法律ノート 第1275回 弁護士 鈴木淳司
August 7, 2021
オリンピックがはじまって、日本のコロナ罹患者数が激増しています。
ある雑誌では、オリンピックをコロナから守っているが、日本はオリンピックから我を守れているのか、という言いっぷりでした。記事では隠れて酒を出す店の話などが載っていて、オリンピックをやっているのに緊急事態という矛盾が詳しく書いてありました。
選手にとってみたらとても重要な大会ですし、観ているとやはり感動をもらいます。他方で、いろいろな軋轢や犠牲が出ていますが、うまく緩和もできていないように外からは見えます。心配です。
裁判の証人として出廷を求められたら(1)_1275
さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると、「数年前までベイエリアに日本企業の駐在として住んでいました。現在はアメリカ中西部に引っ越しをして駐在を続けています。最近、裁判に出てきてもらえないかという電話がカリフォルニアの警察から入りました。ベイエリアに住んでいる頃、飲酒運転をしている車に追突された事件がありました。その運転手に関することらしいのです。すでに保険金は受け取って処理済みですし、仕事も離れるのが難しい状況です。このような場合には、行かないとなにか処罰されるのでしょうか」という質問です。
今回質問されている方はあまり事故の詳細を書かれていないのですが、たぶん飲酒運転をしていた人の刑事裁判に証人として呼ばれているということでしょうか。
交通事故は被害者であるご本人が処理済みと書かれているので、民事事件にはなっていないようです。
飲酒運転に関する事件は国の敷地内(例えば国立公園など)で現行犯逮捕されない限りは、概ね州の裁判所に事件は係属すると思います。そうすると、カリフォルニア州の裁判所で飲酒運転をしていた人に対する刑事事件が行われていて、その事件の証人として出廷してほしいということなのだと思います。
ただ、起訴されると警察ではなく検察が主体となって公判を担っていきますので、今回警察から連絡があったということですが、検察庁の事務官か、検察から頼まれて警察が連絡してきているのかもしれません。
裁判に証人が必要な理由
なぜ裁判に証人が必要かというと、裁判というのは、書類をベースに行われるのではなく、人が話す内容を基礎に行われるからです。
書類だけ、「はいどうぞ」と言って陪審員に見せることはできません。証人を連れてきて、書類、写真、図などを説明してもらうのです。
証人が話せることは自分で覚えていることだけなので、憶測で話すことはできません。
ですので、たぶん今回の飲酒運転による追突事故については、被害者である今回の質問された方が覚えていることを話してもらうことが最重要と言っても良いと思います。
したがって、実際のところ証人がいなければ裁判というのはできないことになります。
もちろん事故を捜査した警察官なども証人になるでしょうが、事故そのものを体験したわけではないので、実況見分をした範囲でしか、証言はできないということになりますね。
このような理由があるからこそ、今回質問されている方に連絡が来たものと思われます。
警察・検察は電話で問い合わせてくる
さて、最初に警察(たぶん検察だと思いますが)が書面ではなく電話をしてくる理由はなんでしょうか。
それは、自発的に証言をしてくれるかどうか試しているのです。
本来であれば裁判所からの喚問状(subpoena)というものが必要なのですが、別に自発的に裁判で証言をしてくれるなら、ややこしい手続きをしなくても良いわけです。
検察にしても、協力的な証人であるかどうかも知りたいところです。
それで、まず電話で様子見をしているのではないでしょうか。もし積極的に出廷して証言をしたいのであれば、出廷するべきですので問題はないと思います。
一方で、もう関わり合いたくない、とか、あまり気が進まないという場合にはどのように対応するのが良いでしょうか。
ここは次回考えます。
かりに、重要な証人が裁判に出てこない場合には、裁判は成り立たないかもしれません。
今回の質問に出てくる事件の具体的な内容はよくわかりませんが、今回の質問者の方が事件にとってどれだけ重要な証人なのかが影響すると思います。
本当に検察(または場合によっては弁護人)が重要証人であると思えば、なんとしても裁判で話してもらいたいと思うはずです。
ですので、今回質問されている方は、最初に「私は事件でどの程度重要な証人なのですか、私がいなくても問題ないですか」と言った質問をするのが良いと思います。
ここから次回続けていきましょう。
コロナは色々変化するようで、なんとか株とか、覚えきれなくなりそうに多くニュースになっていますし、最近ではなんとか株プラスなどというのも出てきているようで、もうついていけません。
またシャットダウンになるのは辛いです。
今は、各人が健康に留意して気をつけていくしかないですね。
また一週間がんばっていきましょうね。
■Mothers Against Drunk Driving:MADD 飲酒運転を撲滅するためのお母さんたちのNPO法人
https://madd.org/
証人となる勇気_カリフォルニア州弁護士コラム_1184
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