カリフォルニア州弁護士コラム「母親に愛を込めて」_1000

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1000回 弁護士 鈴木淳司
Mar. 27, 2016

 法律ノートが1000回ということになり、色々な方が「記念にどうするの」と話題にされていました。読者の皆様がいるからこそ、この法律ノートも続いていたので、何か読者の皆さんに楽しいことをできないかと考えていました。たとえば、著名な方々との対談も良いのではないかと思っていました。色々考えました。自分で辛い時も続けてきた法律ノートの執筆ですから、読者の皆さんにはつまらない話題で恐縮ですが、ここまで法律ノートを書き続ける肉体と精神を鈴木淳司に与えてくれた、私の母親に今回の法律ノートを捧げたいと思います。

カリフォルニア州弁護士コラム「母親に愛を込めて」_1000

 私の母親は特殊な環境に生まれました。母親の父は著名な宗教家で、彼が他界したときの葬儀委員長は元首相の宮沢喜一さんでした。宗教をやることを生まれた時から背負わなくてはいけなかった私の母は、自分のやりたいこともできず、宗教家の道を歩み、最終的には自分の父親と対立しました。その対立からかなり辛い道を母は歩んだようですが、母は、本当に真っ直ぐで、自分が間違っていると思うことは絶対に曲げない人でした。その性格が良くも悪くも彼女の人生に影響したのだと思います。

 母は若いころから髪の毛を染め、パーマをかけ、バイクを乗り回していたそうです。かっこよかったのでしょうね。私が物心つくときには自宅にオーストラリア人の講師を招いて英会話教室をしたり、自分なりに働いたりして忙しくしていました。私が覚えている限りでは、オートバイにも乗っていました。

 とにかく、色々な人が出入りをする家だったと思います。ショッピングが好きな人で、私が子供の頃、当時遊園地もあった牧歌的な二子玉川に一緒に買い物に出かけ、日本にできたばかりのマクドナルドで食事をしたこともよく覚えています。外国の電車の一車両を使ったカフェで「お茶」もよくしていました。今では景色が一変しているみたいですね。

「ワルガキ」の私のために頭を下げていた母

 私が小学生の時、とにかくエネルギーが有り余っていたようで、母は、よく学校に呼び出されていました。いわゆる「ワルガキ」のレッテルはその後続いていくわけです。呼び出される度に、母親は頭を下げていました。当時、地元では「悪いこと」をすると、なぜか私ではないか、と言われ、私の母は言い訳もせずに頭を下げていました。今思えば本当に何でやったのだろうと思いますが、喧嘩やいたずらをしたりして、本当に迷惑ばかりかけていました。どのような状況でも、構わず母親はいつも頭を下げていました。幸いに一度も刑事事件にはなりませんでした。

C型肝炎との闘い

 私の母親がC型肝炎に罹患したと聞いたのは最近ではありません。10年以上前のことでした。C型肝炎というのは、血液感染するということで、私を産んだ時の感染ではないかという可能性が浮上しました。私は、自分が生まれた病院に連絡をしました。古い記録なので「よくわからない」という返事を受けました。

 私が懇意にしている顧問先の方の御友人を頼って東大病院でも検診を受けましたが、C型肝炎である事実は動かなく、肝硬変の症状もあるということになりました。数年前でが、C型肝炎の特効薬で、日本で認可が下りていない薬があることを別の私の懇意にしているクライアントから聞きました。3クール1000万円以上かかるということです。私は借財しても母親にその治療を受けてもらいたかった。しかし、他にお金をつかうことがあるでしょということで、母は拒否しました。

 昨年に入って肝炎治療薬が公的にも日本で認められて、母を苦しめていた肝炎が消えました。しかし、年老いた母は疲れが消えないようで、まだ闘っている状況です。肝炎であると診断されたときに、母は、最初に私や妹に罹患があるかを気にしたようです。とにかく自分の産んだ子供を第一に考える母でした。

母からもらった強靭な強さ

 私は母からもらった健康な体で、仕事も問題なくこなしていますし、法律ノートも20年以上続けていけています。肉体的だけではなく、精神的にも母から「道理に通らないものには絶対に日和らない」という強靭な強さをもらいました。このように授かったものは果てしないのですが、今まで、とにかく母には迷惑をかけっぱなしだと思っています。私のやりたいようにさせてくれた訳ですから。

 こうやって法律ノートを続けられていけるのは、私を産んでくれた母が存在してくれていたからです。読者の方を差し置いても、一番に感謝するべきだと思っています。心の底から言います。

「お母さん、こんな馬鹿息子を育ててくれてありがとう。そして、どうか末永く元気でいてください。」

 今まで私が母親に迷惑をかけた分、人の幸せを願って、弁護士としての仕事を全うしていけたらと思います。今回は母に捧げたいと思います。どのような状況であっても、読者の皆さんもご自身のお母さんの存在に感謝されることを祈っています。


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作成者: jinkencom

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