買い物中に大怪我。店に医療費を請求できる?(1)_983

Golden Gate sanfran

法律ノート 第983回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 2, 2015

 アメリカはもうすっかりホリデーシーズンで、街の至るところでは飾りが綺麗になりました。サンクスギビングはいかがでしたか。来客もあり、私はターキーを焼きましたがかなり余りました。単に残り物を食べるのは味気ないので、オーガニックのターキーを選び、骨からダシをとり麺と合わせ、身はカレーにしました。

 山間部では例年より早く雪も降ったので、水不足解消に繋がるのでしょうか。皆さんのホリデーはいかがですか。

買い物中に大怪我。店に医療費を請求できる?(1)_983

 さて、今回から新しく皆さんから頂いている質問を考えていきたいと思います。いただいている質問は、まとめると「量販店に買い物にいったときに、小学生の子供が滑って転びました。固い床で腕の骨にヒビが入って、頭部も強打したので安静が必要ということになりました。こういった場合、よく聞くのが店側が責任を負うということですが、この量販店に対して医療費などを請求することができるのでしょうか。なお、現状で、子供の怪我は私の勤務先の保険で家族もカバーされるので、それでまかなっています。」というものです。

アメリカは皆保険制度ではない

 よくアメリカでは、道で滑ってもどこか訴えればお金が出るといった話が聞かれます。お店でも、店内で起きたことについては、店がすべて責任を負う、というような話もあります。こういった話が一人歩きして「アメリカは訴訟社会でコワイ」といった短絡的な意見に繋がるのですが、今回の質問を皆さんと一緒に考えながら、実際はどういうときに、今回の量販店などが責任を負うのか、ということを観察していきましょう。

 今回の質問を考えるうえで、まず日本とは違ったアメリカの健康保険制度を考えておきたいと思います。オバマ政権が鳴り物入りで行ったはずの国民皆保険制度は煮え切らない形で終わり、事業者に対してかなりの負担が発生した反面、医療費の高騰なども発生しています。

 一方で、皆保険か、というとそうではありません。先進国のなかでも、アメリカは特殊で、皆保険制度がないのです。皆保険制度は社会主義的な発想だという考えがかなり根強いこともあります。したがって、各自が自己責任で保険に加入することが原則となります。

 日本であれば、怪我をすればあまり考えずに国民健康保険などを使って治療を受けることができますよね。もちろん政府が大きく介入する制度ですので、政府の負担もかなり深刻になる一方で、国民であれば基本的に健康保険に加入することができる制度でもあります。

 このような保険制度の違いがあるので、どこまで経済的な弱者を救うべきなのかという命題に対しても法律は違う答えを出すことになるのです。

買い物客は、法律用語では「ゲスト(guest)」

 あまり難しい法律論は避けますが、アメリカでは「ゲスト(Guest)」という言葉を一般的にもよく使います。日本語化もしているでしょう。いわゆる客人とかお客様といった意味があります。

 このゲストというのは、法律用語でもあります。土地建物の所有者や管理者に承諾を得て立ち入る人を指します。承諾はかなり広く解されていて、「入っていいよ」と明らかに告げられていなくても、お店などは不法な目的を持っていない人は全員入って良い、と黙示のお約束があると考えられています。

 したがって、量販店に買い物をするために自動ドアを開けて入れば、明示の承諾がなくても、皆さんは「ゲスト」になるわけです。

ゲスト以外は「トレスパッサー(Trespasser)」

 一方で、万引きをする目的で量販店に入れば、そういった目的での入店を予定していないので、ゲストではありません。承諾がなく土地建物に入ると侵入者「トレスパッサー(Trespasser)」という分類になります。

 今回質問されている方は、量販店でショッピングをされているので「ゲスト」ということになります。今度皆さんも量販店などにいってよく見てください。店内で、トイレなどにGuest onlyと書いてあるところも多いと思います。これは、買い物をする人を予定しているという意味が含まれているのです。

 立入りに承諾を得ていないトレスパッサーに比べて、ゲストに対しては土地建物の所有者・管理者は、一般的に慎重な注意を払わなければならないというのが法律の考え方なのです。当たり前ですね。では具体的にゲストに対して、どのような注意を払わなければならないのでしょうか。ここから次回考えていきたいと思います。

 ベイエリアは例年に比べかなり寒い日が出てきています。体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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