カリフォルニア州の新法-2023年_1347

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1347回 弁護士 鈴木淳司
Jan 3, 2023

法律ノート読者の皆さんあけましておめでとうございます。
2023年が皆さんにとって幸多き年でありますよう心から祈っております。
健康に留意して平穏無事な年を送っていきましょう。
私は陪審裁判が終わったらすぐに遠方にある刑務所に向かって、以前弁護したクライアントの移送をしていました。
忙しい年末でしたが、やっと落ち着きつつあります。
皆さんの年末年始はいかがでしたか。

カリフォルニア州の新法-2023年_1347

さて、今回は、2023年最初の法律ノートということで、2023年1月1日に発効したカリフォルニア州の新しい法律を見ていきましょう。

私が配布を受けたのは200ページ近くあり、知事がサインしたものは997もの新しい法律がありました。
一応、すべてに目を通すのですが、些末な改正も多いですし、あまり興味がないものも多いものです。
ここでは、皆さんにも影響しそうな法改正をいくつかみていきたいと思います。

刑事事件関連-やや専門的

個人的に私の興味を引いたのは、刑事事件のトライアルで検察側が、ラップの歌詞やミュージックビデオを裁判所の判断なしに使うことを禁止する法律ができました。
トライアルでこのような歌詞や音楽を使うのは、デモンストレーティブエビデンスとか、ビジュアルエイドなどと呼ばれるのですが、陪審員の見ていない法廷外でのバトルで、色々紛争化したのでしょうね。

雇用関連

さて、雇用について3つほど新法を取り上げましょう。

まず、カリフォルニア州の最低賃金が15ドル50セントになります。
インフレを考慮した増加なのですが、2016年に制定された法律に基づきます。
 
次に、雇用に関することですが、15人以上の被用者がいる企業が対象です。
ジョブポスティングすなわち募集広告をする場合に、給与の上限と下限を明確に示していなければなりません。

第3点ですが、家族の不幸に関して少なくとも5日間の休暇が与えられるように休暇が拡充されました。
「家族」には、配偶者、子、親、兄弟、祖父母、孫、ドメスティックパートナー、義理の父母が含まれます。

法律関連

次のトピックは刑事的な法律関連です。
4つほど取り上げましょう。
 
まず、民事なのですが、刑事的に問題ある行為に対する民事罰が制定されました。
デジタルの方法で、わいせつな性的描写の写真やビデオを送りつけられた場合(承諾がない場合)には、「サイバーフラッシング」という類型の訴訟を提起することができ、最高で30,000ドルの民事罰を求められることになりました。
未成年者に対してわいせつな画像等を送付するとその親が子の親権者として、損害として最大で30,000ドルを訴求することができるようになったのです。
個人間の問題でも、業者の行為でも適用されます。
訴訟が増えるのではないかと思います。

 次に、2023年には、より病弱であったり、死に近い受刑者を早期に刑務所から出所させる基準を緩和することになりました。
ある統計によると、2015年から2021年の間に304件の申請がありましたが、53件のみ認められました。
賛否はあるところですが、コロナのときに、早期にリリースするような風潮があり、今回の緩和につながったと思われます。
ただし、簡単には認められる申請ではないことは変わりません。

 第3点目ですが、コロナがある程度落ち着いてきてから、公で行われる討論会などは、かなり久しぶりに声をあげられるからか、どこもかしこも加熱して紛争化することが多くなりました。
特に政府に対する不満が爆発し、公的なフォーラムがぐちゃぐちゃになる事例が多くなりました。
しかし、一方で表現の自由はアメリカではとても重要に思われているので、どのように紛争化する会議を進行させていくのか、カリフォルニアだけではなくあちこちで問題になっていました。
そこで、議長となっている人が、あまりにも進行を阻害する行為がある場合には、一旦イエローカードを与えて改善がない場合にはレッドカードで退場をさせられるということが制定されました。

 4つ目ですが、J-walk、いわゆる横断歩道でないところを横切る行為が犯罪行為ではなくなりました。
もちろん、交通に危険が生じる場合には犯罪になり得ますが、一般的な道路の横断は1月1日から罰せられなくなります。
これは、ある議員が提案して議会を通ったのですが、統計的に人種差別的な運用がされているということが引き金になったということです。

ピンク・タックス

 ここで、「ピンク・タックス」について考えましょう。

皆さんのなかでもピンク・タックスという単語を聞かれたことがない方も多いのではないでしょうかね。
美容関係の商品などで、男性ものと女性ものがわけて売られている場合がありますが、女性ものが一般的に高く値段設定がされていることが多いようです。
この女性ものを高くすることを「ピンク・タックス」と呼ばれているものです。
店が設定している場合もあるでしょうし、製造元や再販業者が設定している場合もあるでしょう。
女性ものの方が一般的に人気なので値段を高くするということです。

この「ピンク・タックス」が今回禁止になりました。
「ほぼ類似している(substantially similar)」商品については、男女の別なく同程度の価格にしなければならないとされました。
しかし、この類似というのは簡単には言えないようにも思います。

たとえば、リップクリームなどは似ている商品だとは言えそうですが、女性の髪と男性の髪につかう商品がどう「類似」するのか、など簡単には言えないと思います。
私はあまり実効性がない法律ではないのではないかと思っています。ひげそり用品とかも、用途も違うのではないかと。

新たなカリフォルニア州の祝日

 最後になりますが、カリフォルニア州で新たに制定された祝日をご紹介しょう。

2023年から州の祝日になります。
連邦の祝日とシンクロしないので、休みとなったり、ならなかったりするのですが、裁判所はこれらの祝日は休みとなりますので、私の所属する事務所は休みにしています。

1つ目は、Juneteenthと呼ばれる日で6月19日が祝日になりました。
アメリカでの奴隷解放を祝う日です。

次に、旧正月です。
中国系などアジア系の移民の意見が取り入れられたのでしょう。
1月終わりから、旧月15日までの間で新月になる日です。
それから、もう一つ第一次世界大戦で起こったアルメニア人虐殺追悼日があり、4月24日になります。
色々な民族が生きるカリフォルニアらしい祝日の制定ですね。
覚えきれるかわかりませんが、休みになるのは嬉しいことではありますね。

 色々法律は変わっていくものですが、弁護士は与えられた法律をうまく運用していくという役割です。
毎年アンテナを張ってどのように一年なるのか考えるのは楽しいものです。
来年はどのような法律がでてくるのでしょうか、議会の議論を注視していきたいと思います。

 それでは、また2023年、変わらず法律ノートを宜しくお願いいたします。
皆さんからの質問もお待ちしております。
また来週まで、一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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