法律ノート 第1066回 弁護士 鈴木淳司
July 20, 2017
今週末、飛行機のなかで、たぶん「エアーマーシャル(航空保安官)」と呼ばれる人を現認しました。同時多発テロ事件以降、アメリカに所属する飛行機には、マーシャルが隠密に乗っていると聞いていました。飛行機が着陸し、降機する前に荷物を取り出しますよね。通路を挟んで反対側に座っていた人が荷物を取り出すために背伸びしたとき、腰のシグ・ザウエルの自動拳銃が見えました。ごく普通の服装をしていた彼は、考えると機内で酒を飲んでいませんでしたね。こういう人がいるので、飛行機テロの牽制になるのでしょうね。でも、隣に座っているのは何かあったときにちょっとコワイなと思ってしまいました。
米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?(1)_1066
さて今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問は「私(男性)は米国永住権を持っている日本人ですが、日本から留学してきている彼女ができました。そこで、結婚をすることによって、彼女にも永住権を取ってあげられたらよいな、と思っています。永住権の申請はどの程度時間がかかり、どのような手続きをすれば良いのか教えてください」というものです。
配偶者永住権の申請
移民関連の法律や行政規則については、随時、別途「現役移民弁護士ブログ(じんけんニュース)」というところで取り上げていますので、そちらに質問をしていただくほうが良いのですが、今回の質問に関して、最近移民局が目を付けて聞いてきているポイントがあるので、そのポイントを中心にしながら皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
今回、永住権保持者の配偶者永住権申請というパターンについて生じる問題について考えていきたいと思います。
永住権は永住の「許可」。権利ではない
今回質問されている方は永住権をお持ちです。一般的に永住権というのは、米国に永住をすることができる許可をもらっている外国人に給付されるもので、正確には権利ではなく、永住の「許可」であります。
ですので、運転免許証(ライセンス)と同じように、国(や州)から、永住するとか、運転するとかの、一定の行為を「許可」されているだけなのです。
だれが永住「権」という言葉を使いだしたかわかりませんが、ニュアンス的には「権利」ではなく、永住する「許可」が与えられているだけ、ということになるのです。なぜこのようなお話をするかというと、人によっては「永住する権利を持っているのだから」なぜ、配偶者もすぐに永住できないのだ、と安易に考える方もいるからです。
市民権との違い
アメリカ市民権は、国民としての「権利」ということになり、永住許可とはかなり色合いが違います。市民権は、国民の「権利」ということで間違いありません。
誰にも奪われない権利ですし、政府でも「許可」ではないので、取消しや制限をすることが基本的にはできません。
市民権と永住許可というのは、たしかに、「米国に住むことができる」という面ではかなり性質は似ていますが、実際の法律的な権利についてはかなり違う面があります。永住権保持者というのは、結局、外国のパスポートを持っているのです。
申請処理は市民権保持者を優先
市民権と永住許可というのは、法律的には違う性質があり、市民権保持者をまず優先するというのは、国として当たり前なわけです。そうすると、移民法でも米国市民権を持っている人の申請を優先することになります。
米国の移民局は「優先順位」を行政規則で決めていて、第一順位は、米国市民の配偶者、第二順位は、米国市民の近親者、そのあとに、はじめて永住権の配偶者申請ができることになっています。
優先順位というのは、順位が高ければ優先的に処理されるということです。現在で第三順位は、申請の処理がはじまるまで、約2年待つことになっています。
この「待つ期間」について少し考えておきたいことがあります。
ここから次回続けて考えていきたいと思います。
夏休みを取られている方もいらっしゃると思いますが、今年はかなり熱中症にやられているという人の話を聞きます。陽に当たるのは気持ち良いですが、疲れますし、さらに病気になっては困りますので、水分を取り注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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