法律ノート 第1429回 弁護士 鈴木淳司
Aug 4, 2024
パリオリンピックがたけなわです。
色々な種目があることと、時差があるので、どれを見てよいのかわかりませんが、最近では柔道を見ていました。
昔は「日本のお家芸」といっていましたが、どの国も選手層が厚く、世界の選手はすごいと思いました。
また見ているよりも、激しい闘いで怪我も多く、選手のがんばりに見入ってしまいました。
皆さんはどの競技を追われていらっしゃいますか。
アメリカ_支払い方法を制限できる?(2)_1429
さて、前々回(前回は他の話題を取り上げお休みました)から続けて「サンフランシスコのある飲食店で、アメリカン・エキスプレス(アメックス)のカードで支払おうと思ったら断られました。通常、どこでも使えるのですが。そして、パーソナルチェック(小切手)で支払おうとしたらまた断られ、私が誘ったにも関わらず、私が招待した人に支払いを頼むことになり、恥をかきました。このように、支払い方法を制限することは許されるのでしょうか。」という質問を考えていきたいと思います。
前々回は、アメリカの社会的な個人振出小切手(パーソナルチェック)の現在の意味、すなわち、あまり使われなくなってきた現状を社会的観点から考えました。
今回は、法律の観点から質問を考えていきたいと思います。
カリフォルニアでは企業に支払方法の裁量
カリフォルニア州法では、レストランを含む企業は、さまざまな支払い方法を受け入れるか、拒否するかの裁量権を持っています。
たとえば、カリフォルニア州ビジネス・専門職法(California Business and Profession Code)11400条(b)項において、手数料の支払いに個人小切手またはクレジットカードを受け入れることが「できる」と規定していますが、企業がこれらの支払い方法を受け付ける義務を負うとは規定されていません。
同様に、カリフォルニア州行政法6160条では、小切手を含むすべての支払い方法につき、手数料が伴うことから企業が小切手を受け入れることを義務付けていません。
小切手を受け付けずとも違法でない
ですので、今回の質問に簡単にお答えすると、個人振出小切手(パーソナルチェック)をレストランが受け付けないということについてなんら違法はありません。
もちろん、店側も顧客と取引に入る前に、どのような支払いを受け付けるか明示しておくべきではあると思います。
小切手拒否を認めた裁判例も
カリフォルニアの裁判例においても、債権者 (この場合はレストラン)が支払い方法として個人小切手を拒否できるという考えが認められています(Littlev. Pullman 219 Cal. App. 4th558)。
このように、法律においても、裁判例においても、レストランがパーソナルチェックの支払いを拒否しても、なんら問題ないということになります。
多様な支払方法で備えておく
今回の質問にあるように、レストラン側が拒否をした場合には、どうするかですが、他のクレジットカードを使うか、店の許可を得てどこかで現金を確保してから払う、といったことが考えられます。
いつも、クレジットカード、デビットカードなど何種類か持っておくことが重要だと思います。
不確定要素が伴う小切手は使われない傾向
それから、以前はトラベラーズチェックといって、いわゆる銀行振出小切手のようなものがよく使われていましたが、これも随分減りました。
現金と同様のものを持ち歩くのは、盗難に遭うとダメージも大きいですし、やはりチェックなので、受取を拒まれる可能性も高くなってきました。
そもそも、パーソナルチェックでも、銀行振出小切手でも、支払拒否をされる可能性は口座の現金が不足しているということだけではなく、署名がマッチしないとか、記載に不足があるとか、銀行が判断しないとわからないという不確定要素が伴うからです。
このような要因でチェック取引が少なくなり、銀行などの金融機関も、デビットカードなどにシフトしている理由の一つになっています。
受付されないクレジットカードも
それから、今回質問にあるように、Amexを拒否するというレストランもあり得ます。
Amexは伝統的に、店側の決済費用がほかのカード会社よりも高く、レストラン側としては手数料を多く支払うことになるので、受付しないというところも多くあります。
クレジットカードが主流になったとしても、現在では、どこの決済会社の手数料が安いか、という競争が起きている面もあります。
今回考えた内容を総合すると、パーソナルチェックはあくまでも補助的な支払い方法になってきたということを理解されておいてください。
それでは、まだ夏真っ盛りですが、暑い日が多いですから、水分を取りつつ体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
次回からまた新しい質問を考えていきたいと思います。
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