戦後アメリカへ渡った日本人_1379

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1379回 弁護士 鈴木淳司
Aug 14, 2023

ウクライナとロシアの戦争は終わるところが知れず、民間人や民間の施設も犠牲になっていることに心が痛いです。
日本が戦争に負けてポツダム宣言を受諾し、昭和天皇が玉音放送をなさってから、もうすぐ78年が経とうとしています。
もちろん、私は「戦争を知らない子どもたち」の一人であります。
昭和20年8月15日に戦争は終わったと言っても、様々なところで問題は山積されていました。

戦後アメリカへ渡った日本人_1379

今回は皆さんからいただいている質問にお答えするのを休ませていただき、一つ思い出話を考えさせてください。

今から20年ほど前でしょうか。
私は相続の相談のため、車でサンフランシスコから南下していました。
今では私の所属する事務所の若手が積極的にやってくれていますが、私は弁護士になってから、体の不自由な方、お年寄りの方には、ご自宅に私から出向いて相談を受けるということを続けています。
出張に特別な料金をいただかないのは今でも変えていません。

その日、私は老人ホームに出向きました。
関西出身の日本人女性で、戦後まもなくアメリカ人男性と結婚し、アメリカに住んでいる。
子供は養子しかいない。
夫は先立ち、子供とも疎遠になっている。
日本にも面識がある家族はほぼいない、という状況でした。

ご友人数名や老人ホームの方々に支えられて生活していらっしゃいました。
電話でお話したときに、日本語に飢えているということをおっしゃっていたので、私が読み終えた日本語の本や雑誌、私が法律ノートを連載していた北米毎日新聞を持っていったのですが、この方はすでに北米毎日新聞を購読されており、新聞を持っていったのは空振ったのを覚えています。

遺言やトラストを作成したい、という依頼を受けていましたが、単に事務的作業だけではなく、その方の人生についてお話を聞くことも私は好きです。
百人いれば、百人が師なのです。
その日も結局、昼から夕方までお邪魔することになりました。

太平洋戦争は、この女性の家族をバラバラにさせました。
大空襲があり、家族のほとんどは死亡、この女性は大怪我を負って病院に運ばれます。
命は取り留めたのです。
片目、片耳、そして腕の機能が制限される大怪我で入院していたものの、診察した医師は涙を流し、「今、病院には薬もなく手術の道具も十分じゃないのだ。」と言い、そして「君が助かる道は、アメリカの軍人さんと結婚をして、軍病院に入院することだ。」と続けたそうです。
結婚の経緯はよく覚えていませんが、この女性は軍人と結婚し、軍病院でずいぶん良くなりましたが、体の機能が100%まで戻ることはなかったとのことでした。

それから、彼女はアメリカに夫と渡り、生活をはじめます。
ところが、空襲に遭ったことが理由で、子供が産めない状況だということがわかります。
そこで養子をとり、育ててきたということでした。

アメリカでは、それなりの暮らしをされていたようですが、やはり自分が失った家族などのことがいつも気になっていたそうです。
夫が他界し、日本に戻ることも考えたそうですが、同年代の親戚はほとんどおらず、安心して身を寄せられるところがないことが一つ、また体調について、長時間のフライトなどに、医師が良い顔をしなかったということが一つ、アメリカにとどまる理由としてあったそうです。養子の方とも折り合いが悪く、本人は老人ホームに入っていたのです。

一通りお話をお伺いして、その場で必要な情報をいただいたので、書類を作成し、もう一度お伺いすることを告げて、その日はお暇しました。
自分の車に戻り、運転席に座った途端に、今聞いた話が頭に蘇ってきました。
その方の人生が戦争によってここまで左右されてきたこと、その人はそれまでは家族と平和に暮らしていたこと、今は身寄りがないこと、日本に戻りたくても戻れないこと、など聞いた話がぐるぐる頭のなかで回り、戦争というのは、こうやって多くのところで今も負の影響を残していることに愕然としました。
よく、終戦記念日近くになると「戦争花嫁は今」、みたいな記事を目にしますし、明るい話題も多いのかも知れませんが、このように本来は自分の意思ではなく渡米された方々もいたのです。

帰りの運転をしながら少し落ち着くと、今度は涙が出てとまらなくなりました。
クライアントの前では泣きませんが、一人で泣くのは良いのです。
90年代には、ご老人から色々な戦争で人生が翻弄をされる話を聞きました。
最近では少なくなったかもしれません。
当時、私が聞いた話の中にはシベリアに抑留されていたとか、満州で逃げたとか、アメリカでインターンメントに入れられた、といった話を聞くことがたくさんありました。
その方たちがいたからこそ「戦争を知らない子どもたち」である我々がいることを忘れてはいけない、とつくづく思います。

次回は、皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。

少し暑さは和らいでいるエリアもありますが、これから火事の季節になります。
ハワイ、マウイ島で被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
また一週間暑さに負けずにがんばっていきましょうね。

■関連記事

米_子どもなしの遺産相続(1)_1338

親権~アメリカと日本~_1376

■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program

アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者が生まれています。

応募サポート希望の方はこちらから

日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。

■グリーンカードDV当選後サポート

グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!

グリーンカード当選後サポートはこちらから

充実した当選後サポートで、安心してグリーンカード取得まで進めましょう。家族・仕事・結婚・離婚・海外在住・介護に闘病と場面は様々ですが、お客様のニーズに柔軟にお応えしています。

■関連サイト

カリフォルニアで起業をお考えですか?
まずは、州のページで登録事項を確認

ニューヨークで起業をお考えですか?
まずは、州のページで登録事項を確認


作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。