法律ノート 第1236回 弁護士 鈴木淳司
2020大統領選を前に-移民政策の行方
November 1st, 2020
大統領選直前の法律ノートです。
前回は、前代未聞の速さで大統領と共和党は、超保守派の最高裁判所判事を押し込むことを考えました。そして今週成功しました。これで、保守派が6対3で絶対的な多数になりました。現在、同性結婚など、逝去されたギンズバーグ判事が強く支えてきた最高裁判所の姿勢が崩れることが憂慮されています。サーグッド・マーシャルや、ギンズバーグなど、アメリカで同じ人間であることを重視し、人種や性別などを超えて人権を支えてきた判事がいなくなるのは本当に法曹として寂しいものです。
今回、大統領選前なので、もう一度だけ、現在の政府の政策と司法の関わりについて考えさせてください。最近、日本のインターネット上で目にする特に政治の記事は、「浅いなぁ」と思うことが多く、読まないようにしています。事件は現場で起こっています。
さて、現大統領は「移民制限政策」を就任前から目玉政策にしていましたね。そして、メキシコに金を払わせる、と言って国境に壁を建てるというのはダイナミックな政策で感心する人々もいたと思います。アメリカに入国しようとする難民を制限し、違法移民に対して厳しく強制送還を実行すると繰り返していましたが、合法なビザによる入国も制限をはじめました。
法律家の立場から言えば、移民の数のコントロールや合法的な移民の政策についての制限については、どの国もやっていることですし、政治的な要素であり、その方向性は国民が代表者を選んで舵取りをしていくものだと思っています。
また、たしかに現大統領は差別的な発言が他国民や移民について多く、看過できない考え方を持っているようにも思えます。最近でも、候補者との討論(ほぼ討論になっていませんでしたが)の際に、アメリカに難民として最後まで入ろうとしている人達は知能指数が低いと、平気で言っていました。自分は、スロベニアからどういった素性かわかりませんが、嫁をもらって、その嫁の両親まで永住権を得て、数日前にも弁護士を伴って、移民に関するなにかを裁判所でやっていました。どういう形にしても移民は移民だろうと思いますけどね。
まあ、一歩引いて、そのように移民に関して差別をする人達もどの国でもいるわけですし、自分のことはさておいて発言する政治家も多いので、流しましょう。
私が今回、現大統領のやっていることが許せないのは、この数日の移民に対する扱いです。
現地のニュースを良く見てください。いわゆる、大統領選の激戦区というのがあります。その州の浮動票を制するかどうかで、アメリカ全体の選挙の帰趨が決まります。この数日現大統領が何をしているかというと、移民を取り締まる国土安全省(DHS)とその下部機関を利用して、選挙直前のこの時期に、激戦区で不法移民を摘発し、そのうえその摘発内容を高速脇などのビルボードに載せています。それも、たとえば今激戦区と言われているフロリダ州やペンシルバニア州を集中して、やっているのです。このような時期に国土安全省が、それも省の幹部が乗り込んで、不法移民を摘発するなどというのは前代未聞であります。選挙活動のために、選挙権のない人達を摘発し、それを自分の公約の実現のために利用しているわけです。
現大統領からすると、法律に反していない、どちらかというと法律に従って必要なことを実行しているのだ、ということなのでしょうが、人間としてどうなのかと思います。日本のアメリカに関する政治記事には「宗教でどちらが」とか「実は今黙っている人達の思想はどうの」と言ったレッテルを貼る記事が多いですが、人間としてこのような摘発をして、それをビルボードに載せるなどというのは、そもそも移民で成り立つ国としては、あまりにも常識を逸脱していると感じています。法曹としても、納得がいきません。
さらに、国土安全省のトップの人は、なかなか端正な顔をしている人が今は就任していますが、とにかく移民政策を強化していって次の4年間は締め付けをしていくということを、わざわざこの時期に明言しています。
合法的な就労ビザを減らしていって、「移民政策」を続けることも言っています。言っている人達だってそもそも移民というのが究極の皮肉ではありますが。
これらの現政権とそれに追随する官僚(本当に公の利益を考えている人達かわかりませんが)の言っている移民政策というのは、アメリカ的な感覚から言うとかなり人権と国益の考え方が歪になってきているなぁ、と感じています。
さて、大統領が誰になるかを決めるのはアメリカ国籍を持っている人達です。もちろん、移民政策だけではなくいろいろな政策があるわけで、どのような選挙の帰趨になるのかは誰にもわかりません。
ただ、現大統領が政権を維持することができれば、アメリカの移民政策と、外国がアメリカを見る目はより厳しいものになっていくことは間違いないと思います。政策云々というよりは、現大統領の人間性の問題をアメリカ人がどう判断するかでしょうかね。
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