再入国許可証(Advanced Parole)
再入国許可証(Advanced Parole)をご存知でしょうか。
この書類が必要になる場合として、永住権申請を米国内で行なっている過程で、アメリカを出国し、再度入国する必要がある場合、出国前に必ず移民局に申請をして得ておく必要があります。
かりに、再入国許可証を得ないで、アメリカを出国してしまった場合には、ペンディングになっている永住権申請が取下げられたとみなされてしまいます。
無効という言い方は法律用語ではちょっと強いので使いませんが、永住権申請がなかったこととされてしまいます。
ですので、たとえば、就労ビザで米国に滞在されている方々で、永住権申請をされている方は、基本的に再入国許可証を事前に取得する必要があります。
再入国許可証の発行は、通常の申請方法の他に、緊急な場合には、各移民局のオフィスにおいても、申請が可能です。
再入国許可証取得の具体例―L-1Aビザ
例をつかって考えましょう。
たとえば、L-1Aビザを使って米国で管理職についている日本人がいるとします。その方は、Lビザに基いて最長で7年間米国に滞在できます。そのLビザに基いて滞在している間に、自分や家族の何らかの都合でアメリカに滞在し続けることになるとします。そのような場合には、永住権を申請するということになろうかと思います。
L-1Aビザから永住権を申請するのは、比較的両者の申請内容も似ていることから、一つの永住権取得パターンのお約束コースと言えます。
この例を使うと、永住権を申請している間でも、別途Lビザで合法的に米国に滞在できるわけですから、Lビザに基づいて就労は続けていくことができます。
一方で、永住権申請というのは、年単位で予定しないといけないほど時間がかかりますので、「申請中」という状況がかなり続くことになります。
このような状況において、たとえば本社のある日本に出張しなければならない、という状況になった場合、出国するのは簡単ですが、再入国のときに問題が生じます。
二つの意思―Dual Intent
理論的な話をすれば、すでに永住権を申請しているということは、アメリカに永住する意思があることをアメリカ政府に対して表明しているわけです。
ところが、再入国をするときに、まだ永住権はないわけですから、かりに就労ビザであるLビザで再入国するとおかしなことになります。
なぜなら、一時滞在ビザというのは、「いつかは自国に戻る」という前提で発給されるものです。必ずビザには有効期限と合法滞在期間が記載されていますね。ですので、Lビザで再入国をするとなると、一方では永住の意思を持っていることを表明しているのに、もう一方では、再入国の際に一時滞在の意思で入国することになり、形式的には、相反する意思があると考えられてしまいます。この状態をDual Intent(2つの意思)があると移民法上では呼んでいて、基本的には許されないと考えられていました。
ですので、基本的には、再入国許可証を取って、永住の意思が継続しているということをアメリカ政府に示したうえで、出入国をすることになります。
少々難しいのですが、以上のような、2つの違った意思という問題があるので、再入国許可証が必要になるというロジックになるのです。
二つの意思の併存を認める例外
しかし、技術の分野でもかなり外国人の労力に頼り、さらにアメリカ国外からたくさんの企業が米国に基地をつくっているという状況では、就労ビザでも、特に上記の例で使ったLビザとHビザが活発に使われています。
以前は、Dual Intentを認めないのが移民法の基本でしたが、例外的にLとHビザに関しては、DualIntentを認めるという規則に変更されました。
したがって、オフィシャルに移民局が2重の意思といいますか、永住の意思と一時就労の意思が併存することを認めたことになります。
就労ビザをお持ちの方は、永住権申請中は再入国許可証を持っていなければ出入国ができない、と思われている場合が少なくありませんが、LビザとHビザについては、再入国許可証を事前に取得しなくても、就労ビザで出入りできますし、永住権申請も失効になるわけではありません。これが現在のルールです。
あくまでも、LビザとHビザに関しては例外規定として、許されているのであって基本的には、Dual Intentは許されていないと考えておけば良いと思います。
よく「うわさ」を鵜呑みにして、再入国許可証がいる、いらない、などで迷う方がいらっしゃるようですが、基本的には、再入国許可証は必要で、LビザとHビザの保持者に関しては、例外的に不要であるということで理解をしておいてください。
次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。
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