法律ノート 第1436回 弁護士 鈴木淳司
Sep 23, 2024
ドジャースの大谷選手の活躍は目を見張るばかりです。
もう日本人やアメリカ人といった括りでは成し遂げられない異次元のパフォーマンスがアメリカ人も魅了しています。
私の友人も生粋のサンフランシスコ出身の人たちがいますが、皆ドジャースは嫌いだけども大谷は文句なくスーパースターだと言っています。
現在ミシガンに住んでいるロサンゼルス出身の友人も、サンフランシスコジャイアンツに比べてドジャースがどんなに優れているかを私に詳細に説明してくれています。
とにかくアメリカでもこれ以上はいない第一級の活躍をされている大谷選手には皆が目を見張っています。
恵まれた体、精神力、何をとっても、このような選手は前にも後にも生まれないのではないでしょうか。
彼がアメリカの野球を変えてしまうかもしれませんね。
とにかくすごいの一言です。
帰国後に違法行為の疑いを指摘されたケース
さて、前回から考えてきた「米国駐在を終えて日本に帰国後、会社から違法行為の疑いを指摘された」というご相談を、今回も続けて考えていきたいと思います。
【ご相談内容の要約】
日本企業の駐在員としてアメリカでIT関係のマネージメントを担当していました。帰国後、会社から「アメリカ駐在中に違法な行為をしていた疑いがある」と伝えられました。身に覚えはありません。今後どのように対応すべきか悩んでいます。
企業が従業員の違法行為疑惑をどう判断するか
前回は、企業が従業員の違法行為疑惑を調査する際、調査自体の実施よりも「会社にとってのメリット・デメリット」を会社側弁護士に相談するのが一般的であることを考えました。
結局、会社にとってどのようなメリットがあるのか、その行為者をどのように咎めたいのか、会社の方針が如実に現れます。
私も今まで30年ほど会社側の立場で意見をしてきたこともありますし、被用者の立場でも意見をしてきたことがあります。
会社の立場から見ると、法務部門や人事部門の担当者は「どのような懲戒処分が必要か」「その処分が会社にもたらすメリット・デメリットは何か」という会社側の観点で判断します。
実際には会社目線といっても、大企業ほど法務部門が関与し、「会社の体面、つまりレピュテーション(評判)をどう守るか」「コンプライアンス違反への対応姿勢を社内外にどう示すか」という点に重きが置かれるように思います。
もちろんこれは当たり前です。
会社にしてみれば、何か違法な行為が行われている場合、看過するわけにはいきません。
私の経験では、違法行為が社内の横領や経費不正など内部完結する事案の場合、会社は社内で粛々と処理して終わることが多いと思います。
社外の第三者が関与する場合の企業対応
一方、大きな問題になりやすいのは顧客や取引先など社外の第三者が関与する事案であり、企業は従業員に対してより厳しい懲戒処分を下す傾向があります。
このように見てくると、企業の判断というのは、やはりその企業の色が深く出てきますし、その時の決定権を持っている人たちの考えに左右されると言うことが大きくなると思います。
また、その時の決定権を持つ人たちが会社として依頼する企業法務弁護士は、リスク回避を重視した保守的なアドバイスをする傾向があります。その結果、会社の企業価値やレピュテーション保護を優先し、早期に問題社員の解雇や懲戒解雇に踏み切るケースもあります。
違法行為の疑いをかけられた従業員の対応策
それでは従業員として違法なことを咎められたときに何かできる事はあるのでしょうか?
まず会社に自分の思っているままに伝えるべきでしょうか。
まず、違法行為の疑いを指摘されたら、以下の準備をしておくべきです:
・事実関係を時系列で整理する
・関連する証拠(メール、文書、記録等)を保存する
・自分の認識と会社の主張の相違点を明確にする
つまり、自分が思っていることを時系列にまとめ、説明しやすい形で整えておくのがいいと思います。
会社への情報提供で注意すべきこと
逆に会社は「すべての情報を開示せよ」と要求してくるでしょう。しかし、何をどこまで提供すべきかの判断は慎重に行う必要があります。
この段階で信頼のおける法律家に相談し、以下を明確にしておくべきでしょう:
・開示すべき情報の範囲
・従業員としての権利(黙秘権、弁護士同席権等)
・会社の調査手続きの適法性
違法なことをしていると咎められた場合には、会社側もネガティブな態度を持って厳しく対応してくるかもしれません。
安易な謝罪や自白は禁物
しかし、すぐには法律に違反したことを咎められていないのであれば、簡単に謝るべきではありません。
仮にすぐに自分のしたことが「悪い」ということを認めてしまえれば、会社としてはその供述により処分を下す事は何ら問題はありません。
駐在していた州の法律が適用される
アメリカ駐在中の行為については、原則としてその州の法律に基づいて判断されるべきです。日本帰国後だからといって、自動的に日本法が適用されるわけではありません。
特に重要なのは、カリフォルニア州やニューヨーク州など、州によって労働法や刑事法の解釈が大きく異なる点です。必ず駐在していた州の法律に詳しい弁護士に相談してから回答した方が良いと思います。
日本に戻ったからと言って、いきなり日本法が適用されるべきではないので、その点は注意して対応するべきです。
会社が顧問弁護士や外部法律事務所のアドバイスを受けているのであれば、従業員側も同様に弁護士を依頼し、対等な立場で交渉すべきです。法的サポートなしでは、会社主導で一方的に手続きが進み、会社側のペースで判断が正当化されてしまう危険があります。
今回の質問者の方も、ご自身の行為が違法ではないと確信されているのであれば、適用される法律(駐在していた州の法律)に基づいて、まずは自分の法的立場を明確にすべきだと思います。そのためには、米国法に精通した弁護士への早期相談が不可欠です。
次回続けてもう少し踏み込んで考えていきたいと思います。
この日曜日でオフィシャルな「秋」の到来です。
秋は食事も充実しますし、バーベキューなども良い季節になりますね。
野球シーズンは終わり、これからはフットボールの季節にもなります。
あと3ヶ月で今年も終わってしまいますが、充実した秋を楽しみながらまた一週間頑張って過ごしていきましょうね。
関連する米国法律リソース
本記事で扱った内容に関連する米国政府の公式情報源:
連邦政府機関
- 米国労働省(Department of Labor): https://www.dol.gov/
従業員の権利、賃金、労働時間等に関する包括的情報 - 雇用機会均等委員会(EEOC): https://www.eeoc.gov/
職場での差別、ハラスメント、報復的解雇に関する情報
主要州政府機関
- カリフォルニア州労働委員会: https://www.dir.ca.gov/dlse/
カリフォルニア州の労働法と従業員の権利 - ニューヨーク州労働局: https://dol.ny.gov/
ニューヨーク州の雇用関連法規と労働者保護
法律情報データベース
- Cornell Law School – Legal Information Institute: https://www.law.cornell.edu/
米国連邦法および州法の条文検索
※ 上記リンクは執筆時点(2024年9月)のものです。最新情報は各サイトで直接ご確認ください。
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2024年9月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
米国駐在中の違法行為疑惑や企業調査に関する対応は、個々の状況、適用される州法、企業の内部規則によって大きく異なります。本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず米国法に精通した専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。
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