法律ノート 第1259回 弁護士 鈴木淳司
April 21, 2021
訴訟でかなりヘビーな書面作成に付き合っていて、法律ノートを書くのが遅くなってしまいました。すみません。
いやー、松山英樹選手のマスターズ優勝、本当に凄かったですね。
松山選手のキャディーが最後に礼をしたのも、いろいろな解釈があるのでしょうが、とにかく素敵だな、と思いました。
毎晩居残ってパターを練習したり、才能だけではなくやはり人間は弛まぬ努力をすることが大事なのだとつくづく感じました。
これからどんどん日本の選手が男女を問わずゴルフで活躍するきっかけになれば良いでしょうし、若い人たちがゴルフに興味を持つのではないでしょうか。
電子決済の返金は?アメリカ事情(2)_1259
さて、前回から考えてきた「コロナ禍で、ビデオ会話を利用してダイエットプログラムに申し込みました。3ヶ月のプログラムで最初にクレジットカードで支払いをしました。そして、1ヶ月ほどやっても、効果がなく退会を申し出ました。私が申し込んだときには、いつでも解約が可能であると書いてありました。ところが、何度メールでやりとりをしても、退会は自由だが返金はできないと言われました。そして、あとになって確認すると、ウェブサイトの記述が変更されていて解約についての記述がなくなっていることに気づきました。このような場合、どのように返金を求めていけばよいのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。
前回は行政やプラットフォームを提供する業者にクレームを入れるということを考えました。
クレジットカード会社に動いてもらう
今回は、まずクレジットカードを介して電子決済している場合のことを考えましょう。
クレジットカード会社は、私的な企業ですから各社違いはありますが、様々なサービスを提供しています。
不正な行為についても、クレジットカードによっては対応してくれる会社もありますので、まずはどのようなサービスがあるかを確認するのが良いと思います。
かりに、争える場合には、Disputeと言いますが、クレジットカード会社が対応してくれることもあります。
その場合、クレジットカード会社に対して色々情報を提供しなければならなくなるとは思います。ですので、支払いをした相手先との交渉内容等は、保管しておいて提供することになるでしょう。
非営利の法律サービスを利用
クレジットカード会社も対応してくれない場合には、やはり相手方に対して返金を求めなければなりません。
弁護士に委任して事件をすすめるのは、ほぼ確実にコスト割れをしてしまうでしょう。
その場合には、非営利(Non-profit)の法律サービスを提供する団体を地元で検索して相談するのが良いかもしれません。
同じような被害に遭っている人たちもいるかもしれません。また、場合によってはソーシャルメディアなどを通じて、同じような体験をしている人たちも見つかるかもしれません。そういった経験を通して、どのような形で解決するのかを模索するのも悪くはないと思います。
相手方が不明でも裁判はできる
弁護士に委任した場合、かりに相手方がわからないとしても被告不詳として裁判を提起することは可能です。
この場合、いったん裁判を提起して、プラットフォームなどを提供している業者に対して、相手方が誰なのか、開示を求めることができます。
この開示を求める作業を通して、相手方を特定し、その個人なり会社に対して訴訟において請求することになります。
一人ひとりの被害額は小さくても、泣き寝入りをせずに数を集めれば訴訟にすることも可能かもしれません。
相手を特定する作業がうまくいくと、誰を被告にすればよいのか明らかになります。そして、その人または会社を相手方として、通常の訴訟を進めて、損害賠償請求をしていくことになります。
消されたウェブサイトを探す方法も
ただ、今回の質問にあるように、相手方のウェブサイトが記載を変えてしまった、という場合には、できるだけオリジナルのウェブサイトの記述を取っておきたいですが、それもしていないケースもあるでしょう。
その場合には、過去のウェブサイトの記述を見る方法も絶対ではありませんが可能なことも多いので、活用してみるのも良いと思います。いわゆる「魚拓」と呼ばれるものです。
インターネット社会でも無責任な人も少なくありませんので、お金の支払には細心の注意が必要になります。
手軽にお金のやり取りができる割には紛争が生じたときの解決があまり発達していないのも事実ではあります。
自己責任の部分もありますが、今回の法律ノートを手がかりにして、問題が解決できることを祈っています。
次回また新しくいただいている質問を考えていきましょう。
暖かくなってきたと思ったら朝晩寒くなったりして、安定しない天気ですが、太陽を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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