法律ノート 第1164回 弁護士 鈴木淳司
June 10, 2019
皇后雅子様は、流暢な英語を話されるので、外国からのゲストに対して直接、そして明るく対応されている記事を日本国外のメディアでも目にします。天皇家という長く続く制度をもっと海外にも知ってもらう良いきっかけになることでしょう。
英語にかかわらず語学がいくつかできるメリットは、やはり友人が多くできることですが、日本の象徴であっても、海外とダイレクトに会話をされていくというのは、素晴らしいことですね。日本は梅雨のようですが、皆さん雨にも負けずがんばられていますか。
賃貸料の値上げ要求、簡単にできる?(3)_1164
さて、前二回考えてきた質問です。
「ベイエリアに住んでいる駐在員です。2年ほどアメリカに住んでいますが、あと2年ほどアメリカに留まることが決まっています。そこで、家族(全員で4人)もこちらに呼びよせて一緒に住む計画を立てています。現在住んでいるマンションは、それなりに大きいので、このマンションであと二年ほど住みたいと思い、マネージメントオフィスに告げたところ、家賃を上げなくてはならなくなると言われて驚いています。言われていることがよくわからなかったのですが、同じマンションを借りているのに、簡単に家賃を上げることができるのでしょうか」という質問を、今回も続けて考えていきましょう。
州法よりローカルルールが尊重される傾向に
カリフォルニア州は、連邦が模範として作っている均等住居法(The Fair Housing Act)の基準を採用し、目安としています。
以下考えますが、カリフォルニア州法はあくまでも目安であって、地方公共団体である、州内の郡が独立した規則をつくっている場合も少なくありません。
住居に関する法律はやはり地元に密着している要素があるので、ローカルルールを尊重しようとする傾向があるからです。
ですので、今回の法律ノートは、一般的な州の考え方になりますので、必ず、今回質問されている方も、お住まいの地域に適用される条例や法を確認する必要がある分野です。
賃借人の権利保護に手厚いサンフランシスコ市
さて、カリフォルニア州の目安となる法律では、前回少し考えましたが、120平方フィート(11平米強)のリビング、70平方フィートのベッドルームがあれば、そこに、3人(2人ベッドルームで、1人はリビング)という考え方があります。そして、50平方フィート増す毎に1人を加えられる(または、ベッドルームが増えれば2人加えられる)ということになります。ですので、通常2ベッドルームであれば、5人までであれば問題なく増やせると考えられます。
ただ、このカリフォルニア州の法律はあくまでも「目安」であって強制力がそのままあるわけではありません。必ず、各郡の条例を確認する必要が出てくるのです。
たとえば、サンフランシスコ市は、賃借人の権利保護に手厚い郡です。契約書で人数制限が書かれていたとしても、人数が増えたことに対する賃料値上げを制限していますし、家族の人数が増えることによって不利益な対応をすることを禁じています。
このように、州の法律ではなく、アパートを借りる場合には、どの郡の条例が適用されるのかは、気にしておくと良いと思います。
書面で通知、返答を求める
今回質問されている方がどのカリフォルニア州の郡にお住まいなのか明らかではありませんが、まずは契約書を確認して、どのような人数制限が書かれているのか確認しましょう。
そして、次に、上述したカリフォルニア州の目安に合致しているのか確認したうえで、大家さんに通知をして、値上げなしで、家族と住みたいということを書面で出しましょう。もちろん、返答を求める一文はいれておきたいところです。
かりに、大家さんが不合理な値上げや承諾を拒否する場合には、カリフォルニア州の均等労働住居局(Department of Fair Labor and Housing)に相談してみるのも一つの考え方だと思います。また、郡によっては、居住権に関して無料で相談に乗ってくれる団体も多く存在します。サンフランシスコ郡で、私が若いときに所属していた弁護士会の相談窓口などもあります。
今回の質問に関して、トレンドとしては、家族が増えることで、契約書に値上げが許されると記載されていても、否定的ですので、簡単にマネージメントオフィスの言うことを聞くのではなく、手間はかかりますが、やり取りを続けることも一理あるかもしれませんね。
今回の質問は、各郡で違った結論になりかねないので、一般論として考えました。
ですので、少々歯切れが悪かったかもしれませんが、また質問があったら法律ノートまでおくっていただけると嬉しいです。アメリカはすっかり夏ですが、日本は梅雨で少し我慢が必要ですね。季節替わりですので、体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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