まず、テロ行為というものが非常に緩やかに規定されています。ある意味、テロリズムの定義が拡大されたと考えてもよいわけです。現在この法律がストレートに適用された例がないですが、たとえば、テロとの連絡係をしていたとみなされたり、テロとみなされる人間と交流がある場合もこの法律が適用される可能性があるのです。
「みなし」でも強制送還に?!
また、テロ組織とアメリカが認定している組織に関して、たとえどのような形にしろ、関われば、テロとみなされる危険性があります。アメリカに入国しようとする外国人に関しては、入国拒否とされる例が多くなるでしょうし、現に入国されている外国人に対しては、強制送還を許す範囲が拡大されました。
疑わしい外国人は拘束も
また、テロリストと考えられる外国人に対しては、司法長官(Attorney General)は法律で定められた期間、拘束することもこの法律で許されることになりましたし、裁判所に対する嘆願も制限されることになりました。今回の法律で、外国人の手続的デュープロセスも制限される可能性があるのです。
関係機関は情報共有で組織強化
アメリカ移民局、司法省、FBIなどは情報の交換や組織の強化に乗り出しています。たとえば、カナダとの国境を警備する国境警備隊の増強が図られ、2~3倍の数の警備隊員を配置する用意があるそうです。また、移民局、司法省、それにFBIは犯罪データベースを共有することを決め、指紋の照合などをスムーズに行うようにするようです。
テロ被害者には特別措置も
このテロ法では、9月11日のテロによって亡くなった遺族・雇用主がいて、その影響で永住権の申請が中断してしまったような場合には、特別に永住権を与えるという措置もとられることが決まりました。また、9月11日のテロによって永住権その他の移民法上の申請が遅れた場合にも、申請の猶予期間が与えられるなどの特別措置が講じられました。
マネーロンダリングは入国禁止
その他の特筆する点としては、マネーロンダリングをしていると疑われる外国人はアメリカの入国が禁止される条項が追加されました。
以上のように、外国人に対してアメリカ議会は非常に厳しい姿勢をとるようになりました。
学生ビザの外国人へはモニター強化
特に気をつけなくてはいけないのは学生ビザを取得しようとする外国人、また学生ビザをすでに持ち、就学している外国人です。なぜなら、今回のテロ参加者のなかには学生ビザをもちつつテロに従事していた者がいるからなのです。移民局は学生ビザで入国している外国人のモニターをさらに強化するためにシステムをアップデートしていますし、加えて、各国にあるアメリカ大使館・領事館に対してもビザの発給を厳しくするよう動いています。
在アメリカ外国人には制限が増える
今回の法案は9月11日のテロに反応して成立した法律です。アメリカ人の安全面を強調することは国益重視として納得ができるところですが、特にすでにアメリカに入国している外国人に関して言えば、手続的、また実体的デュープロセスが制限されることになります。ひいては憲法違反の問題がでてくる可能性があります。私はアメリカ移民法協会、アメリカ法廷弁護士協会を通じて、この新法の動きをモニターしていきたいと思っています。
それではまた次回まで。
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