法律ノート 第1494回 弁護士 鈴木淳司
Oct 11, 2025
秋が本格的に訪れてきました。
皆さんのお住いの地域でも少し暑さは和らいできたのでしょうか。
しかし、今年は暑い日がありました。
日本でも全国的にサウナ状態でしたが、アメリカでも異常な暑さでした。
そしてすぐに冬になってしまうと、本当に秋が短くなってしまいますよね。
短くてもとにかく秋を楽しもうと、きのこや秋の魚を買って食べていますが、皆さんはどのような食材で秋を感じていらっしゃるのでしょうか。
ぜひ教えて下さい。
さて、前回から考えてきた、「カリフォルニアのIT企業に勤めています。最近、会社内でリストラが行われるという噂があり、戦々恐々としている状況です。退職パッケージが用意されるという話もありますが、自衛のために失業手当を受けられるか、どの程度の額を受けられるか知りたいと思います。州によっても違うと聞いているので、カリフォルニアにおける失業保険制度の枠組みをわかりやすく教えていただけないでしょうか」という質問を今回続けて考えていきたいと思います。
前回、失業手当というのは一時的な審査で継続的に受給できるわけではなく、継続的に仕事をみつける努力など、受給するかわりに、いろいろな義務を負うことになる、ということを考えました。
受給審査で不適格となる場合
さて今回はまず失業手当の審査について不適格とされてしまう場合を考えていきましょう。
失業手当の受給審査は、制度の不正利用を防ぎ、真に必要とする方に給付が届くよう機能する重要な審査プロセスです。
主な不適格理由は2つあります。第一に、「正当な理由(good cause)」なく自発的に離職した場合。第二に、「不正行為(misconduct)」を理由に解雇された場合です。EDD(Employment Development Department)がこれらに該当すると判断すると、受給資格が認められません。
「不正行為」の基準は、失業保険制度の基本原則である「自己の責めに帰すべき事由」の有無、つまり労働者に「過失」があったかどうかです。
この基準により、個人が不十分な理由で安易に離職し失業手当を受給することを防いでいるわけです。
加えて、受給を得る目的で意図的に虚偽の申告を行うことや、「正当な理由」なくして紹介された「適切な仕事」を拒否することも、不適格判断の対象となります。
ですので、申請のときには、自分が原因で失職したわけではないことをちゃんと記載しなければなりません。
雇用主側には離職の立証責任がある
失業手当を申請した場合、明らかな不適格理由がない限り、申請者は原則として受給資格があると推定されます。
すなわち、法律上「個人は不正行為以外の理由で解雇され、かつ、正当な理由なく自発的に離職したものではない」と推定されるのです。
一方、雇用主が異議を唱える場合は、申請者が「自己都合」で離職したことを証明する書面をEDDに提出する必要があります。
申請者である従業員は離職状況を証明する雇用記録へのアクセスが困難です。逆に、雇用主は通常これらの記録を保持しています。このため、カリフォルニア州の失業保険制度では立証責任を雇用主側に課しているのです。
ですので、申請書は受け付けられるが、一方で、申請に対して雇用主側が反証してくるということは多々あります。
自発的離職でも受給が認められる場合
次に、失業手当の法律においては、自発的な離職であっても申請が適格であると認められる例外規定を定めています。
具体的には、以下の場合に「正当な理由」が認められます。
本人または近親者をドメスティックバイオレンスから守るための離職、配偶者またはドメスティックパートナーの転居により通勤が困難になった場合の離職、労働組合との団体交渉協約に基づく強制的定年退職による離職などです。
失業手当を受給するには申請と義務を果たすこと
前回、受給を継続的に受けるための様々な義務を考えましたが、今回は、申請そのものが不適格になる可能性を考えました。
復習すると、カリフォルニア州の失業保険制度は、受給資格を得るための初期要件、資格を維持するための継続的な週ごとのコンプライアンス、など受給者の義務は多くあります。
そして、申請者は、「自己の責めに帰すべき事由なく」失業したことを証明し、就労が可能かつ求職中であり続け、積極的に雇用を探し、そして適切な仕事が提供された際にはそれを受け入れるという、一連の義務を果たすことが求められるわけです。
失業手当の具体的な受給額
それから、どの程度の額をもらえるか、という点ですが、カリフォルニア州の失業保険で週に受け取れる金額は、最低40ドルから最高450ドルです。
金額は、過去の収入に基づいて決まります。具体的には、過去12ヶ月間(基準期間)で最も収入が多かった四半期の賃金を基に計算されます。
そのため、基準期間中の収入が高いほど、受給額も高くなります。
また、受給中にパートタイムで働くと、その収入に応じて減額されることになります。
正確な受給額は、EDDのオンライン計算機(UI Calculator)で試算することも可能です。
ここまでで、だいたい失業手当の全体像を考えてきました。
さらに細かく質問がある方は、今回の質問者の方も含め、またぜひ法律ノートに質問していただければと思います。
もう、街はハロウィンのイベント色がどこでも濃くなってきましたね。
これから、サンクスギビング、年末ホリデーシーズンと、目白押しのシーズンですが、残りの2025年を楽しんで過ごしていきましょう。
また来週まで、また一週間体調に気をつけながらがんばっていきましょうね。
関連する米国法律リソース
- カリフォルニア州雇用開発局(EDD)公式サイト – 失業保険の申請と管理
- 失業手当計算機 – 受給額の試算ツール
- How Unemployment Insurance Benefits Are Computed (PDF) – 受給額計算方法の詳細
- Misconduct MC 5 – EDD – 不正行為に関する公式ガイダンス
- Voluntary Quit VQ 135 – EDD – 自発的離職に関する公式ガイダンス
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2025年10月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
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