米国で非営利団体を設立したい(4)_1136

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1136回 弁護士 鈴木淳司
Nov. 20, 2018

 北カリフォルニアの山火事による煙がベイエリアを覆っています。一時、「重度の健康への悪影響」という状況に至りました。私の所属する事務所も健康被害を考えて一日閉鎖をしました。街を歩く人達もマスクをしているような状況です。

 ただ、煙で被害がでていることは確かなのですが、私達が本当に考えなければいけないのは、人命や財産が瞬く間に失われた方々が実際にいるわけで、その方たちには計り知れない損害が生じているという事実です。本当に心が痛みます。カリフォルニアの試練の年です。しかし、雨がなかなか降りません。

米国で非営利団体を設立したい(4)_1136

 さて、前回まで考えてきた、「現在アメリカの大学でソーシャルスタディーズを勉強しています。卒業したら、賛同してくれる友人とともに、海外に住む日本人や、日本に行きたいという外国人を支援する非営利の団体をつくりたいと思っています。まだ、アイディアは漠然としているのですが、寄付を募ってこのような団体を設立し、将来米国を中心にして活動をしたいと思っているのですが、可能なのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。

 今回は移民法の観点から考えます。

重要なのは資本金

 今回の質問にあるような新規の事業をたちあげ、その団体を就労ビザのスポンサーとする場合、そのスポンサー企業の「器」にスポットライトが当たります。

 移民局は、スポンサー団体がどの程度の規模なのか、外国人を雇用して給与が支払えるほど安定しているのかを見ます。この傾向は最近かなり厳しくなっているところです。まず、資本金はどのビザにも大事なポイントであります。資本金がある程度の規模準備されているところでは、当初の給与も十分に支払いが可能であると判断されます。

 ですので、どのようなビザでも新規事業については、資本金が重要になってきます。

給与支払い能力を事業のキャッシュフローなどで示す

 今回質問にある非営利団体は当初団体が使えるお金が、ほぼない場合もあると思います。この場合、運営事業のキャッシュフローなどで給与などを支払える能力を示すしかありません。

 運営事業がどの程度の規模なのかは、寄付金がどのようにはいってくるのか、そして、どのような運営体制なのか、細かく問われることになります。

 そうすると、新規設立だと、当初からキャッシュフローを簡単に示すことはできないということになります。この点どのように解決していくのかという問題が生じますね。こういう場合、まず団体を立ち上げ、その団体をすでに合法的に運営できるご友人の力を借りるのはどうでしょうか。団体として、キャッシュフローができて、団体に給与支払能力がでてくれば、ビザの取得可能性は高まります。

 かりに、寄付をしてくれる個人や団体が、外国人のビザサポートをする程度まで、この団体が獲得できない場合、スポンサー団体としては不十分だということになります。近時、移民局は、団体や企業のビザスポンサーとしての適格をかなり細かく問うようになってきています。

実態がアメリカにない企業を移民局は厳しく判断

 次に新規のスポンサー団体となる場合、どのような設備投資をしているのか、最近は詳細に移民局が検討していることがうかがえます。団体であれば、オフィスもあって、それなりのインフラがなければたち行きません。

 ところが、最近はウェブベースのビジネスが台頭していて、実際のインフラはすべて日本にあり、アメリカでは何も実質的なビジネスはない、という企業も増えています。現状移民局はこういった物理的な実態がアメリカにない企業に対するビザ申請をかなり厳しく判断しています。

 どれだけ大きなIT企業でも設備投資をアメリカに行わない企業、すなわちアメリカに利益をもたらさない企業には、ビザの発給を渋る傾向にあります。

 したがって、スポンサー企業としてはどれだけ、アメリカに根ざしているのか、具体的な内容を示して主張していかなければなりません。

協力してくれる団体との関係を強化する

 それから、重要になるのは親団体および関連団体です。かりにかなりしっかりした運営基盤としてスポンサー団体が移民局に理解されればビザは通りやすくなります。バックボーンとしての親団体や関連団体はかなり重要になってきます。今回質問にあるような非営利団体だと、営利団体のように、資本関係を企業間で明確に示すことは難しいかもしれません。一方で、協力してくれる団体は、類似した方向性を持ったところはあるかもしれません。そういった団体と関係を強化して、色々な契約を結ぶといったこともビザの許可に繋がるかもしれません。

 ビジネスのアイディアは重要ですが、以上の点についてどれだけ、提出資料を整えられるかは、ビザ発行の帰趨に影響すると思います。これらの点に気を払いながら団体を立ち上げていく必要があると思います。

 もうサンクスギビングの週になりました。カリフォルニアは大変なことになっていますが、全ての方々がどこかで幸せを感じられる週になりますよう心から願っています。

 次回新しくいただいている質問を考えていきましょう。また一週間がんばっていきましょうね。


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