弁護士の「利益相反(Conflict of Interest)」とは?(2)_954

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法律ノート 第954回 弁護士 鈴木淳司
Sep 1, 2015

 シエラネバダ山脈ではかなり大きな山火事が相次いでいます。水不足が理由の一つになっています。水分を求めて虫が至るところで松が食い荒らされ、そして枯れていますが、その木に火が燃え移ってとんでもないことになっています。また、聞いた話では、水不足が深刻で、水を消火栓などから盗んだりする輩もでてきているようです。とにかく今年の冬は大量の雪がシエラネバダ山脈に降ることを祈っています。

弁護士の「利益相反(Conflict of Interest)」とは?(2)_954

 さて、前回から考えてきた、「私はハワイ在住です。カリフォルニア州で最近私の父が他界し(相談者の母親はすでに他界している)、カリフォルニア州に住んでいる3人の兄弟と遺産相続について話合いをしています。その過程で紛争が生じ、私自身、知り合いの弁護士に相談したのですが、「Conflict ofInterest(利益相反)」があるので、相談にのれない、と言われてしまいました。なんでも、他界した父親が生前に何度か相談をしたことがあるからだそうです。なんとなく、弁護士によく思われていないので断れたのかと思いましたが、利益相反というのは弁護士にとってはかなり問題になることなのでしょうか。」という質問をいただきました。前回は、ある程度の例を挙げながら、弁護士の利益相反というのはどのようなものか考えました。今回、カリフォルニア州の弁護士規則に従ってもう少し掘り下げてみましょう。

利益相反に当たる、基本的な2点

 弁護士倫理の規定もかなり複雑にはなっているのですが、主に(1)同じ案件において、一度クライアントである当事者を代理した場合、その利益に反する形で代理をしてはいけないこと、および(2)現在のクライアントまたは過去のクライアントと、法律上、ビジネス上、金銭上、および個人的な重大なつながりがあり、そのつながりが当該案件に影響する場合には、代理をしてはいけないこと、とされています。

 私がかなり簡略化していますし、他にもいろいろな制限はありますが、基本的には、上記の2点となります。この場合には、絶対に利益相反だからダメ、というわけではなく、関係者全員に状況を開示して、そのうえで全員が承諾(納得)すればよいわけです。

辞任をしても、元のクライアントの利益に反する形の代理はできない

 さて(1)については、簡単です。法律問題が発生している案件に関わっている弁護士が一方の相談に乗っていたのに、他方を代理して訴えを起こすような場合です。

 日本でもアメリカでも、数は多くないですが、複雑な事件などでは、このような問題も起こる場合があります。前回、ご紹介した弁護過誤をしていた弁護士の話ですが、この弁護士はあるベンチャー企業の相談に乗っていて、あるときいきなり「辞任届」のようなものをつくり、翌日には、その企業の取締役を代理して、会社を訴えてきました。辞任すれば大丈夫という解釈をこの弁護士はしたようですが、この解釈事態も問題ですし、訴えまで起こしてくるのはもっと問題です。

 私も法廷で見ていたのですが、裁判官も怒っていました。とにかく、おなじ案件に関わっていれば、弁護士は注意しなければならないのは当たり前ですね。私が個人的に経験した、一番質の悪い弁護士だったでしょうか。

グレーゾーンが広い「実質的な関係(Substantial)」

 次に(2)についてですが、今回相談をされている方の事例ではこちらの方が問題となりそうです。実質的な関係、というのは、英語ではSubstantialとされていますが、何が、実質的な関係なのかということは具体的に明記されていません。したがって、かなりグレーゾーンが広いということになります。

 弁護士としても、グレーであれば「気をつけよう」という心理が働きます。重要なのは、法律的なつながりだけではなく、ビジネスや、社交的な関係も含んでいるということです。かなり広範囲な関係のなかで利益相反が生まれてしまいかねないのです。

 もし、クリーンであったとしても、弁護士の利益相反が問題になれば、クライアントや関係者にも迷惑がかかってしまいます。私もいろいろな団体に参加したり、役員などになって欲しいと頼まれることがありますが、今までの弁護士人生でできるだけ消極的にしているのです。ビジネス的にはマイナスなのかもしれませんが、私は訴訟案件によく絡むので、利益相反が生まれるといけない、という考えが頭のどこかにいつもあるからです。

 今回質問されている方の事例でも、弁護士はたぶん、質問者とか、他の相続人、被相続人などとなんらかの関係があったので、潜在的に相続人同士で利益が対立する可能性があるので、受任を避けたのかもしれませんね。

 日本もずいぶん涼しくなってきた、という話を聞きます。これから秋ですね。もう一年の3分の2が終わってしまうというのは信じられないですが、秋は楽しいものがたくさんあります。また、一週間体調に気をつけてがんばっていきましょう。


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作成者: jinkencom

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