米_エスクローとは(1)_1433

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1433回 弁護士 鈴木淳司
Sep 1, 2024

 また、皆さんに正式にご報告するときがあるでしょうが、先週私の所属する事務所の引っ越しが決まりました。
もちろんサンフランシスコ内での移動なのですが、とても楽しみになってきました。

サンフランシスコはITブームの波に呑まれ、プラスにブレたりマイナスにブレたり翻弄されてきました。
政治も税収の上下が地方都市で起き、落ち着かないことから、犯罪も増え、ホームレスも増え、他の都市に比べてもコロナ禍後の回復が遅れているのが実情です。

裏から言うと、今不動産にチャンスがあると思い、引っ越しを決めたわけです。
みなさんもぜひ新しい事務所を観にきてください。

米_エスクローとは(1)_1433

 さて、今回からまた皆さんからいただいていた質問をみなさんと一緒に考えていきましょう。

いただいている質問をまとめると「友人を通してアメリカの会社に以前から投資をしていました。最近になって、株の売却話が会社からでてきました。私は株を売ることについて異論はないのですが、株の売却にあたってエスクローを使いたいと会社側の弁護士から言われています。私としてはわざわざ、エスクローなどを通さず簡単に売却を終わらせたいのですが、会社側がエスクローに固執しています。よくエスクローの制度がわかっていないのですが、売り主である私にもメリットがあるものなのでしょうか。」という質問です。

売買を安全に成立させるエスクロー

 エスクローは、日本でも紹介されつつありますが、まだまだ日常では馴染のないコンセプトだと思います。

難しい法律用語を多用して考えるよりも、皆さんが私と一緒に考えやすいように事例を使い、まずエスクローはどういうものか、どういう機能を持つのかを考えてから、今回の質問を考えていきましょう。

 まず、エスクローが、実務でどういう場合に使われるか見ていきましょう。

不動産や株の売買について回る不安

エスクローは「預託」と日本語翻訳がなされますが、これだけでは実務では説明が足りないと思います。

たとえば家や株などを売る人、買う人がいますよね。
売主は、不動産や株券を買主に渡し、一方で買主は代金を払うということになります。

お金を払う側は、現金を用意すれば良いので簡単ですが、一方で、不動産や株券というのは、色々な事情がついて回る可能性があります。

たとえば、不動産であれば、なにか担保設定がされていないか、売主は、本当に地面師のような詐欺をしている人が関与していないか、なにかその不動産が訴訟に巻き込まれていないか、など確認が必要になってきます。

株券も、本当にその人が株の権利を持っているのか、会社ではどのように株が発行されたのか、そしてなにか第三者の権利がついていないのか、など、潜在的な問題が付着している可能性があるわけです。

買主と売主、双方の問題を最大限除去する

買主はお金を払うわけですから、しっかり権利を得られるかが重要な問題になります。

そうすると、特に買主にしてみれば、お金を支払うのだから、想定しているものを受け取りたいと思うわけです。不動産や株に問題がないことを確認してから支払いを行いたいと考えるわけです。

また、売主にしても、たとえば不動産を売る場合には、現金払いであればよいのですが、多くの場合買主がローンを組むわけですから、ちゃんとお金が振り込まれるのか確認してから、権利を手放したいと思うわけです。
 
このように、売主、買主両者にとって、色々な問題が錯綜する可能性があるのでその問題を最大限除去したいと思うのは当然です。
そのための解決策が一般的に「エスクロー」と呼ばれるものです。

エスクローとは

エスクローは「契約を問題なく履行するための仕組み」といったイメージで覚えてください。

そしてこの仕組みというのは、売買契約であれば、売主がなすべきこと、買主がなすべきことを事前に合意します。
そして売主と買主から独立した第三者がその合意内容に基づいて、売買に問題がないことを確認する、というものです。

このような流れを担うのがエスクローです。
そうすると、エスクローとは「合意内容を確認し、合意にしたがって契約の履行を補助する仕組み」ということになろうかと思います。
この仕組みを担ってくれる人をエスクロー・エージェントと呼びます。

 いかがでしょう、すでに知っている方には当たり前かもしれませんが、エスクローをご存知ない方が読まれて理解できる内容でしたでしょうか?

できるだけ実際の流れに沿って考えてみましたが、もしわかりにくいようであれば、またエスクローとはなにかについて質問をしていただければと思います。

エスクローという内容をわかっていただいたという前提で次回、今回いただいた質問を続けて考えていきたいと思います。

 もうカリフォルニアでは秋の気配を感じてきましたが、日本は台風などでまだまだ暑そうですね。
どこにいらっしゃっても体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょう。




あなたがずっと抱いている疑問を解消しませんか?
しかし、アメリカの法律事務所はハードルが高い!!確かに。

JINKEN.COMでは、アメリカの弁護士事務所への橋渡しのサービスを提供しています。
お客様の状況とニーズ、ご希望を聞き取り、必要な書類等をまとめる お手伝いです。
私たちは、ジャッジをいたしません。
皆さんの頭の中、お気持ちを、できるだけ正確に表現する業務を行います。
ご料金は事前に明確にご提示し、追加のご請求は一切ございません。
i@jinken.com または こちらから直接お問い合せください

■関連記事

米国政府の移民に対する考え方(1)_1430

米国投資ビザと雇用創出(2)_1431

運営弁護士

アメリカ暮らしを現実に。
JINKEN.COMにアカウント登録して最新のアメリカ移民法にキャッチアップ

■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program

アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者として長期合法滞在する方々がいらっしゃいます。

応募サポート希望の方はこちらから

日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。

■グリーンカードDV当選後サポート

グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!

グリーンカード当選後サポートはこちらから

充実した当選後サポートで、安心してグリーンカード取得まで進めましょう。家族・仕事・結婚・離婚・海外在住・介護に闘病と場面は様々ですが、お客様のニーズに柔軟にお応えしています。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。