米コロナ禍の家賃トラブル(1)_1260

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1260回 弁護士 鈴木淳司
April 26, 2021

 ベイエリアではすでにこの夏、水不足になるので節水を呼びかけるメールが入ってきています。
また、夏に渇水、火事など今年も起こるのかと思うとため息がでます。気候は良いエリアですが、天候によって生じる問題は年々山積されていくように思います。
カリフォルニアでは、コロナワクチンが行き渡ってきたので、ずいぶん収束に向かって進んでいますが、また新たな課題がやってきそうです。まあ、人生と一緒ですが。

米コロナ禍の家賃トラブル(1)_1260

さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。

今回考える質問は、コロナ禍になってしまったことから起きている数多くの法律問題の一つではあります。

いただいている質問をまとめると「昨年(2020年)夏にアメリカの大学を卒業しました。その後、大学を通じてプラクティカルトレーニングをしようとしていたのですが、プログラムが閉鎖され、急遽日本に戻りました。日本で就職活動を続けていたのですが、数ヶ月してから借りていたアパートからセキュリティデポジットだけでは足りないので、あと数千ドル払えという督促状のようなものが日本の自宅に届きました。すでに、コロナ禍において合意してセキュリティデポジットも返してもらうことになっていたのですが、更に支払いを求められていて納得がいきません。このような場合にはどのように対応するべきなのでしょうか」というものです。

賃貸借にまつまる様々なトラブル

コロナ禍では家賃についてのトラブルがかなり多く生じていて、いろいろな相談も受けます。
一方で、仕事もなくなり支払いもできないという方も多く発生した事実もあります。

簡単に言うと大家としては家賃がないと困る、店子としては払いたくても払えない、という停滞した状況が続いています。

カリフォルニア州ではコロナ対応政策として、家賃補助、立退訴訟の一時停止などが取られ、なんとか大家と店子の利益の均衡を保とうとしていますが、効果はどこまであるのか、事後の統計をみないとわかりません。ただこの手の家賃に関する相談はかなり寄せられていますが、ドライに法律問題として割り切るにはかなり悩ましい時期ですので、様々な賃貸借における滞り現象が起きているのが現実です。

大学の閉鎖と留学生-やむなく日本帰国

さて、今回の質問は、カリフォルニアに留学をされていた日本人の方からのもので、もうすぐ卒業というときにコロナで学校が閉鎖されてしまったようです。
卒業式もなく学校を修了するのは、切ないでしょう。アメリカでは入学式はないですが、卒業式は派手にやるものですからね。
今回の質問をされている方も残念ですが、一人ではありません。
皆、それなりに今回のウイルス大流行で大なり小なり人生に影響が生じていますよね。

質問からは、学期中途で日本に戻ったのかどうかはよくわかりませんが、とにかく、借りていたアパートを前倒しで退去して日本に帰ったということです。
また、退去の際に、大家(または管理会社)と話をして、退去の合意を得たということのようです。

何をおいても契約書

まず、このような相談がある場合には、最重要チェック項目として契約書が挙げられます。

賃貸借の場合などは、その場で契約が完結するタイプのものではなく、継続して長期間契約関係が続きます。ですので、何年も前の契約など、いちいち見返す人はレアだと思います。
実際に入居をしたあとで、毎年契約書を見るという人がいたら、ちょっと大丈夫なのかと一般的には思われるかもしれません。
正直私も、若いときに賃貸をして、その契約書など良く読んだりしたかと言われると微妙ですし、退去のときの金勘定のときにちょっと確認したかもしれない、程度の話ではあります。

ところが、やはり契約書というのは、特にアメリカでは重要で契約書の内容がまず解決の緒になります。

今回質問されている方が締結された契約書というのは読んではいませんが、まずは、契約期間と支払いについて確認する必要があります。

賃貸契約書確認のポイント

通常賃貸借契約には期間が定められていて、一年間とか、年数が決められています。
いろいろな行政的な制限はありますが、基本的には、一年間が経過すればその後は月極契約になります。ですので、通常では一ヶ月前の通知で解除できるように設定されているはずです。

退去する30日前に大家さんに、「出ていく」という通知を契約書に沿って提供していれば、問題はありません。

問題は、契約当時1年間ということで契約していて、その期間内に退去する場合です。

契約書を良く確認する必要はありますが、通常は「一年間で、何ドル、そして、その総額を12ヶ月に均等に割って支払う」という形の書き方になっているはずです。

この意味は、一年間の契約で、もともと毎月の契約ではない、ということです。
そうすると、原則として一年分は一括して支払うということを約束していることになります。
ただ、今回質問をされている方は合意がある、ということですが、どのように影響するのか、この辺から次回考えていきたいと思います。

 花粉も凄いですが、日本はまたコロナが深刻な状況になってきて、ストレスが溜まりますね。
気分転換をしつつまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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