法律ノート 第1083回 弁護士 鈴木淳司
Nov. 12, 2017
飛行機の機内で、久しぶりに映画を見て泣いてしまいました。最近グラフィックはすごいが、内容が陳腐な映画が多いなぁ、と思っていたのですが、大当たりでした。観た映画はGifted(日本名ではギフテッド)と言って、数学の天才少女とそその家族を巡る切ない話でした。弁護士も出てくるのですが、弁護士の能力など結局家族の絆の足元に及びないものだ、と思い知らされました。まだ、日本では封切られていないようですが、役者も素晴らしく、ぜひ皆さんにも観ていただきたい作品です。みなさんは良い映画を観られていますか。
家でマリファナを吸うと児童虐待に?(2)_1083
さて、前回から考えてきた「来年(2018年)から、カリフォルニア州では合法的にマリファナが売買され使用も許されることになったと聞きます。先日、ある公益法人の主催するマリファナに関する講演を聞きにいったのですが、家に子供がいる場合には、場合によっては児童虐待のケースもあるということを聞きました。よく理解できなかったのですが、マリファナを吸っただけで児童虐待となることがあるのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。
犯罪の要件が広汎に考えられている Child Endangerment
前回は、カリフォルニア州法273条a項に規定されている、未成年者を危険に遭わせる罪(Child Endangerment)がどのようなものか考えました。まとめると、どのような危険か、ということは詳細に規定されているわけではなく、広汎に考えられていて、様々な類型が考えられます。
このように犯罪を構成する内容(要件)が広汎に規定されている場合、アメリカでは判例の役割が重要になります。判例をよく解析することが重要になるケースであります。
子供を車に残したまま、車を離れる
今回は、この未成年者を危険に遭わせる罪、というのは、どのようなケースが考えられるのか、いくつか主な類型を考えていきたいと思います。
まず、日本の方が結構トラブルに巻き込まれる例として、子供を車に残したまま、車を離れるということは、未成年者を危険に遭わせると考えられています。私が過去担当した案件でも、母親が子供をいちいちベビーシートに乗せ降ろしするのが億劫になり、子供を車内に残したまま、郵便物をポストに出しに行ったところを通報されて逮捕された例があります。
日本では子供を車内に残し親がパチンコに興ずるなどという事件がありますが、アメリカでは確実に有罪になりそうな事例です。子供を車内に単独で残すというのは、罪になり得るということは必ず覚えておいてください。
注意が必要なのは、「未成年者に対して危険を発生させる」行動は、自分の子供だけに限りません。第三者の子供であっても、カリフォルニア州法の処罰の対象になります。
子供を乗せた車の飲酒運転
次に考えられるのは、飲酒運転のケースです。飲酒運転で逮捕され、その逮捕時に子供が乗車していた場合には、通常の飲酒運転に加えて、未成年者を危険に遭わせたと判断され、今回考えているカリフォルニア州刑法によっても起訴に対象になります。
もちろん、事故を起こしていないとしても、飲酒許容基準値を上回っている場合には、本罪の対象になります。アメリカはこれからホリデーシーズンです。家族で行動する際には、気をつけて覚えておくべきポイントだと思います。
限度を超えた子供に対する体罰
第三点目ですが、子供に対する懲戒も限度を超えると、未成年者に対する危険を発生させた、と考えられる場合があります。子供が何か悪いことをしたとしても、いきなり体罰を与えると今回考えられている罪になる場合があります。
大事なパーティーに出席するために、ある時間に家を出る予定だったが、子供が友達と遊んでいて帰ってくるのが遅くなり、家の前で待っていた家族に頭をゴツンとやられた事例がありました。隣人が警察を呼び、父親が逮捕されたという事例を思い出します。
未成年のマリファナ使用は一切禁止
では、今回質問されているマリファナ関連はどうでしょうか。
まず、マリファナの使用がカリフォルニア州で合法化されたとしても、未成年者の使用は一切禁止されています。したがって、マリファナが合法だったとしても、未成年者とシェアするとこれは、今回考えている刑法に反することになりそうです。
このパターンは、未成年者に飲酒をさせることを許すケースと似ていることになります。それでは、未成年者のいる場所で使用することはどうでしょうか。ここから次回考えていきたいと思います。
私は、今日は結婚式に参列します。楽しく素晴らしいパーティーになると私も嬉しいな、と思っています。みなさんも、これからパーティーが多くなると思いますが、楽しく気分転換しながら年末に向けてがんばっていきましょうね。
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