米_移民関係の最新動向

Washington DC Capitol of the United States

じんけんニュース 08-03-2025 弁護士 鈴木淳司

2025年7月もまた、移民関係で様々な連邦行政による規制が打ち出されました。
かなり多く取り上げることができるトピックがありますが、主なものを今回考えていきたいと思います。
とにかく、移民関係については、あらゆる角度から厳格化しているということは間違いありません。
どうか、アメリカに滞在されている日本人の方々は、不法滞在にならないように気をつけてください。

1:NTAについて

米国国土安全保障省(DHS)は、外国人が米国から強制送還されるべき、または入国を許可されるべきではないと判断した場合、「出廷通知書」(NTA、フォームI-862とも呼ばれる)という形式でその外国人および各所行政機関・移民行政審判所に通知します。
このNTAが最近活発に使われています。
NTAが出されると、移民行政審判所がその事件の権限を持ち、国外退去の手続が開始されます。
最終的に、移民行政判事がその人物が国外退去すべきか、留まることができるかを決定します。
このNTAを発行できる機関は、国土安全保障省(DHS)のなかにある米国市民権・移民業務局(USCIS)、米国移民税関執行局(ICE)および税関・国境警備局(CBP)の3つの機関です。

ある程度迅速に通知をするために使われているNTAですが、必ずしもすべて正しい情報が記載されていない場合もあります。
もし、皆さんがこのNTAを受け取った場合には、記載されている情報を細かく確認しなければなりません。
とくに通知に関する違反事実(Allegations)については注意が必要です。
ここには、政府が被通知者を移民法上不適格または強制送還可能にすると主張する事実です。
この通知された主張事実が正確であるのかを確認することがとても重要です。
またNTAには、強制送還の根拠(Charge of removability)すなわち、移民法違反の基礎となる法令の根拠が書かれています。
この法令の根拠はどのような対応をするのかという観点からはとても重要になります。
そして、この通知に基づいて移民行政審判所への出廷の日時が書かれています。
NTAを受け取った場合には、指定された移民行政審判所に出廷して、対応をする義務が生じます。
NTAを受け取った場合には、必ず移民・刑事法に造形の深い弁護士に相談されることをお勧めします。

2:I-9について

連邦政府は、米国内の雇用者に対し、従業員に関する労働許可の情報を収集するように義務付けています。
雇用主は各従業員のI-9フォーム(雇用資格証明書)の収集・備え置きをしなければなりません。
最近になり、現政権は、キューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラ出身者の仮放免プログラム(CHNV)および、一時的人身保護プログラム(TPS)のなどの移民法上の恩恵を終了させる動きを加速させており、対象者の雇用許可証(EAD)が取り消されています。
そして、その取消に基づくI-9の遵守を厳しく雇用者に対して要求しています。

DHSは、E-Verifyを利用する雇用主向けに「ステータス変更レポート」という新たな通知システムを導入しました。
これにより、E-Verifyを利用する雇用主は、従業員のEADが取り消された可能性があることを知ることができます。
しかし、政府は通常、このような取り消しを雇用主に直接通知しないため、多くの雇用主は、無効な書類を持つ従業員を雇用し続けている可能性があり、潜在的な違反のリスクにさらされています。
雇用主が外国人の就労資格の終了に関して「認識」している場合、行動を起こす義務が生じます。
この「認識」には、「実際の認識」と「推定認識」の2種類があります。
実際の認識(Actual knowledge)とは、雇用主が、従業員の就労資格が終了し、継続雇用の他の根拠がないことを主観的に認識している場合を指します。
例えば、従業員自身が就労資格の終了を告げたにもかかわらず、雇用主がその従業員を雇用し続けた場合、これは実際の認識に当たります。
次に、推定認識(Constructive knowledge)という考え方があります。
雇用主が実際に認識していなくても、客観的な基準に基づけば、その立場の合理的な人物であれば知っていたであろう事実がある場合に認められます。
例えば、社会保障カードに「INSの許可なしには就労不可」と明記されているにもかかわらず、雇用主がこれを受け入れた場合、I-9フォームに有効期限のある書類が含まれており、雇用主が従業員のステータスを再確認しなかった場合などが推定認識と見なされます。
これらの「認識」があったとされると移民法違反となる可能性があります。
なかなか制度が複雑になってきましたので、これらの「認識」があったのに雇用を続けているという政府側の主張を封じるためにも、雇用主は、I-9のステータスチェックをするための制度を構築することが重要になってきます。
とにかく、就労許可の有効期限が切れる日までに、従業員の就労許可を再確認しなければならない、と規定されていますので、定期的なステータスチェックは明確に企業の義務になっていると捉えた方が良いです。
雇用主は、業務とリソースに基づいて何が合理的かつ実行可能かを考慮し、ステータス確認の制度を全従業員内で一貫させ、プロセスを文書化すべきです。

