法律ノート 第1421回 弁護士 鈴木淳司
Jun 10, 2024
先週は数日サンフランシスコでもかなり暑い日が数日ありました。
異常気象ですね。
サンフランシスコは基本的にクーラーがどこでもついておらず、冬のヒーターだけついている状況ですから、かなり暑くなるとどうしようもありません。
このところ、夏の暑さは異常になってきているので、サンフランシスコ市内でも、冷房がないとやっていけなくなってしまうのではないでしょうか。
確実に天候が変化していますね。
みなさんは、夏をどうお過ごしでしょうか。
米_日本人学生とのトラブル(3)_1421
さて、前二回考えてきた、「日本人の友人で大学院(カリフォルニア)に来ていた留学生がいました。一緒にオンラインセキュリティー関係のアプリを開発していました。その友人がもともとのアイディアを持っていたのですが、友人数名とともに会社をつくろうという話になっていました。資金も5万ドル程度親族や学校の友人から借りてはじめていたのですが、その日本人の友人は資金の大部分を持って日本に帰ってしまい、連絡が取れなくなってしまいました。なぜ日本に帰ったのかとか、お金を持っていってしまったのか、など背景はまだわかっていないのですが、やはり状況を明らかにしたいです。会社の運営もできず、困っています。カリフォルニア州で訴訟をしても無駄なのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。
訴訟提起の送達は原則手渡し
前回は、送達というのが重要であるということを考えました。
また送達というのは、訴えた相手方に対して直接手渡すのが原則であることも考えました。
もし、今回の質問にあるように、相手である日本人が日本に戻ってしまう、イコールアメリカから出てしまうと、直接手渡す送達がかなり難しくなります。
そうすると、前回考えたように、別の送達方法を使うことになるのでしょうが、時間と手間がかかります。
裁判管轄-どこに裁判を提起するか
また、日本にいる相手方に送達が完了したとしても、次に外国にいる相手方は確実に裁判管轄を争ってきます。
私も裁判管轄について、実務で何度も争ってきましたが、なかなか大変なバトルになります。
裁判管轄の説明として、たとえばカリフォルニア州の裁判所に訴えを提起するとしましょう。
そうすると、通常は、相手方がカリフォルニア州内に住んでいるかビジネスをおこなっているから、裁判所は判断の対象とできるのです。
このように、裁判所は、一箇所にあるわけではなく、各州にたくさんあるわけです。
基本的な考え方は、原告、すなわち訴える側の人やビジネスがどこに存在しているのか、ではなく、被告の住所がある場所、また問題が発生した場所などが適切な裁判所となります。
今回の事例を考えると、被告となる日本人が日本に住んでいると、その日本人は、「カリフォルニア州は適切な裁判所ではない」と主張してきます。
たしかに、現在その日本人が日本にいれば、日本にある適切な裁判所で裁判をするほうが良いという考え方もあるわけです。
私自身も今までいくつも裁判提起してきましたが、裁判管轄はかなり複雑な問題です。裁判管轄の話はこの辺にしておきますが、法律的にもやっかいな問題ではあります。
現実的には極めて困難な裁判提起
つまりこのように、日本から来ている学生で、すでに日本に戻ってしまった人で、アメリカとのつながりがほぼない、という場合にはかなり訴訟を提起するのが難しくなると思います。
できないことはないかもしれませんが、コストや時間を費やしても、カリフォルニアにおいて裁判を提起するのは、かなり難しい可能性があるのです。
外国から来た学生が、なかなかクレジットカードを作ったり、車をリースしたりできないというのも、万が一、何かあったときに回収が難しくなるからなのですね。
警察調書-ポリスレポート-を作る
今回の質問のような場合には、連邦や州の消費者相談や警察などに行き、まずポリスレポート(警察官による調書)を作ってもらうことから始めたほうが良いかもしれません。
緊急性は低い事件ですが、相手方の住所などを調べてくれる可能性もあると思います。
すぐにお金が返ってくるとは考えづらいですが、公の機関を利用するのが民事訴訟よりも良いかもしれません。
起業するなら、まずすべきこと
民事訴訟を提起するのは、ここまで考えたように、外国にいる人やビジネスに対してはかなり難しい面があるのです。
簡単に起業はできますが、そもそも、お金を出し合うことも多く、金銭が絡むのであれば、ビジネスを一緒にする人のことを最初から知っておいた方が良いですし、お金の引き出し方についても、複数人がいなければ出金できないシステムを作っておくことが良いと思います。
次回、また皆さんからいただいている新しい質問を考えていきましょう。
朝晩は涼しく快適ですが、温度の差がまだカリフォルニアはありますので、夏風邪などひかないように、注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
あなたがずっと抱いている疑問を解消しませんか?
しかし、アメリカの法律事務所はハードルが高い!!確かに。
JINKEN.COMでは、アメリカの弁護士事務所への橋渡しのサービスを提供しています。
お客様の状況とニーズ、ご希望を聞き取り、必要な書類等をまとめる お手伝いです。
私たちは、ジャッジをいたしません。
皆さんの頭の中、お気持ちを、できるだけ正確に表現する業務を行います。
ご料金は事前に明確にご提示し、追加のご請求は一切ございません。
i@jinken.com または こちらから直接お問い合せください。
■関連記事
米_日本人学生とのトラブル(1)_1419
米_日本人学生とのトラブル(2)_1420
運営弁護士
アメリカ暮らしを現実に。
JINKEN.COMにアカウント登録して最新のアメリカ移民法にキャッチアップ
■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program
アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者として長期合法滞在する方々がいらっしゃいます。
応募サポート希望の方はこちらから
日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。
■グリーンカードDV当選後サポート
グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!
グリーンカード当選後サポートはこちらから
充実した当選後サポートで、安心してグリーンカード取得まで進めましょう。家族・仕事・結婚・離婚・海外在住・介護に闘病と場面は様々ですが、お客様のニーズに柔軟にお応えしています。