アメリカ市民に仕事を休んで投票に行く権利はある?_1089

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法律ノート 第1089回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 27, 2017

 皆さん、クリスマスはいかがお過ごしになりましたか。いろいろな宗教がありますが、クリスマスというのは世俗化しているので、街全体がほんわかムードになるものですね。東海岸は雪がすごかったようですが、今年ベイエリアは、例年に比べて暖かかったように思います。とにかく、今年の冬は雨が少ないですので、来年また干ばつの問題が発生しないと良いなと少々憂慮してしまいます。

アメリカ市民に仕事を休んで投票に行く権利はある?_1089

 さて、もう年末年始ですが、緩めずに皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「最近、外国人への締め付けが厳しくなっているという風潮もあり、思い切ってアメリカの市民権をとりました。市民権があると、各種の投票なども参加できることは理解しています。ただ、仕事を休んで投票をする権利、というものはあるのでしょうか。また投票に行くと、仕事に行けないので、その分給与は減るのか、有給なのでしょうか」という質問をいただきました。

アメリカ市民権を得ることのメリット

 アメリカ市民権を得るには、アメリカ国内で出生することが一つの道ですが、帰化することも一つの道であります。帰化するには、永住権をまず取得し、場合によって、3ないし5年間待つと、市民権(帰化)申請が可能になります。アメリカ市民権を取ると、永住権と比べるといくつかメリットがあります。一つは、自国がアメリカになるわけですから、強制送還をされない、ということがありますし、アメリカ国外であっても、子供が生まれると市民権者となります。ちなみに、アメリカ大統領だけは、帰化した市民権者はなることができません。アメリカで出生しないとならないのですね。

 市民権を得た場合、市民しか与えられない権利義務が生じる面もあります。今回の質問にある選挙権も一つですし、アメリカでは陪審裁判の陪審員になることも一つあげられます。選挙権というのは、かなり重要な権利であって、政治の行く末を決める一票を市民は握っているのです。

各州に選挙に関する法律がある

 この選挙権ですが、アメリカのすべての州で、投票に行くための休暇取得について、何らかの規定はされています。州によっては、投票に行くための時間について、無休のところもあれば有給の規定をしているところもあります。ですので、各州の選挙に関する法律は必ず確認する必要があります。

 また、就業規則にも通常記述がありますので、これもチェックしたいところであります。多くの州では、選挙について、2時間までは欠勤を許すという書き方のところが多いですが、4時間のところも存在します。

カリフォルニア州の例

 ここで、カリフォルニア州の例を見てみましょう。カリフォルニア州選挙法(Election Code)第14000条以下には、以下のように定められています。

 カリフォルニア州では(1)最大で二時間の休暇が権利として許されている。(2)この(1)でいう二時間は、就業時間の最初か終わりの部分で取る必要がある。(1)と(2)の範囲であれば、有給休暇として、賃金が支払われる。となっています。

 ただし、例外があって、就業時間外に投票にいくことが可能であれば、休暇取得は認められないことになっています。また、投票のための休暇取得は、少なくとも2勤務日前に雇用主に通知しなければならないということになっています。

選挙のための有給休暇取得は可能

 このようにある程度詳しい規定がなされているので、仕事を休まないと投票に行けないという場合には、権利行使のための担保が決められています。ですので、雇用主に通知をすることは前置ですが、ぜひ選挙に行かれてみてください。

 ただ、もちろんですが、選挙のための有給休暇取得は、選挙に行くことが前提ですので、かりに、選挙に行くと偽って、実際は別のことをすることは許されませんし、懲戒の対象になります。したがって、純粋に休むために、この有給休暇を取ることは許されていませんので、注意されてください。

 もう、次の法律ノートで2017年が終わりです。皆さんからいただいている質問でまだお答えしきれていないものもたくさんあります。申し訳ありませんが、来年まで持ち越しとなりそうです。ただ、忘れているわけではなく、私の原稿が追いついていないだけなので、少々お待ちいただければと思います。年末は色々忙しいですが、健康に留意してもう少し2017年、がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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