法律ノート 第1137回 弁護士 鈴木淳司
Nov 26, 2018
北カリフォルニアの大火事は、嵐の訪れによって一時的な落ち着きがもたらされましたが、今度は土砂崩れの被害が憂慮される事態になりました。災害は続いています。今年の冬は雨や雪が多いのでは、と期待を込めて人は語りますが、来年の夏の干ばつや火事はどうなるのか、すでに今から心配してしまいます。
過去の薬物使用歴とアメリカ入国(1)_1137
さて、今回から新しくいただいている質問について皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、「日本に在住する者です。学生時代にアメリカ(カリフォルニア州)に住んでいました。マリファナに関係するトラブルで警察沙汰となり、大学からビザはもう出せないと言われ、退学をして日本に戻ってきました。最近、カリフォルニア州ではマリファナが合法化された(される)というニュースを見たのですが、過去のマリファナに関する罪をなんとかして、もう一度アメリカで勉強したいという思いが強くなりました。なんとか、アメリカの学生ビザが再度発給されないでしょうか。」というものです。
今回の質問に関しては、色々詳細を聞いてみたいところがあるのですが、読者の方々と情報を共有するためにも、いくつかのシナリオを想定しながら考えていきましょう。
カリフォルニア州、マリファナ合法化の経緯
以前取り上げましたが、最初にカリフォルニア州でマリファナが合法化になったことについて、全体的な法律改正を見ていきましょう。
まず簡単な経緯ですが、2016年の11月の選挙の際に並行して投票される住民投票第64号(Prop 64)が賛成多数で承認されマリファナの合法化が決まりました。その前にも、1996年に医療用のマリファナは合法化されていたのですが、一般的な使用についても、2016年に合法化されたのです。
そして、マリファナ合法化の法律施行は、2018年1月1日となりました。Prop64を受けて、マリファナに関する州の法律、主に健康安全法(Health and Safety Code)が改正されたのです。マリファナ合法化といってももちろんフリースタイルに変更されたわけではなく、基本的に21歳以上でなければ使用できませんし、使用の場所も公では禁止されています。
頒布販売についても、制限されていますし、栽培についても緩和されましたが、まだ制限されています。
過去の有罪事件と事後救済
今回のマリファナに関する法改正に伴って、以前にマリファナに関する罪で有罪になった事件についても、事後的に救済されるようになりました。以前は、マリファナの所持、使用でも罪に問われ、有罪となったケースも多くあります。
これらの前科について法改正で事後的に合法になったわけですので、罪の再考慮がなされることになったのです。方法論としては、まだ公判が維持されているのであれば、起訴の再考慮を求め、有罪となってまだ裁判所の保護管轄下であれば、裁判所に罪の再考慮を求めることになります。
そして、すでに罪が確定し、罪に伴う条件をすべてクリアーしているような場合には、前科の再考慮、抹消を求めることが可能になりました。
基本的に、新たな法改正で罪とならなくなった、また罪が軽減される場合、裁判所に書面を付して申立を行います。検察官に異議がなければ申立は認められます。異議がある場合には、検察官はそれなりの異議を行うための証拠をもって、審理が行われることになります。
しかし、事実関係で争っても、法律そのものが改正されたのですから、検察側としてもなかなか争うことが大変になりそうです。ですので、マリファナに関する罪については、実際あまり検察官が争うということはありません。
前科の抹消が認められる可能性
今回質問されている方の事例の詳細がよくわかっていませんので、なんとも具体的なことは考えられないのですが、「警察沙汰」になったことが実際に有罪になったということであれば、その前科について、再考慮または抹消を州の裁判所に求めることは可能になります。本人の出廷がなくても、認められる可能性が高いので、チャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか。
カリフォルニア州法と連邦法は別
ただ、理解していただきたいのは、マリファナに関する罪については、カリフォルニア州内の動きであります。今回質問されている方も州の裁判所において、刑を言い渡され、あくまでもカリフォルニア州内で、刑が再考されることになります。そうすると、連邦の管轄である移民法に関しては、また違った考えが必要になります。ここから次回考えていきたいと思います。
もう冬なはずなのですが、まだ暖かい日もあります。雨よ降れ、と願いながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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