裁判の証人として出廷を求められたら(2)_1276

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1276回 弁護士 鈴木淳司
August 18, 2021

夜、酒を飲みながらときどき料理ビデオを観ています。
おかげさまで料理の幅が広がりました。
今まで持っている自分の調理方法とは違った、食べるラー油もつくりましたし、チャーシューもつくりました。

もともと料理は好きなのですが、観て自分でつくるのは格別です。面白いのは一流レストランの味、とか題しているビデオよりも、家庭でつくる味とか、地味なものの方が舌にあったりしています。
コロナ禍で自宅での料理が増えているわけですから、せっかくのチャンスなので色々これからも料理を習いたいと思っています。
皆さんは料理されていますか。

裁判の証人として出廷を求められたら(2)_1276

 さて、前回から考えてきた「数年前までベイエリアに日本企業の駐在として住んでいました。現在はアメリカ中西部に引っ越しをして駐在を続けています。最近、裁判に出てきてもらえないかという電話がカリフォルニアの警察から入りました。ベイエリアに住んでいる頃、飲酒運転をしている車に追突された事件がありました。その運転手に関することらしいのです。すでに保険金は受け取って処理済みですし、仕事も離れるのが難しい状況です。このような場合には、行かないとなにか処罰されるのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。

自分がどのくらい大切な証人か

 前回は、警察(または検察か)から連絡があった場合に、自分はどの程度重要な証人なのか聞いてみると良いといいました。

かりに、まあ来てくれれば、程度であれば行けませんと言えば良いですし、本当に来てほしそうであれば、仕事やコロナで時間を取るのが難しいので、できれば呼ばないでほしい、と伝えることになるでしょうか。

警察や検察が無理やり証人を連れてくるということはできませんから、丁寧に断れば良いと思います。

もちろん、積極的に証言をしたいということであれば、協力すれば良いと思います。

裁判所からの召喚状

 さて、かりに証人としての協力要請を断った場合、ご本人が証人としてなくてはならない状況であれば、裁判所名義で召喚状が届く可能性があります。
これが届かなければ、出頭する必要はないのですが、届いた場合に対応する必要があります。

まず、この召喚状ですが、裁判所名義であるものの、その証人を呼びたい、検察や弁護士が作成し、皆さんに送達します。

そして、出頭命令に従わないと罰金等の罰則が課されることになります。このような場合には、職場などに相談をして出頭を考えなければなりません。気持ちの良いものではないかもしれませんが、司法制度を維持するには必要ではあります。

裁判所の召喚状には限界が

 しかし、この裁判所の召喚状ですが、どこの誰でも呼び出せるというわけではありません。
裁判所が召喚状をもって呼び出せるのは、その裁判所が管轄している地域に住んでいるか、ビジネスなどのつながりがある人に限られます。

あまり、ここでは法律的な細かいことには立ち入りませんが、たとえば、カリフォルニア州の裁判所(今回の質問もカリフォルニア州の裁判所での話になりそうです)であれば、カリフォルニア州内、アメリカ連邦裁判所であれば、アメリカ国内が呼び出せる範囲ということになります。

その範囲を超えて召喚をするには特別な手続きを踏まなくてはいけませんし、拒否されると裁判所は管轄の地域を超えてなにか強制することはできません。

たとえば、今回質問されているケースがカリフォルニア州の裁判所で刑事裁判として行われることになると、カリフォルニア州外にいると思われる質問者の方を強制的に呼び出すことは基本的にはできないことになります。

ですので、今回の回答としては、罰則等が課されることはないと考えられます。

ビデオ出廷という方法も

 ただ、ここからは弁護士としてのお願いというか感想ですが、最近ではコロナ禍の影響もあり、ビデオでの証人尋問で代用されています。
この間、裁判中に裁判官と話していると、ビデオで行うのは、デメリットもある(途中で聞こえなくなってしまうなど)が、一方で、出廷が楽になり、負担も軽減されるということを言っていました。

裁判制度はかなりコロナに影響を受けていますが、もしビデオで出廷が許されるような場合であれば、今回の質問されている方もあまり負担にならないでしょうから、どうか参加してみてください。

もちろん、私的な利益も重要ですが、裁判は公的な側面もあるのです。面倒くさいということはわかりますが、私の料理のように新しく習う側面もあるので、興味を持って参加していただけると嬉しいと思います。

 次回また新しい質問を考えていきましょう。

山火事がカリフォルニアでは心配ですが、自分たちで節電などできることはしながらまた一週間がんばっていきましょうね。

■Mothers Against Drunk Driving:MADD            飲酒運転を撲滅するためのお母さんたちのNPO法人
https://madd.org/

証人となる勇気_カリフォルニア州弁護士コラム_1184

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作成者: jinkencom

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