米で怪我_訴訟を起こせるか_1424

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1424回 弁護士 鈴木淳司
July 2, 2024

 先週大谷選手が出場する試合をジャンアンツ球場で観てきました。
ほぼ満席でした。大谷人気は、敵地であるサンフランシスコでもすごいものでした。
趣向を変えて、久しぶりに外野席の前の方で観たのですが、野球全体が見えるだけではなく、投球の速さも感じられましたし、ホームランボールが飛んできて観客が皆、狂喜するなどかなり新鮮でドキドキ感を味わえました。
テレビで観るのとは全然違いますね。
近くに座っていた大谷のジャージを来た子供も興奮していましたが、大谷選手が、このように世界の子どもたちが憧れて夢見るような選手であるというのは素晴らしいことだと思いました。
皆さんは、外でのアクティビティーを楽しまれていますか。

米で怪我_訴訟を起こせるか_1424

 さて、今回からまた新しく皆さんからいただいている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。

いただいている質問をまとめると「私達家族はベイエリアに駐在として赴任しています。私の親が日本からベイエリアに遊びにきたときに、サンフランシスコ市内でホームレスのような人に瓶のようなものを投げられました。その瓶が父親の後頭部にあたり、父親は怪我をしました。大事には至らず簡単な治療で終わりました。警察が来てその瓶を投げた男を拘束していました。両親は旅行者保険に入っていたので、出費は抑えられましたが、このような場合、訴訟をして何か回復をすることができるのでしょうか、それとも泣き寝入りなのでしょうか。」という質問です。

ホームレス保護に力を入れるサンフランシスコ市

 サンフランシスコダウンタウンは、コロナが収束してもなかなか人がダウンタウンに戻ってきません。空室率が40%近いそうです。
街の人の数を見ていると、それよりも多いかもしれません。
リモートが普及し、特にIT関係の業種は、わざわざ通勤しないという人も多く、会社も従業員が会社に来ないということで、今は出勤する人と、しない人で給与の差別化まではかってやっているようです。

人が少ないので、ホームレスも快適?に過ごせてしまっているようですが、サンフランシスコ市は、かなりホームレスを保護する政策をとっているので、今回質問されている内容のようなことも残念ながら少なからず起きているようです。
街全体の回復は遅いですが、どこかできっと昔のような華やかな形に戻ってくると私は信じています。

ホームレスに対する民事訴訟は非現実的

 さて、今回のような状況に遭遇してしまった場合には、何か法律的にできることがあるのでしょうか。

結論からいうと、残念ながら弁護士が稼働して訴訟をすることは色々難しい面があります。

ホームレスの人は住んでいるところがないわけですから、財産もないでしょう。
そうすると、ホームレスの人に対して訴訟の送達をすることも難しいですし、判決をとったところで、執行の対象となる財産がありません。
訴訟を提起して、判決まで至るのはかなり時間もかかり、コストもかかります。
ですから、今回の質問のような件で、損害賠償を求めて民事訴訟をするというのは現実的ではありません。

犯罪被害者基金(CalVCP)

犯罪被害者基金(CalVCP)を申請

一つの方法は、犯罪被害者基金(CalVCP)というものがあります。
サンフランシスコでは、https://sfdistrictattorney.org/victim-services/victim-compensation/ ここがそのサイトです。

▶️ California Victim Compensation Program (CalVCP) :犯罪被害者基金

刑事事件の被告人は、有罪を認めると必ず罰金の他に法律で決められた100ドルの被害者給付金の支払いを裁判所から命令されます。
ここから徴収した額で基金がつくられています。

この給付金は、バックアップ的な意味合いがあり、他の方法で被害額を回収できるのであれば、すぐにはこの基金は使えません。
他に被害額を回復できない場合に申請をすることができます

申請をするには、被害が起きてから7年間ということになっています。
被害が回復できる対象は、医療費、逸失賃金、葬儀費用、精神的なカウンセリングなどの治療費用などが含まれます。
すくなくとも、このホームレスの人が裁判にかかり、公に犯罪被害者ということになれば、このCalVCPで被害が回復できる道はあるということです。
ただ、どの程度回復されるのか、ということになると未知ではあります。

泣き寝入りしない為に事前対策

 私は「泣き寝入り」という言葉はあまり好きではありません。
ですので、後で痛い目に会わないように保険などにはちゃんと入っておくことをお勧めします。
結局、想定できる危険に対しては、保険などで手当をしておいて、楽しい旅にしていただければと幸いです。

 それではまた次回新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

今年の夏は忙しく私はなかなかゆっくりした時間がつくれないのですが、皆さんは夏休みを楽しまれていますか?
まだまだ、コロナの話も聞きますが、気を付けて夏を謳歌されてください。
体調に気を付けながらまた一週間がんばっていきましょうね。




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作成者: jinkencom

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