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アメリカで弁護士なしの本人訴訟(3)_1192

法律ノート 第1192回 弁護士 鈴木淳司
Dec 23, 2019

忘年会シーズンも盛り上がっていますが、最近は会社の忘年会自体に「行きたくない」という人もいるようです。私の事務所の忘年会ももうすぐ行われ、無事に一年が納められそうです。一年早いですが、やはりなんとなく「〆」という感じは毎年ありがたく思います。インフルエンザが例年よりも流行しているようですが、健康に年末年始を過ごしたいところですね。

アメリカで弁護士なしの本人訴訟(3)_1192

さて、前二回「やっていたコンピュータ関係のビジネスを清算するために、中古ですが電子機器をまとめて他業者に売ったのですが(数万ドルのようです)、正常に稼働しないということで、紛争になっています。相手方他業者は、かなりの損害になったと主張に訴訟をしてくると言っています。払った額は戻すので現物を返してくれといっても、損害が発生しているので、それだけでは許さないといって感情的になっているようにも思います。やっていたビジネスは小規模でとても弁護士を頼むこともできないのですが、訴訟になった場合には、ネットなどでは本人だけでも訴訟もできる、ということですが、実際に訴訟を素人ができるものなのでしょうか。」という質問を考えてきました。

訴訟提起後は送達ー相手に裁判を知らせる

前回は、訴訟を提起するだけでは、足りずに相手方に送達をしなければならないということを考えました。相手方に「訴訟を提起したよ」ということを直接知らせなくてはいけないのです。

この送達ですが、日本では裁判所が主に主導権を握ってやってくれるのですが、アメリカでは個人が裁判所の名前のもと、主導権を持って行います。送達が完了すると、今度は訴えられた側が行動を起こさなくてはなりません。訴訟に応答する必要があるのです。

訴訟提起後されたら回答する

訴訟によってもばらつきがありますが、通常は送達がなされてから30日以内に何らかの回答をしなければなりません。
回答方法についても、単に訴訟の内容を否定するだけではなく、たとえば、手続き的に内容がおかしいとか、人違いであるとか、いろいろな申立(Motionなどといいます)をすることが可能になります。どのようなことが言えるのか、この部分は法律に長けていないと難しい部分ではあります。

訴訟は戦略的なところも多くありますので、どのような応答をするのかは慎重に判断しなければなりません。

 

争うポイントは何か

訴訟に対して、内容自体を争う、という形が最終的には一般的な回答方法なのですが、主張を争うと、その争った部分がいわゆる「争点」といわれるものになります。

一般的なニュースなどでも「争点」と言われることが多々ありますが、訴えた側(原告、Plaintiff)と訴えられた側(被告、Defendant)が何を争っているのか、法律的に抽出していく作業が必要になります。

なお、「被告」と日本の民事訴訟では言われていますが、刑事事件の「被告人」とはニュアンスも立ち位置も違います。決して、民事事件の被告が「悪いことをして咎められている」というわけではなく、事実的な争いに関して訴えられた側という意味しかありません。

さて、法律的に何が争いになっているのか、その根底になる事実を抽出していかなければなりませんが、アメリカではディスカバリー(情報開示)という一連の手続きが規定されています。

60年代から議論され、70年代から積極的に利用されているのですが、自分では持っていない争点に関する情報、たとえば証人の陳述や書類などを相手方または第三者から受け取り内容を検討する方法が用意されています。

実際問題として、弁護士がついていないとかなり複雑なディスカバリーはできません。
一方で、基本的な事項などについては、すでにカリフォルニア州などでは、相手方に送る体裁を整えた質問書(Form Interrogatories)などが用意されていますので、それを利用すればある程度のディスカバリーが本人訴訟でも可能となります。ある意味訴訟は情報戦ですので、相手方のことを知る意味でも、ディスカバリーは重要になってきます。

このディスカバリーをすることのメリットは、自分の主張の強弱が証拠からわかってくることです。アメリカでは、ほぼ95%以上の訴訟が和解で終わると言われていますが、実際問題として、ディスカバリーをすることにより、将来陪審員に判断してもらうための具材が出揃うわけです。

そこで、客観的に自分の主張が通るかどうかを判断することが可能になってくるのです。

大きな訴訟になると、ディスカバリーにかなりお金がかかることが問題なのですが、一方で、訴訟の帰趨を占う、医師で言えばいわばMRIやレントゲンのような情報がでてくるので貴重であるということができます。

ここからまた次回考えていきましょう。

ベイエリアは雨が多く、なかなか外の空気を楽しむことができません。みなさんのお住いの地域の天気はいかがでしょうか。一般的に暖冬だとは思いますが、体を動かして、体調に気をつけまた一週間がんばっていきましょうね。


