アメリカで弁護士なしの本人訴訟(4)_1197

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1197回 弁護士 鈴木淳司
Jan 27, 2020

 元NBAのスーパースターとその娘を乗せたヘリコプターが墜落して死亡してしまった、というニュースはかなりショックでした。NBAが直接高校生にリクルートをかけた、突出した選手でしたが、人格的にも優れていて、奢ることなく、練習場に困ったら高校のコートまで借りて技を磨いていたそうです。そして墜落の際も娘さんのバスケの試合に付き添っていたとか。ずいぶんお金も稼いだようですが、練習場などにお金を使って後進を育てることに情熱をかけていました。どこかの国のくだらないニュースになる成金野郎とは全然違う、心と情熱と努力と才能を持っていた優れた人を亡くしました。心からご冥福をお祈りします。

アメリカで弁護士なしの本人訴訟(4)_1197

 さて昨年から考えてきた「やっていたコンピュータ関係のビジネスを清算するために、中古ですが電子機器をまとめて他業者に売ったのですが(数万ドルのようです)、正常に稼働しないということで、紛争になっています。相手方他業者は、かなりの損害になったと主張に訴訟をしてくると言っています。払った額は戻すので現物を返してくれといっても、損害が発生しているので、それだけでは許さないといって感情的になっているようにも思います。やっていたビジネスは小規模でとても弁護士を頼むこともできないのですが、訴訟になった場合には、ネットなどでは本人だけでも訴訟もできる、ということですが、実際に訴訟を素人ができるものなのでしょうか。」という問題について、年をまたいでしまいましたが、続けて考えていきましょう。

情報開示(ディスカバリー)制度

 前回までで、訴訟を提起して、情報開示(ディスカバリー)をはじめる、というところまで考えました。

 実は、このディスカバリーというのは日本ではあまり活用されていないものであり、私も以前日本弁護士連合会の「自由と正義」という雑誌に記事を何度も書いたことがあります。

 日本では基本使われていなかったのです。アメリカの民事事件ではほぼお約束のように情報開示が行われます。

 情報開示については、私はかなり経験もあるので、書き出すと何ページあっても足りませんので、ここでは、本人訴訟をした場合にディスカバリーなんてできるのだろうか、という点を考えておきます。

ディスカバリーには複数の方法がある

 ディスカバリーには、いくつかパターンが法定されています。
質問に答えろ、書類を出せ、というのが基本です。

 ディスカバリーというのは、最終的に陪審員を並べて、その人達に白黒の判断をしてもらう事実審(トライアル)に向けて、対立する両者が手持ちの情報を出し合って、主張防御の強い点弱い点をあらかじめ知っておくことができる制度です。

 ポーカーや麻雀のように、手札を隠して戦うのではなく、予め、内容をお互いに開示して、それでも残った論点があればトライアルをしようというシステムの一環ということになります。

 日本人は特にこのディスカバリーに慣れていないので「手の内を見せてしまうと負ける」という感覚があるようですが、ディスカバリーで見せておかないと、その情報はトライアルでも使えない、なんてことにもなりかねないのです。

 ここで、今回の質問を見ると、相手方が損害賠償を訴えてきているとすると、その機械についての情報やら、売買当時のやり取りなどが相手方である原告側から請求されてくると思います。訴えられた質問者の方も、損害が一体どのように発生して、何を請求して、誰がそれを見ているのか、などの情報や書類がほしいと思います。そのやり取りをするのがディスカバリーなわけです。

専門家なしにディスカバリーはできるか

 難しそうですし、実際に訴訟をやると色々法律的にも難しい部分もあるのですが、現在裁判所では、様々なディスカバリーのフォームをオンラインで用意してくれています。
必要事項に記載をして、相手方に送れば、ディスカバリーになるのです。

 もちろん、質問等、具体的なことについては考えて記載しなければなりませんが、たとえば「契約不履行」とか「損害賠償」といったキーワードに紐づくフォームがあり、それを利用することも可能です。

 ただ、私が今まで見ていて、法律の実務を知らない人がディスカバリーをやっているのをみたことがありません。たとえ、フォームが用意されていても、事件全体のアドバイスを受けるということは考えられるかもしれません。

 次回もう一度考えますが、ディスカバリーを避けては、アメリカの民事訴訟は語れません。実際問題として95%のケースはディスカバリーが終わって、裁判前に解決するのです。

 前後して申し訳ないのですが、次回2020年の法改正について引き続き考えていきたいと思います。今回の質問は一旦お預けにさせていただければと思います。

 暖かい日が出てきましたが、ウイルスに注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。


▼DV-2020の当選後サポート、受付中!

https://jinken.com/win/

グリーンカード取得まで、とことんお手伝い。1年以上の長期にわたって、メールのやり取りは200,300,400以上が当たり前。

各種証明書の翻訳・面接その他のコンサルティング・実際のグリーンカード取得者の経験にもとづく専用QAページ・各国の警察証明取得・大使館等への問い合わせが、すべてセットになっている総合サービス

面接通知はどうやってくる?次に何をすべき?…日常と併行して手続きを進めるのは、本当に大変です。 気軽に相談できる専門家がいれば、心強いこと間違いなし!大きな不安を、ぐっと軽減します。 

*当選後手続きは、細やかなサポートを徹底するため、お断りする場合があります。 サポートをご希望の方は、まずはお気軽にお問い合わせを。(i@jinken.comもしくは各担当者アドレスまで)

▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付中

https://jinken.com/entry/

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい! Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。

応募期間は例年10月のおよそ1か月。

もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。