カリフォルニア州弁護士コラム「和解」(1)_957

Golden Gate sanfran

法律ノート 第957回 弁護士 鈴木淳司
Sep 20, 2015

 今回と次回は、いったん皆さんからいただいている質問を考えることを中断して、最近思ったことを書かせてください。日本ではシルバーウィークという私は経験したことのないバケーション期間だそうですが、残念ながら関係のない私はせっせと原稿を書いています。もう秋ですね。

カリフォルニア州弁護士コラム「和解」(1)_957

 弁護士のイメージというのは、訴訟で闘うという職業であると皆さんは思っていらっしゃるのではないでしょうか。法廷で弁論をする姿は良く映画やテレビにも映るので、そればっかりやっていると思われるかもしれません。

 しかし現実は、法廷で争うことをしない(できない)弁護士もたくさんいますし、ビジネスを専門にやっています、と公言する弁護士も多く存在します。とはいえ、やはり弁護士の仕事の根底は訴訟で勝つか負けるかを争うことにある、と長い経験を積んでも私は心の何処かで思っています。

 先日も、私の所属する事務所で担当する案件で高等裁判所の審理において逆転勝訴したときは、やはり醍醐味を感じたものです。訴訟で法律論を駆使して競り合うという生の体験は、たとえ会社の設立をしたり、契約書のレビューをしたりと、法廷には関係ない仕事においても、かなり活かされると思います。弁護士としての価値ある経験はやはり法廷を通して積み重ねられていくのだと思います。

アメリカでは陪審裁判までいく訴訟はごくわずか

 一方で、法廷での経験を積めば積むほど、法廷での闘いに虚しさを感じることがあります。争いの種類にもよりますが、わざわざ高い弁護士費用を使って闘い、結局得るものが少ないという場合も少なからずあるわけです。

 アメリカでは訴訟になったとしても、陪審裁判までいく訴訟というのはごくわずかであって、ほとんどの事件は裁判上の和解に至ります。私は兼任の裁判官をしていますが、私が陪審裁判前の証拠整理を担当し、同時に和解を促す仕事をすると、かなりの確率で和解します。

 そうすると、長い間弁護士費用を費やして闘い、結局和解するのであれば、最初から話し合いをすれば良いのではないか、と思ってしまう事件もかなりの数あります。

クライアントの利益を最優先することが弁護士の義務

 法律事務所の仕事は、言い方は悪いですが、訴訟を増やすことでもあります。わざわざ訴訟にして、闘って勝つことを目指します。私もかなりの数の訴訟を見てきていますが、そもそも訴訟にしないでもなんとか話し合いをすれば済む話ではないか、と思える訴訟を多く目にしてきました。

 私は安易に訴訟の提起はせず、最後の手段にするべきだと思っています。たとえ私の所属する事務所が得られるであろう弁護士費用がなくなろうが、関係ありません。弁護士はクライアントの利益を最優先することが義務であるからです。

 もちろん、訴訟を避けられない場合もあります。刑事事件が最たるものですが、離婚事件などもあるでしょう。また、特許、著作権、不動産など権利を侵害されているような場合にも訴訟になりやすいと思っています。しかし、このような訴訟でも必ず「落とし所」というものが存在するのです。

ビジネスの利益分配を巡る争いの相談を受ける

 最近ある相談を受けました。あるビジネスの利益分配を巡って争いが生じたのです。まず、一方の当事者の話を聞きましたが、結局お金の話でした。弁護士が争う訴訟というのは、権利の帰属が問題になることも多いのですが、結局はお金の問題ということが多いわけです。

 一応、話を聞いて相手方に要求をしてみたところ、相手方も私のことを良く知っていて、私が信頼できると思っているという文面をもらいました。そこで、私は両当事者に連絡をして、中立の立場で調停をしてみようということを提案しました。

 本来であれば、一方からすでに話を聞いているのですから、相手方は弁護士を使って争うことができます。しかし、私の勘で「この案件は訴訟にもなっていない段階で解決してしまうのが両当事者のためだろう」と思ったので、あえて調停の案を提示してみました。

 結局、訴訟になって数年争っても、和解調停をすることになるのは目に見えています。それよりは、はやい時点でまとめてしまったほうが良い、と判断したのです。この調停の提案に対して両当事者は肯定的で、ぜひ早い時点でやりたいということになりました。

 私の勘は当たっていて、両当事者とも一刻もはやく紛争(になりかけている)を解決したいと望んでいたのです。両当事者に、今までは一方の話を聞いていたことを明示して、中立の立場で調停をするということで、案件が進むことになりました。

 次回続けていきたいと思います。


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作成者: jinkencom

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