法律ノート 第1414回 弁護士 鈴木淳司
Apr 20, 2024
先週は、中東の戦争に関するデモがベイエリアで行われ、私が通勤しようとすると橋が封鎖されていました。
なんでも、重いものや、車に、戦争反対のデモをしている人たちが自分たちをくくりつけて完全に道を封鎖してしまったようです。
まったく車が動かずに駐車場のようになってしまいました。
私もオフィスに行くのに遠回りをしてやっとたどり着きましたが、一時間以上の時間とガソリンを浪費しました。
デモの趣旨はわかりますし、表現の自由ではありますが、他の人の権利とぶつかるときには、気をつけなければなりません。
デモをやった人たちに対して、かなり怒っている人たちもいるようで(病院にいく必要がある人もいた)、デモを行っただけでは済まないような状況になってきています。
刑事事件化するかもしれません。
少なくとも迷惑を被った人たちは、どのようなベクトルかはわかりませんが、この中東問題については忘れなくなったように思います。
そういう意味では、デモの人たちはある意味成功した結果を残したのかもしれません。
アメリカで雇用する際の注意点(2)_1414
さて、先週に引き続いて「Webなどのデジタル系デザイナーをしています。受注が増えてきたことから、今まで外部のデザイナーに外注していたのですが、一人新たに専属で採用をしようと思います。新規採用をするとなると、外注に比べて色々な面で注意が必要と友人やネットの情報で目にします。どのようなことを注意しなければならないでしょうか」という質問を考えていきましょう。
請負と雇用の現状ーカリフォルニア
今回の質問は、請負を雇用に変えて行く方向の話なので、関係が薄いかもしれませんが、請負と雇用のカリフォルニアにおける現状を考えていきたいと思います。
そもそも、請負は、税金の支払も仕事をする人に転嫁されますし、保険、有給休暇の付与など様々なベネフィットは与えられません。
独立して請負をするということは、様々な責任も自分で負うことになるわけです。
最近では、ウーバーなどの運転手について問題も発生していました。
すなわち、ウーバーなどの配送手配会社は、運転手を「雇用」していないというスタンスで、車の維持、車の保険などはすべて運転手が負担する仕組みです。
現状で、ウーバーの運転手と話すと、元タクシー会社の運転手などは、タクシーの方が「守られていたように感じる」とはっきり言っています。
請負契約は、このような課題があり、どちらかと言えば強者が弱者に責任を押し付ける場合に問題化します。
したがって、今回の質問者の方向性は、単発で仕事を発注する請負の関係ではなく、継続的な就労関係を生み、被用者を守る意味でも時流には沿っていると言えます。
雇用者が満たすべき基準、ABCテスト
2018年頃にカリフォルニア州では、新しくABCテストと一般的に呼ばれる基準を最高裁判所が提示し、2019年には、法制化されたものがあります。
このABCテストと呼ばれる基準では、以下の3つの条件を雇用者が満たさない限り、被用者は、請負ではなく、従業員としてみなされることとしました。
(1)働く者は、仕事の遂行に関する契約において、また実際の仕事の遂行においても、雇用者の管理や指示から離れて自由裁量権があること
(2)働く者が雇用者の通常の業務とはいえない業務を行っていること
(3)働く者は、自分の継続している職業、ビジネスの一貫として、契約上規定されている作業に関与するものと同様のビジネスを行っていること
とされています。
したがって、これらの3つの条件に当てはまらない場合には、「雇用」とみなされることになったのです。
したがって、雇用に関連する法律を潜脱して、「請負」とすることはかなり難しくなっているわけです。
トレンドは被用者の保護=雇用
現在のトレンドが、請負ではなく雇用を推奨して、できるだけ労働関係を雇用に引き付けるのは、被用者の保護の観点です。
雇用関係を成立させると、今度は税金の観点、法律の観点からもちゃんとコンプライアンスの体制を構築することが必要になってきますし、煩雑です。
税金に関しては、雇用がある場合には、源泉徴収をする必要がでてきます。
複雑な計算式が必要になるので、ちゃんとその対応をする専門会社などに任せなくてはなりません。
また有給休暇を与えたり、無休でも法律で定められている休暇を許すなどのポリシーも作らなくてはなりません。
会社によっては401Kなどのベネフィットも構築し、被用者に提供することもあります。
このような一連の税金やベネフィットなどをつくっていくことが求められます。
ここから次回続けていきたいと思います。
天気が良い日が続きますね。
花粉で困っている人も多いですが、外を楽しみながらまた一週間、がんばっていきましょうね。
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