アメリカで雇用する際の注意点(3)_1415

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1415回 弁護士 鈴木淳司
Apr 29, 2024

 週末に、運転をしていたら「パレスティナを救え」という路上での平和なデモが行われていました。
先週アメリカはウクライナへの追加支援を決めたところでもあります。
最近の戦争は政治的なエゴの部分も多そうで、無関係な子供まで殺されるというのは心が痛いです。
デモを見ていて、気持ちはわかるのですが、実際問題として、どのようにすればこのような無益な殺生をなくせるのか、せっかくインターネットのように情報や意見が交われる場があるのですから、活用するなりして検討してほしいものです。
ITの時代になって、武器は発達したようですが、人間の平和に対する知性は、ずっと発達していないように思えています。

アメリカで雇用する際の注意点(3)_1415

 さて、前二回考えてきた、「Webなどのデジタル系デザイナーをしています。受注が増えてきたことから、今まで外部のデザイナーに外注していたのですが、一人新たに専属で採用をしようと思います。新規採用をするとなると、外注に比べて色々な面で注意が必要と友人やネットの情報で目にします。どのようなことを注意しなければならないでしょうか」という質問を考えていきましょう。

法律は、労働者保護へ

 前回は、カリフォルニア州そしてアメリカ全体の傾向として、労働者を守るために、請負関係よりも、より保護の手厚い「雇用」関係であるとみなす方に法律が働いてきている点を理解いただけたと思います。

雇用者が主に注意すべきこと

今回は、少し違う角度から、雇用者が人を雇用した場合、どのような点に注意していくべきか考えたいと思います。

ただし、法律ノートでは、すべての論点を網羅できるわけではありません。以下考えるまとめについては、必要な全てのポイントを取り上げるわけではなく、主なものについて取り上げる方針です。ご容赦ください。

州法では、口頭の雇用契約でも可

 まず、雇用をする場合には雇用契約が必要かどうか、問題になります。

雇用契約はカリフォルニア州法では、口頭契約でも良いですし、書面の契約でも良いことになっています。
勤務時間、仕事内容、報酬などを決めるのですが、仰々しい契約書をつくることもあれば、雇用主から、被用者に対して手紙形式で渡すこともあります。
書面にしておくメリットとしては、後に雇用契約の内容に紛争が生じたときに、明確にできることです。

一方で、かりに書面による契約書がなくても、雇用主に就業規則があれば、その就業規則がメルクマールになります。

連邦法では、5人以上で就業規則が必要

 カリフォルニア州では就業規則を作らなければならないという法律はありませんが、連邦の法律(FEHA)で、少なくとも従業員が5人以上いる雇用者に対しては、就業規則の備え付けが要求されます。

今回質問されている方は、初めて一人雇われるということですから、すぐに就業規則をつくらなくても問題はありません。

しかし、たとえば雇用契約が口頭である場合、なんらかの就業場所のルールを明確にするために就業規則を作成して、手渡し、内容を確認し受領したという一筆をもらっておくと、少なくとも雇用に関するルールは周知していることになるので一定程度で雇用契約の代替えになります。

就業規則は作成しておく方が良い

 就業規則には、いくつか連邦の法律に基づき盛り込むべき内容が決められています
また、州法に基づいて盛り込むべき内容もあります。
この就業規則は作成しておけば、様々な雇用者の義務、被用者の権利を明確にできるというメリットもあるので、作成しておくほうが望ましいと思います。

就業規則に書くべきこと

 必ず、就業規則で書いておかなければならない情報をここで考えます。

まず、差別的な扱いの禁止です。
雇用関係や職場において、年齢、性別、人種等に基づく差別は許されないということを書かなければなりません。

またセクハラ行為の禁止も規定されていなければなりません。
この差別やセクシャルハラスメントについては、次回以降踏み込んで考えるかもしれません。

さらに連邦の法律により守られる被用者の権利として、一定の休暇の付与が明確に規定されていなければなりません。
たとえば、病欠(家族のケアを含む)陪審員に選定された場合、軍隊に従事する場合などが含まれます。
このように、被用者が権利として持っている休暇について就業規則に規定することで、雇用者も被用者もその権利義務を確認できるメリットがあります。

次回、この就業規則に盛り込む内容を続けて考えていきたいと思います。
この盛り込むべき内容をみていくと、法律的に何を雇用者として守らなくてはいけないかが見えてくると思います。

 この一週間、ずいぶん暖かくなって、短パンで歩いている人もいます。
これから夏ですね。
このところの夏の暑さをみていると、気が重くなりますが、外でのアクティビティを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。



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作成者: jinkencom

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