3:面接免除の縮小ポリシー

2025年7月25日、米国国務省(DOS)は、2025年9月2日より面接免除ポリシーを大幅に縮小すると発表しました。
この改訂されたガイダンスにより、ビザ申請者の大多数に対する面接免除の資格が大幅に狭められます。
この発表により
(1)ほとんどのビザカテゴリー(E-1、E-2、F-1、H-1B、J-1、L-1、O-1、および以下に記載されていないその他のすべてを含む)で、対面面接が義務付けられます。そして、
(2)再申請者や更新者であっても、面接免除は利用できなくなります。また、
(3)14歳未満または79歳を超える申請者も、対面面接が義務付けられます。
これらにより多くの大使館・領事館、特に申請件数が多い米国在外公館では、ビザの予約待ち期間が長くなり、処理の遅延が予想されます。

4:永住権者のアメリカ再入国についての注意点

米国に入国する際、永住権保持者(LPR、グリーンカード保持者とも呼ばれる)は、すべて国際旅行者と同様に、米国税関・国境警備局(CBP)による審査の対象となりました。
LPRは、海外渡航後に米国に戻る際、非移民よりも強い権利を享受しますが、今年に入り、LPRを含むすべての非市民は、移民法、刑事法、政治活動に関して、国境で厳格な審査に直面しています。

まず、CBPは、LPRの入国の際に「帰国居住者」と「入国外国人」のいずれかに分類します。
帰国居住者と判断された場合、迅速に手続きが進められ、米国への入国が許可されます。
一方で、CBPはLPRを入国外国人と見なす場合があります。
(1)LPRステータスを放棄した、または放棄すると見なされる場合
(2)米国を180日以上継続して離れていた場合
(3)米国出国後に違法行為に関与した場合
(4)強制送還または引渡手続き中に米国を出国した場合
(5)特定の犯罪行為を犯した場合(移民免除が認められている場合を除く)
(6)不法入国を試みている場合には、「入国外国人」とみなすことに決められています。

CBPの判断で「入国外国人」とされた場合、LPRは「二次検査」のために別のエリアに連れて行かれることがあります。
二次検査に送られること自体が必ずしも問題があることを意味するわけではありませんが、数分から数時間、あるいはそれ以上拘束される可能性があります。
二次検査では、CBPはさらに「入国外国人」を検査します。
主に、
(1)質問をしたり、照会を行ったり、生体情報(指紋や写真など)を収集したりします。そして、
(2)電話、ラップトップ、その他の電子機器が検索され、一時的に保管される場合があります。
   これには、ソーシャルメディア活動の調査も含まれます。
(3)デバイスがCBPに押収された場合、領収書を要求することができます。
(4)CBPが入国許可に懸念を抱いている場合、拘束される可能性があります。
このように、永住権保持者であっても、近時米国入国が厳格化されていることは気に留めて入国についての準備はしておいてください。

今回はこの程度にしたいと思いますが、かなり多岐にわたる移民に対する影響が出始めています。
また次回もアップデートがあれば共有させていただきたいと思います。


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