米国での起業とビザ。友人を助けたいがリスクは?[1]





法律ノート 第1042回 弁護士 鈴木淳司
January 23, 2017
新大統領が就任しました。スピーチの部分だけあとで聞きましたが、かなり「アメリカファースト」を強調していましたね。ただ、アメリカファーストと言っても、どの国でも自国の利益を一番に考えるものだという枕詞がついていたので、協調主義を否定するものではないように思えました。批判もありますが、かなりの政策転換が見込まれますので、法律的にもかなりドラスティックに変化のある4年間になるのではないでしょうか。
私が気になるのは現在空きのある連邦判事の任命ですが、これは「これからの」話になりそうです。
米国での起業とビザ。友人を助けたいがリスクは?[1]
さて、今回からまた新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「日本にいる友人が米国で起業をして、ビザをとりたいという相談を受けています。
まずは、アメリカに在住している私が会社を起こして、日本からの投資を受け、友人にビザを出せないかと考えています。このようなケースにおいて、質問はたくさんあるのですが、まず友人を助けるという観点から会社の社長などになったときに、何か私個人の責任が発生しないかと心配になってきています。
あとで友人と揉めるのも本意ではないので、リスクのあることはしたくないというのが本音です。」というものです。
この質問メールには具体的な質問が多岐にわたってかかれていて、すべてにお答えするのは、難しいので私なりにまとめて、以下考えていきたいと思います。
会社役員への就任と責任
まず、今回はビザの話ではなく、会社の役員に就任したときに、民事的な責任が生じないか、という部分に限定して考えたいと思います。ビザに関してはかなり具体的に考える必要がありますし、法律ノートで考えるとしても別立てで考えた方が良いのではないかと考えています。今回いただいている質問を利用して、会社に関する法律を少し整理していきたいと思います。
今回の質問のようにアメリカに在住する方が、日本からアメリカで起業するきっかけを作る手助けをするという例はかなり多くありますし、商売にしている方もいると思います。今回の方は、利益を目当てにしているわけではなく、古くからの御友人をアシストしたいということみたいですね。報酬を受けるかどうかということには言及されていませんが、ただより怖いものはないわけで、よく今回の法律ノートを読んで考えてみてください。
会社設立とビザ取得は別問題
さて、今回の質問における設定としては、米国に会社を設立し、その会社の商行為によって利益を生じさせビザに繋げていきたいと考えられています。よく、アメリカに会社を設立すれば、なんらかのビザが取得できると思われている方がいますが、そこまで簡単なわけがありません。かりに、そのように会社を設立すれば、ビザがもらえるとすれば、多くの外国人がすでにやっていますよね。
ですので、今回質問されている方も、御友人の会社立ち上げに関与され、御友人のビザを取る手助けをするというのであれば、将来的にビザが取れなかったことも考えて行動しなければならないと思います。
起業に関わるのであれば文書化を
もちろん希望を持って起業されるので水をかけるのは嫌なのですが、プロというのは「最悪の事態を想定しておく」ということが必須です。ですので、何か起業にかかわるのであれば、必ず最初から役割を明確にしておくことは重要だと思います。もちろん形式張った契約書にするのは、躊躇するかもしれませんし、ぎこちないかもしれません。少なくとも電子メールで簡単な箇条書きでも良いのではっきりさせておいたほうが良いと思いますよ。その内容を以下を考えてつくってみてください。
まずは会社組織のプレーヤーの確認
さて、会社の設立には、発起人、株式の発行などが必要なのですが、重要なのはプレーヤーを決めることです。株主を設定するのは重要なのですが、それと同様に、カリフォルニア州であれば、取締役(Directors)会社の執行役(Officers)を設定しなければなりません。
一般的なアメリカの会社では、株主総会が取締役会を監視し、取締役会が執行役の業務を監視し、執行役が自己の業務を行って会社を動かしていくというイメージがあります。取締役と執行役の兼任もできますし、一人で執行も監督もできるいわゆる一人会社も可能です。とにかく、御友人を助けるためにどの役割を担うのか考えておかなければなりません。
次回、取締役と執行役の役割について具体的に考えるところから続けていきたいと思います。
ベイエリアは雨が降りまくっていて、太陽をなかなか拝めません。皆さんのお住いの地域はいかがでしょうか。風邪などが流行っていますので、体調に気をつけてまた一週間がんばっていきましょうね。



作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。