米_日本人学生とのトラブル(2)_1420

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1420回 弁護士 鈴木淳司
Jun 2, 2024

 今、カリフォルニアは一年でも一番良い気候なのではないでしょうか。
暑すぎず、湿気もなく、花粉も少なくなってきました。
朝晩は少し肌寒いですが、窓を開けて寝ていても気持ちよく目覚められます。
天気はお金で買えないですし、望むように変えられるわけではありませんから、本当にありがたく享受させてもらっています。
最近は日本との時差を気にしなければいけないことが多く、寝不足気味になっているので、週末に思いっきり寝られる気候に感謝しながらこの法律ノートを書いています。

米_日本人学生とのトラブル(2)_1420

 さて、前回から、英語の質問を私が要約したものをみなさんと考えはじめました。

「日本人の友人で大学院(カリフォルニア)に来ていた留学生がいました。一緒にオンラインセキュリティー関係のアプリを開発していました。その友人がもともとのアイディアを持っていたのですが、友人数名とともに会社をつくろうという話になっていました。資金も5万ドル程度親族や学校の友人から借りてはじめていたのですが、その日本人の友人は資金の大部分を持って日本に帰ってしまい、連絡が取れなくなってしまいました。なぜ日本に帰ったのかとか、お金を持っていってしまったのか、など背景はまだわかっていないのですが、やはり状況を明らかにしたいです。会社の運営もできず、困っています。カリフォルニア州で訴訟をしても無駄なのでしょうか」という質問です。

相手は誰かー個人の特定

 前回、できるだけ質問者の友人(日本人)がどこにいるのかを確定できないものか、ということをお話しました。

この質問者の方は、色々聞いたところ、最近では電話番号さえわからず、SNSで連絡を取り合うことが多く、友人などからは連絡先を聞き出せないようです。

学生らが今回のように企業のスタートアップをするときには、お互いの連絡先などの情報を十分に開示しあってからでないと、なにか問題が起きたときに相手がいったい何者なのかわからない可能性があります。ソーシャルメディアは便利なのかもしれませんが、相手の住所や居所がわからないまま、ビジネスをするのは問題を引き起こしそうです。
やはり、相手の居所については、学校に相談するのが一番良いように思います。

日本帰国した友人への訴訟提起

 さて、今回質問の核部分ですが、日本に帰ってしまった友人に対して訴訟を提起できるのでしょうか。

訴訟を提起することは可能ですが、実際に訴訟が裁判所に係属するのかは微妙なところです。
会社をつくったのですから、会社が原告となって、ご友人に訴訟を提起する形になりましょうか。
被告となるご友人がアメリカ国内で最後に住んでいた地の裁判所に提起する形になると思います。

通常は州の裁判所ですが、相手方が日本にいることが明らかであれば、場合によっては連邦の裁判所に提起することになります。

訴訟提起の主体

 会社が原告となる場合には、通常はCEO、またはPresidentと呼ばれる会社の代表が提起することができます。

問題は、日本にいるご友人がCEOの場合です。
この場合には、会社の内規があれば内規に従って、CEO不在の場合の規定を使います。

他にも色々方法はあります。
CEOが不在なので新たに会社内の議決でCEOを選任する方法があります。

また単に会社内で議決をすることによって訴訟を提起することを可能とすることもできます。
具体的にどのような議決が必要なのかは、その会社の内規によりますし、取締役の数、株主の数などにも影響されますので、具体的な訴訟提起の方法は、具体的な法律相談が必要になってくると思います。

送達ー被告に訴訟提起を通知する

 会社が訴訟を提起するのはさほど難しくないのですが、被告となる日本人のご友人に「訴訟を提起したよ」ということを通知しなければなりません。
訴えられた人が訴訟のことを知らないと、正式に訴訟ははじまらないのです。

このルールは世界各国の民事訴訟のルールでは当たり前ではあります。
相手が知らないまま訴訟を進めても、後で争われる可能性も十分にありますし、民事訴訟を提起して、その提起された書類を相手方に渡して知らせることを日本の法律では「送達」といい、アメリカでは「Service」と言います。同じことです。

送達住所が不明の場合

この送達をしなければならないのですが、相手方の住所がわからないと送達をすることができないわけです。

日本に帰ってしまい、日本の住所がわからなければ、「最後の住所」を使って送達をするのが一般的です。
最後にわかっている住所であれば、アメリカに留学している学生であれば、ドミトリーやシェアハウスなどでしょうか。

カリフォルニアでは、訴状を直接手渡し

送達は、カリフォルニアの場合、訴状を相手方に直接手渡すのが原則になります。
相手に手渡せない場合、同居の人に手渡すか、公告といって裁判所の指示にしたがって、一般の人が見られる方法で新聞等に訴えたことを示す方法があります。

直接手渡せないと、結構送達が難しくなり、時間もかかるのが現状です。
とにかく、今回の事例のような場合には、送達ができるかどうかが訴訟を提起できるかのカギになると思います。

ここから次回もう一回使って考えていきましょう。
 
カリフォルニアには、火事のニュースがちょこちょこ増えてきました。
また、夏から秋にかけての火事が心配になりますが、自分のできることに気をつけるしかないでしょうね。
天気を楽しんでまた一週間がんばっていきましょうね。




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作成者: jinkencom

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