法律ノート 第1390回 弁護士 鈴木淳司
Oct 29, 2023
もう、ハロウィンの季節ですね。
このイベントを境にしてアメリカは、一気にホリデームードが高まっていきます。
各自の仕事も遅くなっていく季節ではあります。
しかし、ゴルフに行っても紅葉を見ながら半袖短パンでも良い日がある一方で、夜は冬のように冷え込むので、もう「秋」というのは、一瞬で過ぎ去っていくような気がします。
つい最近までそうめんを食べていたのに、一気に鍋です。
服飾関係の方と話していると、以前は一年間で六つの季節を想定した服をつくっていたようですが、今ではそれもどんどん減っているらしいです。
もう暖房の季節ですね。
皆さんはこの季節感にちゃんと対応されていますか?
アメリカ_会社売買(2)_1390
さて、前々回から考えてきて、今回二回目になる「私はアメリカで一時期育ちましたが、現在仕事の関係で日本在住です。叔父がカリフォルニアで会社を経営していて、その会社を継がないかと誘いを受けています。概ね家族も前向きなのですが、社長として働くだけではなく、会社(株)も引き取ってほしいと言われています。会社を「買う」ということはしたことがありませんし、まだどのように進めるかなど未知のままです。会社を買うことのメリット・デメリットなどを教えていただけないでしょうか」という質問を考えていきたいと思います。
会社の買い方、主に二通り
よくM&Aなどといいますが、色々な方法論はあります。
ざっくりいうと、会社を「買う」というのは、大きく分けて二つの種類が考えられます。
一つは、株式会社そのものを一切含めて買う、という方法と、会社にある財産を買うという方法が考えられます。
会社そのもの一切を買う
株式会社を買うということになれば、それは包括的な売買になりますので、基本的には株式会社についてくる一切を買うことになりますから、負債も人材もすべて移行することになりますよね。
会社の財産を買う事業譲渡
もう一つの考え方は、株式会社に存在している様々な財産を、会社という母体と切り離して売買する事業譲渡と呼ばれる方法で、売買するにしても、全体も売れますし、切り売りをして売るということもできるわけです。
たとえば顧客や取引先などのいわゆる「のれん」もありますし(近年ではとくに重要です)、ノウハウなども考えられます。
また、会社にいる人材も重要ですし、様々な財産が考えられます。
これが大きく分けて二つの考え方です。
もちろん、レゴのように自由にバラしたり組み立てたりすることができますので、株式会社を分社化するなどして、その複数になった会社の一部を売るなどという手法も取り入れられるので、方法論は色々あります。
ただ、基本的な考え方は法人そのものの売買、と法人に存在する財産の売買という二つの大きな切り分けがあるということは理解しておいてください。
ここでメリット・デメリットを先に考えておくと、ここは難しく具体的なケース毎に判断するしかありません。
まずは、価値に見合った取引であること
とにかく最初は価値に見合った取引であることは重要です。
そのためには後述するように、第三者機関に頼んで客観的な価値を見定めることです。
法人自体の価値、財産の価値など検討が必要になります。
税金に関するリスクをはかる
法人を買う場合と法人にある財産を買う場合に決定的にアメリカで違うのは、税金に関するリスクです。
これは不変ですので覚えておかれると良いと思います。
法人を買った場合、法人のオーナーは買主になるわけですが、売主が残していった税金は、そのまま買主に移行され、そのまま買主の責任になってしまいます。
事業の財産を買うだけではこの税金の責任が自動的に買主に転嫁されることはないわけですが、法人を買うとなると、その法人がかりに今現在明るみにでていない税金に関する過去の責任が生じていた場合でも、買主がその責任を負わなくてはならなくなります。
ここは法人を買うとなるとリスクになるところであります。
売買契約の通りになるとは限らない
ではかりに、その法人を買った人があとで税金支払の責任を追求された場合には売主が責任を負う、という条項が会社の売買契約に記載されていたとしましょう。
この条項があるから、安心じゃないか、ということは言えません。
法人の買主は、政府に対して絶対に支払いは行わなければなりませんが、一方で、たとえばこの売主が責任を負うと契約書に書いてあったとしても、売主が破産していたとか、売主にお金がないとか、支払を拒んで訴訟などになる場合には、買主は泣きを見る可能性も十分にあるわけです。
したがって法人を買うという場合には、かなりその企業を調査することが重要になってくるのです。
ここから次回考えていきましょう。
本当に夜は冷え込む日が出てきました。
寒暖差が激しいのでしっかりと対策をしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
ハロウィンは楽しみましょう。
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