米国投資ビザと雇用創出(2)_1431

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1431回 弁護士 鈴木淳司
Aug 19, 2024

 日本はお盆休みでしたね。
大型連休にも関わらず、なぜか仕事のメールのやり取りもいつもに比べて多かったように思います。
理由を聞くと、暑くて外に出られず、家でゆっくりすごしているので、仕事のメールもちょこちょこいじっている、といった状況のようです。
同じ地球なのに、日本では、体温より気温が高いような状況のようですが、サンフランシスコは夜には長袖がないと寒いくらいです。
不思議なものです。
日本の皆さんは、どうか体調を崩さないようにお気をつけてお過ごしください。
お盆休みで少し気分転換されたでしょうか。

米国投資ビザと雇用創出(2)_1431

 「日本の企業(上場はしていない)の社長です。私が10年ほどかけてつくった会社ですが、それなりに利益をあげたのでアメリカに進出したいと思っています。進出するにあたって、現地の不動産を所有して賃貸をするといったスキームを考えています。もともと家族も同様に考えているのですが、アメリカに永住してみたいということもあります。何人か移民関係の弁護士に聞いたのですが、賃貸物件を買うだけで就労ビザや永住権を取得するのは難しい、という回答を得ています。なぜなのでしょうか」という前回から考えはじめたトピックを今回も続けて考えていきましょう。

不労所得だけではビザ取得が難しい

 前回賃貸物件をアメリカで買うだけでは、就労ビザや永住権を取得しにくいということを考えました。

いわゆる不労取得(パッシブインカム)だけでは、ビザに結びつけにくいのです。
アメリカの証券口座に株式をたくさん持ち、不労取得を得ていたとしても、同様にビザや永住権をサポートする基礎にはしにくいです。

不労所得がなんらかの形でビジネスとなり、そのビジネスが雇用を生み出している、ということであれば、多少ビザに結び付けやすくなります

移民法にいう「投資」とは

移民法にいう「投資」は、不動産や株式を考えているわけではなく、実際に動いているビジネスにお金を投入することを前提にしているのです。
つまり、アメリカ人などの雇用を生み出すための「投資」でなければいけないことになります。

 したがって、ビザや永住権の基礎となる「投資」は、たとえば、レストランなどを購入し経営する、貿易会社を設立する、日本のチェーン店をアメリカで展開する、といった積極的な資金投入が必要になってくるわけです。

ですので、単に今回質問されている方のように賃貸物件を買うだけでは移民法上の「投資」になるわけではないのです。

この基本的な考え方を理解していないと、いくら大型の物件をアメリカで買ったとしても、ビザや永住権に結びつかないことになってしまいます。

積極的な投資で雇用を生み出す

この基礎的な考え方は、移民申請書類にも現れています。
詳細に、何人、アメリカ人や永住権保持者を雇用しているのか、どの程度の給与を払っているのか、などの情報を記載することが求められています。

 このようにアメリカ国内で雇用を生み出すことに重きが置かれていますので、裏を返せば、リスクの少ない「投資」というだけでは足りないわけで、積極的にビジネスを経営し、人を雇用するという形態をつくらなければなりません。

私自身も30年近く、アメリカのビザや永住権の基礎となるビジネスを色々見てきました。
長続きする会社もありますが、短期で立ち行かなくなる商売もたくさんあります。

ビジネスというのは、リスクを伴いますので、どうしてもビザや永住権の相談の初動で躊躇される方も多くいらっしゃいますし、それは性質上当たり前だと思います。

アメリカに住みたい…まずはビジネスプランを

 「アメリカに住みたい」という思いが先行すると、できるだけ安全な投資を、という考えに結びつきやすいとは思いますが、それではビザや永住権の申請では通らないのです。
思考過程として、まずはどういったビジネスに投資をして、長期的に利益が出るのか、安定させることができるのか、というビジネスプランを作ることが先です。
漠然と投資をすれば、なんとかなる、という程度でも難しいと思います。

やはり、ビジネスプランを客観的に見てもらえるプロの意見をもらいながら、まずはビジネスに対する投資について検討され、どの程度雇用を生み出せるのか考えることが就労ビザや永住権を考えるための第一歩となります。

賃貸物件を購入して、大きなビジネススキームの一部とすることはできると思いますが、不労取得だけでは就労ビザや永住権の申請基礎とすることはなかなか難しいということは覚えておいてください。

 次回また新しくいただいているトピックを考えていきたいと思います。

もう、アメリカでは学校のはじまる時期ですね。
人が移動して慌ただしくなる時期です。
コロナもまた再燃しているようですので、健康に留意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。




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作成者: jinkencom

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