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アメリカで弁護士なしの本人訴訟(1)_1190

法律ノート 第1190回 弁護士 鈴木淳司
Dec 9, 2019


 もう師走ですね。日本ではあいさつ回りが激しくなる時期でみなさんお忙しくされているのではないでしょうか。街では、電飾が明るく輝き綺麗な時期になってきました。一年がもう終わってしまうと思うと、この一年何をやってきたのか。時の流れははやいものですね。今年、私はまだまだ忙しくしているのですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。クリスマスを挟んで、少しはゆっくりする時間をつくれるといいですね。まだ、2019年も時間が残っていますから、張り切っていきましょう。


アメリカで弁護士なしの本人訴訟(1)_1190


 さて、今回からまた新たに皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。

 いただいている質問をまとめると「やっていたコンピュータ関係のビジネスを清算するために、中古ですが電子機器をまとめて他業者に売ったのですが(数万ドルのようです)、正常に稼働しないということで、紛争になっています。相手方他業者は、かなりの損害になったと主張に訴訟をしてくると言っています。払った額は戻すので現物を返してくれといっても、損害が発生しているので、それだけでは許さないといって感情的になっているようにも思います。やっていたビジネスは小規模でとても弁護士を頼むこともできないのですが、訴訟になった場合には、ネットなどでは本人だけでも訴訟もできる、ということですが、実際に訴訟を素人ができるものなのでしょうか。」というものです。


本人訴訟

 いわゆる本人訴訟とか、当事者訴訟などと言われることに関する質問です。

 以前、日本の弁護士会でも、当事者訴訟に関する調査というのに付き合ったことがあるのですが、日本でもアメリカでも、一定割合で弁護士の助太刀なしに、当事者が自分で訴訟をするということは珍しくありません。

 特に、離婚や子供の養育などの問題については、かなり当事者だけで立ち振る舞うこともあると思います。余談ですが、先日機会があって家事裁判所に出入りすることがあったのですが、法廷は満員御礼でした。そこでは、夫婦(元か?)が出てきて、学校が終わったあとに、子供の課外授業をどうするのだと喧々諤々やっていました。弁護士はついていない分、裁判官も大変そうだな、と思った記憶があります。


少額訴訟と弁護士の介入禁止


 アメリカでは少額訴訟(Small Claims)制度が各州で制定されていますが、この類の上限額が決まった裁判は、弁護士の介入が原則禁止されています。当事者だけで弁論をして、判決に至るということになるわけです。

 今までも少額訴訟については、法律ノートで何度か考えましたね。
 基本的な考え方として、弁護士にお金を払ってまでやる訴訟ではない、という前提があるのでしょう。このように制度として、弁護士の代理を許さないという考え方もちゃんと存在するのです。

 この少額訴訟制度を除いては、基本的に弁護士の代理は一般的なことではあります。
 しかし、弁護士というのは、なんらかの公的扶助(私自身も立ち退き裁判を無料で引き受けて若いときには、裁判をよくやっていましたが)、たとえば弁護士会の扶助などがなければ、基本的には弁護士報酬を払わなければ動かないものであります。とは言え、すべての事件で、当事者が弁護士を雇えるわけではないことは、裁判所もよくわかっています。


裁判所によるセルフ・ヘルプページ


 最近では、各裁判所のウェブページも充実してきて、「セルフ・ヘルプ」などという形で、必要なフォーム、必要な情報などを公にして、一般の人達にも弁護士なしで裁判ができるように積極的に動いているのがトレンドであります。

 弁護士のなかには、自分で訴訟をするのは危険であるといった論調で、意見する人もいますが、私は裁判所がいろいろな情報を一般の人達に用意して、裁判所にアクセスすることは非常に良いことだと思っています。

 逆に、裁判をやることの大変さを実感してもらった方が弁護士の価値というのをわかってもらえると思うのです。そして、かりに弁護士なくして、訴訟ができるのであれば、それはすごいことですし(実際にそういう方もいるわけです)、自分で自分のことができれば、弁護士の助けを借りなくても良いと思っています。


 ですので、今回質問されている方のような場合訴訟を受ける側、被告となるわけですが、実際問題として、今の時代インターネットに正しいかどうかはわかりませんが、情報は溢れているわけですし、取捨選択して自分で訴訟をすることもできないことではないと思います。

 ただ、自分でやることのメリットはお金を節約できるということになるかもしれませんが、デメリットも潜在的にあるわけです。ですので、この辺から次回また考えていきましょう。

 もう一年が終わりますが、この一年生きてこられたことについて、周りの人に感謝しながら、また一週間がんばっていきましょうね。


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