法律ノート 第1427回 弁護士 鈴木淳司
July 21, 2024
私がメンバーのゴルフコースで、最近、同組でプレーした81歳のメンバーの方がいました。
実にゴルフもうまいのですが、プレー途中、おもむろにフラスコに入った18年もののスコッチを小さなぐい呑みに4杯注ぎ、同組の人たちに振る舞い、葉巻をくわえてプレーをされていました。
会計士の方で、とても会話がはずみ、彼の「ゴルフバディー会」の一員に加えられましたが、悪い気はしませんでした。
やはり、いくつになっても若い人は若いですし、人生というのはこうやって楽しむのだな、と勉強になっています。
いくつになっても友人をつくることは楽しいものです。
皆さんは、なにかアクティビティを暑くても積極的にされていますか。
アメリカ_支払い方法を制限できる?(1)_1427
さて、今回からまた皆さんからいただいている新しいトピックを皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、「サンフランシスコのある飲食店で、アメリカン・エキスプレス(アメックス)のカードで支払おうと思ったら断られました。通常、どこでも使えるのですが。そして、パーソナルチェック(小切手)で支払おうとしたらまた断られ、私が誘ったにも関わらず、私が招待した人に支払いを頼むことになり、恥をかきました。このように、支払い方法を制限することは許されるのでしょうか。」というものです。
アメリカでの支払はACHとクレジット
私も日本で寿司屋に行くと、支払いは現金のみのところも少なくないですし、未だにカード決済にアレルギーをお持ちの方もいます。
アメリカでは、もともと小切手支払いが当たり前でしたが、現状ではACHという銀行から直接引き落とす方法と、クレジットカードでの支払いが主流になってきました。
現在、小切手での支払はかなり少なくなっています。
銀行のウェブサイト経由で、小切手を銀行から発行するシステムもありますので、巷の予想では、ペンを使って、自筆で書く小切手は、2026年でほぼなくなるという話のようです。
敬遠されがちな個人振出小切手
なぜ、アメリカでは個人振出小切手(パーソナル・チェック)が主流だったか、今回の質問を考える上で参考になると思います。
個人振出小切手は、現在でも、オーダーをするのにはお金も数十ドルかかります。
もともとATMなども経由せず、小切手帳を作り、自分で勘定をして、請求された金額に対して支払うツールとして根付いていました。かなり長い間利用されています。
現在でも、使われている方がいらっしゃいますが、ある意味敬遠される支払い方法です。
なぜでしょうか。
小切手を振り出した人を信用するリスク
個人振出小切手というのは、銀行ではなく、銀行に口座を持っている人が振り出すわけで、銀行は直接には関係しません。
小切手で支払うという人が「支払うことを約束する」意味があるだけです。
支払うことを約束した人がちゃらんぽらんな人で、ちゃんと口座から引き落とす金がなければ、不渡になります。
不渡になることを知りながら小切手を振り出したりしたら、法律上の罰則はかなり重いのですが、小切手を受け取った人にとってはたまったものではありません。
支払いを受けられないからです。
小切手は、その小切手を振り出す人が「ちゃんと払う」ことが前提で、受け取る側もそれを「信用」することが前提になるわけです。
人を信用することはエネルギーが必要になります。
多くの場合、ほぼ初見の人を信用するのは誰にとってもかなり大変です。
このような個人振出小切手の支払制度を、商行為をする人たちに課していたわけです。
物やサービスを売る人たちの観点からすれば、支払いを小切手で受けるのは、その小切手を振り出した人を信用するというリスクを負うわけです。
リスクを負わない方法が選ばれる
テクノロジーのおかけで、商売をする側にもこのリスクを負わない方法がたくさん出てきました。
クレジットカード、ACHなどです。
そうすると、小切手を「お断り」するビジネスも増えてきたわけです。
小切手は、アメリカ的な利益の先取文化から来ていると思います。
小切手は振り出すと、銀行に回るまでに数日はかかりました。
そうすると、キャッシュフローの観点からは支払いを遅らせることができるわけです。
このような制度が、普通に90年代まで使われていたことになります。
現在、政府以外の私的なビジネスでは、個人振出小切手を敬遠するようになり、小切手は現在ではマイナーな支払方法となっています。
ここから次回考えていきましょう。
今回は、法律的な話というよりもその前提になる社会的な状況について考えました。
次回また続けて考えていきましょう。
暑い日が続きますが、体調をコントロールしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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