STEMと外国人学生

Washington DC Capitol of the United States

じんけんニュース 弁護士 鈴木淳司 8-31-2024

アメリカでは2000年代から、STEMと呼ばれるコンセプトが教育で台頭してきました。

主に教育に力をいれるべき分野を示している言葉です。

science,technology, engineering and mathematicsすなわち科学・技術・工学・数学分野の頭文字を使って作られた造語です。

科学技術等の分野を伸ばすことで国力につながるという発想であり、アメリカは国をあげてこのコンセプトを押しています。

アメリカはSTEM分野で、特に教育に力をいれていこう、移民を受け入れるにしてもSTEM系分野を優先していこう、という考えに繋がります。

こうして、2000年代から、STEM関連の移民については一定の優先を移民局は行うことになります。

他の国と競って優秀な人材を囲い込みたいという思いが現れています。

すでにアメリカ国内にいる留学生の皆さんには、当たり前の情報かもしれませんが、これからアメリカに留学しようと考えられている方々にとっては、単に留学するだけではなく将来的にアメリカで就労したいと考えられているかもしれません。

ここで、留学したことを基礎として将来的にアメリカ国内で就労できるのか、ということを考えていきたいと思います。

原則として、留学生は米国で働くことはできません。

一方で、F-1ビザで留学していると留学生はオプショナルプラクティカル トレーニング (“OPT”)を受けることが可能です。

F-1を持っている留学生は、専攻分野に関連する職種であれば、最長12ヶ月間の就労が可能になります。
修了前OPT (学位取得中) または修了後 OPT (学位修了後)という2つのOPTが利用できますが、合計期間で12ヶ月の就労が可能となります。

このOPTですが、特定のSTEM分野で学位を取得したF-1留学生は学位修了後OPTを24ヶ月間延長し、合計36ヶ月間の就労が可能になります。
このようにSTEM関連の留学生を公に優遇しているのです。

留学生が当初12ヶ月間のOPTを取得する場合、少なくとも1年間、フルタイムの学生として良好な成績を修めていること、F-1ステータスを維持していること、就労する内容は、専攻分野に直接関連していること、などの要件を満たさなければなりません。

この要件に加え、さらに24ヶ月間のOPTを取得したい場合には、連邦政府がSTEMとして認定している学位分野に含まれるSTEMの学位を取得したこと、当初のOPTが失効する90日前までに申請をすること、などが必要になります。

そこまで難しい要件ではないので、STEMとして指定されている学位分野であることが重要であります。
また、学位に基づいて、OPTを得ることができるので、学士で一回、修士でまた一回、といった形でOPTを利用することも可能です。

このように、STEM分野の留学生は、OPTに基づいてアメリカに数年間に渡って就労しながら滞在できるので、その間にビザや永住権をスポンサーしてくれる就労先を見つけていき、安定してアメリカに滞在できるような道を模索できます。

近時H-1Bビザ(専門分野就労ビザ)は抽選などもあり、なかなか取得が自力だけでは難しい部分もあるのですが、最近では、優れた功績を残している外国人に与えられる、O-1ビザおよび永住権(EB-2)等を利用する方法が顕著に増えています。

O-1ビザの申請数は2018年では5,000件程度でしたが、2023年では倍の1万件程度に増加していますし、永住権EB-2の申請においては、2018年に7万件ほど許可が下りていますが、2023年ではその数は1万件ほど増加しています。

もちろん、すべての申請がSTEMに基づくものではありませんが、確実にSTEM分野における申請が激増していると考えられています。

このように、STEM分野に関してはアメリカ政府が移民を優先的に奨励しているので、アメリカに留学を考えている若い人たちにとって、将来的にアメリカ国内での就労の道が開ける可能性が大きくなるということを覚えておいていただきたいところです。

次回、また新しいトピックについて考えていきましょう。

作成者: jinkencom

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