法律ノート 第1292回 弁護士 鈴木淳司
December 5, 2021
今度はオミクロン株だそうです。
日本は神経質に対応していますが、アメリカの対応と正反対ですね。
もう、コロナウイルスはなくならないように思います。
いちいち人に不安を駆り立てる報道はやめて、どうやったらこれから10年付き合っていくのかを社会全体で考えて欲しいものです。
まだまだ我慢は続くようですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
デポジション-deposition-米民事訴訟(2)_1292
さて、前回から考えてきた質問です。
「日本の企業に勤める者です。勤めている会社がアメリカで関わった民事事件で、このたびカリフォルニア州の裁判所の命令でデポジションという手続きで話をすることになりました。通訳の人はつくみたいなのですが、会社の弁護士に話を聞いても、自分に不利になるのかどうなのかよくわからず、個人的な責任を負うのではないかと危惧しています。個人としてどのような責任を負うのか不安です。会社のことでデポジションに出て、個人的な責任を負うとするとどのような事態が考えられるのでしょうか」という質問を今回も続けて考えていきましょう。
前回、デポジションというのはどういうものか、考えました。
基本はアメリカの民事訴訟(刑事訴訟でも使われますが、民事とは違った趣があります)の手続の一部で、対立する同士で質問をしてそれに応えるという情報開示の方法の一つです。
今回は、いただいている質問にお答えするための基礎部分を考えてみたいと思います。
デポジションが使われる場面は二つ
まず、「会社のことでデポジション」とありますが、民事訴訟上デポジションを相手方企業に求めるうえで、大きくわけて2つの方法があります。
一つは、名指しで個人を呼ぶ場合、もう一つは、ある訴訟の対象になっている事実関係について「企業内で一番精通している人(the most knowledgeable person)」というカテゴリーで呼ぶ場合があります。
今回の質問からどちらのタイプで呼び出されているのかわかりませんが、前者であれば、質問者の方が知っていることを話すことになります。
後者の場合には、たぶん質問者が所属する企業内で弁護士のアドバイスをもとに質問者の方が一番良く知っているということで名指しされているのだと思います。
カテゴリーによる違い
この2つのカテゴリーには違いがあります。
質問者の方が名指しで呼ばれる場合には、質問者が「記憶していること」について陳述することになります。
事件に関係すれば基本的に何でも聞けるので、広範な質問を想定するべきです。
若い弁護士は、よくデポジションのときに「異議あり」ということを言い、クライアントを守っている気になっている場合もあります。
しかし、ほとんどの異議はデポジションにおいては意味がないのです。広範な情報の提供が必要になります。
しかし、一方で、憶測して物事を陳述する必要はありません。
見たことがないものを想像して応える必要はありませんし、まったく覚えていないことも「覚えていない」と言うしかありません。
「企業内で一番精通している人」
一方で、「企業内で一番精通している人」というカテゴリーで呼ばれている場合には、デポジションを求める書類に事件に関連した様々な質問分野が記載されています。
その分野ごとに一番精通した人を選ぶということもできます。
ですので、技術的な分野に関する訴訟であれば、企業内でその技術を一番知っている人をデポジションで出すことになりそうですが、一方で会計の分野の質問であれば、別の会計に通じている人を出すということになります。
この「一番精通している人」カテゴリーで呼ばれた場合には、個人で知っていることは陳述することになるのですが、一方で、その陳述した内容は会社全体を訴訟において縛るという効果が生じます。
まさに会社で一番知っていて、その内容が会社そのものの立ち位置である、ということになるので、個人的な責任というよりは会社全体の責任ということになります。
このように大きく分けて2つのカテゴリーのデポジションがあるので注意が必要です。
両方のカテゴリーで出廷も
手慣れた弁護士であれば、両方のカテゴリーを使ってデポジションを仕掛けてきます。
このように2つのカテゴリーがあり、個人的に呼ばれる場合には、自分の言ったことで自分自身が責任を負うことになりますが、一方で「一番精通している人」というカテゴリーで呼ばれる場合には、個人的な責任だけではなく、会社全体としての発言として考えられますので、個人の陳述だけではなく会社の責任となります。
今回はデポジションにも種類があることを理解していただいたと思いますので、次回具体的にデポジションで陳述することでどのような責任が生じるのか考えていきたいと思います。
もう雪が降るというニュースをちらほら聞きますが、かなり暖かい日もありますね、もう今年も終わりに近づいてきました。
クリスマス休暇もありますが、まだまだコロナには注意したいですね。
また一週間がんばっていきましょう。
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