法律ノート 第1430回 弁護士 鈴木淳司
Aug 17, 2024
先週シカゴに出張していて、週末まで滞在したのですが、人の多さにびっくりしました。
特に中心の繁華街(マグニフィセント・マイル)に行くと人が多すぎてかき分けて歩くような状況でした。
レストランも盛況で、場合によっては1時間待ちというところもありました。
サンフランシスコにいつもいる私にとっては衝撃でした。
まだ人も戻らず、SNSのXもサンフランシスコを出ていく、と公言しており、これから人が戻ってくるまでにはしばらく時間がかかるのかな、と思いましたが、美しいサンフランシスコがまた賑わい、レストランもワイワイすることを夢見ています。
みなさんの週末はいかがでしたか?
米国投資ビザと雇用創出(1)_1430
さて、今回からまた新しく皆さんからいただいている質問を考えていきましょう。
いただいている質問は、「日本の企業(上場はしていない)の社長です。私が10年ほどかけてつくった会社ですが、それなりに利益をあげたのでアメリカに進出したいと思っています。進出するにあたって、現地の不動産を所有して賃貸をするといったスキームを考えています。もともと家族も同様に考えているのですが、アメリカに永住してみたいということもあります。何人か移民関係の弁護士に聞いたのですが、賃貸する物件を買うだけで就労ビザや永住権を取得するのは難しい、という回答を得ています。なぜなのでしょうか」というものです。
投資ビザと米国内雇用
「投資ビザ」という謳い文句で、外国からお金を集めることは、アメリカだけではなく諸国が行っています。
アメリカの場合、単に外国からお金を持ってくるだけではなく、アメリカ国内の雇用を促進するというベクトルをいつも内包してきました。
ですので、一般論ですが、投資ビザや永住権の要件として、どの程度雇用を創出しているのか、をメルクマールにしているのです。
通常は、移民行政関連のトピックは、私が別途書いている「じんけんニュース」でご紹介しています。したがって、法律ノートでは、一般的なアメリカ連邦政府の移民に対する考え方をご紹介していければと思います。
移民の国、アメリカ
アメリカ合衆国は常時移民に対して開放的な国でした。
それでも、白人を優先し、他の人種を排除してきた歴史があります。
しかし、70年代になり、すべての人種に対し平等に移民を奨励してきたこともあり、現在ではかなりの人種的なミックスに成功しました。
アメリカも力を持ち始めると、移民を制限し国内の利益を尊重しようとする動きが出てきましたが、これはアメリカだけではないと思います。
「投資」の実質は雇用創出
そこで、「投資」という言葉を強調して外国人にアピールしていますが、現在では、単にお金を持ってくるだけではなく、雇用を創出することを基礎としているのです。
このような基礎的な考えかたがあるので、アメリカで賃貸物件を買い、管理するだけでは、就労ビザの対象となりにくいわけなのです。
もちろん、巨額の投資をして、大型物件をいくつも所有したうえで、たとえば管理会社をつくったり、付随する工事関係会社をつくったり、そこにアメリカ人を多数雇用すれば話はちがってくると思います。
なぜなら、投資物件を持つだけではなく、雇用を多数生み出しているからです。
移民局がビザや永住権を出すポイント
以前からこの傾向があるため、外国人が移民法で適宜「投資」をする場合というのは、雇用を生み出す、レストランが多く考えられてきました。
多くの投資により永住権を得てきた外国人は、アメリカのレストランが絡んでいることが多いわけです。
また、雇用が必要とされる過疎地帯に投資をすることで、より少ない金額で永住権が取得できることから、今でも、かなり田舎の方に、なんとかエキスプレスという名前の中華料理チェーン店が多いですよね。
移民局がビザや永住権を承認するには、投資金額だけではなく、表裏一体として雇用を生み出すかに焦点が当てられていることを理解してください。
ここから次回もう少し具体的に掘り下げて、移民行政にかかわる「投資」について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
まだまだ日本では酷暑が続いているようですが、自身も気になるところです。
まだ、夏まっさかりですが、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
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