法律ノート 第1178回 弁護士 鈴木淳司
September 17, 2019
愛知県弁護士会の国際委員会のメンバーから表敬訪問をうけました。メンバーのなかには、以前、私の所属する事務所でインターンした弁護士もいました。遠方から友来るで、楽しい時間を過ごすことができました。若い弁護士も多く、皆頑張っている様子でした。私の所属する事務所は千客万来で、いつも賑わっているように感じます。みなさんも友人知人との時間を大切にしていらっしゃいますか。
家賃の滞納、直ちに損害金を支払うべき?(1)_1178
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。
いただいている質問をある程度まとめると、以下のようになります。
「仕事のために、日本から来てカリフォルニア州に住んで1年が過ぎました。ネットの掲示板で見つけた個人の家の離れのようなところに住んでいます。駐車場もあり快適なのですが、大家さんから、家賃支払いが遅れたことから、25ドルを追加で払えと言われています。ちょうど、日本に出張に行っていたときに、支払いが遅れたのを咎められたのです。私も支払いが遅れた責任があるので支払い、事なきを得ましたが、アメリカ人の友人が、そのような支払いの遅滞について、損害金を払う必要はないのではないか、という話がでました。ネットで調べてもどのような権利があるのかわからないので教えて下さい」という質問です。
まずは契約書に立ち戻る
本来、今回質問されている方のようなケースでは、実際、弁護士は賃貸借契約書を見てみないとなんともいえません。
具体的な相談を受けるのであれば、まずは契約書を確認する必要があります。ですので、もし今回質問されている方が具体的に弁護士に質問をされたいと考えるのであれば、必ず、賃貸借契約書や、支払いの履歴、大家からの通知など、賃貸借関係で発生している書類は面談のときにお持ちになると手っ取り早いと思います。医師にとってのレントゲンやMRI画像と役割が似ていると思います。
「25ドル」-チェックの不渡り
今回の質問に関しては具体的に契約書を見ているわけではないので、あくまでも一般論を使って考えてみましょう。
まず、今回の質問にある「25ドル上乗せ」についてですが、賃貸借に絡む法律で思い当たるところがあります。カリフォルニアの法律では、賃借人がチェックで賃料を払うのが一般的ですが、このチェックが不渡り(バウンスバック)になったときには、25ドルのフィーを上乗せ請求できるということになっています。2回目以降は35ドルまで上乗せすることが法律上、可能です。
この法律はあくまでも、支払いに使ったチェックが不渡りになったという前提ですから、単に家賃の支払いが遅れたから自動的に25ドルを支払うということにはなりません。
もしかしたら、このバウンス・チェックの法律(さらに契約書の条項)を間違って家賃の遅滞だと大家さんが考えているのかもしれません。契約書を読むと、チェックの不渡りについては記載があるはずですので、その条文を確認されると良いと思います。かりに、チェックが不渡りになっていないのにも関わらず、25ドルが上乗せされているのであれば、それは戻してもらえることになります。
賃貸借は信頼関係が大切
ただ、賃貸借関係は継続関係ですので、できるだけ穏便に話をするのが良いと思います。そこまで大きな金額ではありませんからね。
このチェックの不渡りに関する手数料の上乗せは、実際にチェックが不渡りになると銀行はいくらかお金を取るので、大家さんにも実害が生じてしまいます。ですので、ある意味、正当な上乗せではあります。
家賃滞納で直ちに損害請求できるか
このチェックの不渡りがない場合でも、家賃の支払が遅れれば、損害金というのは、大家さんが請求できるのでしょうか。
カリフォルニア州では、請求は禁止されていないのは建前ですが、かなり内容が限られているのが実情であります。
まず、家賃の支払が遅滞することに関して、損害賠償をするには、必ず契約書にその旨書かれていなければなりません。かりに、なんらかの規定がない場合には、大家さんが請求することは原則できないからです。
ですので、今回質問されている方もまずは契約書に履行遅滞についての損害額の予定などがされていないか確認されてみてください。
次回詳しく考えますが、大家さんが家賃支払いの遅れによって生じた損害金を取るのは、かなりハードルが高いということを覚えておいてください。
すこしベイエリアも涼しくなってきました。秋が近づいていますね。フットボールシーズンも本格化してきました。朝晩寒いときもありますので、体調に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。
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