法律ノート 第1300回 弁護士 鈴木淳司
February 5, 2022
将棋の羽生善治永世名人が29年間守ってきたトップ棋士の集まる順位戦A級からB1級に陥落しました。
一方で、まだ10代の藤井聡太竜王が入れ替わり、B1級からA級に上がる見込みです。
日本が誇る伝統芸能も世代交代です。
「天才」と呼ばれる人たちでも年齢で能力が変化するのでしょうかね。
凡人にはわからない世界ではありますが、私は将棋ファンとして、まだまだ羽生永世名人にもがんばってA級に返り咲いてほしいと心から期待しています。
皆さんはお元気にされていますか。
さて、今回から皆さんからまた頂いている質問を皆さんと一緒に考えていきましょう。
いただいている質問をまとめると「カリフォルニア州に家族で永住しています。日本の不動産を相続することになりました。アメリカですでに20年ほど前にトラスト(信託)を作成していることから、このトラストに日本の不動産を組み込むことはできるのでしょうか」という質問です。
信託とリビングトラスト
まず今回の質問にお答えする前提として、何度も法律ノートで取り上げていますが、信託の性質を考えていきましょう。
信託といいますが、今回質問されている方が作成されているのは、リビング・トラストというものだと思います。
現物を見ているわけではないですが、個人が相続対策をする場合に作成するものを一般的にアメリカではリビング・トラストと呼ぶわけです。
そして、リビング・トラストといってもいろいろな種類が考えられますが、一般的な内容の信託だと仮定して以下考えたいと思います。
リビングトラストとしての財産
リビング・トラストというのは、生きているうちに自分の財産を信託(たとえると、会社を設立し、自分が100%株主になり代表取締役になるというイメージ)財産とします。
会社に財産を預けるイメージです。
会社と同様に自分が死去しても信託は消えません。
信託は、皆さんが死亡したときにも財産を管理していますが、信託に記載されている方法目的などに沿って、財産を分配する役割を負います。
簡単にいうと、死後にも財産を管理分配してくれる会社に財産を預けるというイメージでしょうか。
ですので、今回質問されている方も、自分の死後を想定して、自分の財産をトラストに組み込んでいるのでしょう。
トラストに組み込める財産範囲
カリフォルニア州で信託を作成する場合には基本的にカリフォルニア州内にある不動産を組み込むことが前提になっています。
ですので、登記においても、不動産は「トラスト名義」というのが基本的に可能ということになります。
また、他州においても、アメリカ国内では基本的にトラスト名義というのを許していますので、カリフォルニア州でトラストを作成しておけば、アメリカ国内の財産をカリフォルニア州のトラスト名義にすることは可能です。
信託というのは、80年代から個人の財産を管理、分配するツールとして使われてきているのですが、もともとの概念としてはアメリカ建国当時においても英国から導入されて存在しています。
ですので、アメリカ国内ではどこの州の信託でも基本的に相互に認められています。
トラストの作り方-レコーダーズオフィス
不動産をトラストに組み込むためには、まずトラストの設定契約というのをつくる(基本的には、トラストを設定する人が一人で契約をつくるというイメージです。)のですが、そのなかに、「○○不動産をこのトラストに編入する」という内容を記述します。
そして、その設定契約に基づいて、不動産登記を個人の所有から、トラストの所有に変更するのです。
登記の変更は、その不動産が所在する場所を管轄するレコーダーズ・オフィス(Recorder’s Office)というところで行います。
登記所ですね。
登記は個人名から、トラスト名義という形に変更して記載することになるわけですね。
このように考えると、各郡のレコーダーでトラスト登記ができるかどうかが今回の質問にお答えするカギになりますね。
今まで考えた内容を踏まえると、アメリカ国内では、トラストというのは一般的なので、トラスト名義での不動産登記は可能ということになります。
米国外の財産の扱い
では、日本にある不動産はどのように考えておけばよいのでしょうか。
ここから次回考えていきたいと思います。
サンフランシスコ49ersはプレーオフで負けてしまって、悔しい思いをしました。
もうすぐスーパーボールですね。
冬から春へのアメリカの大イベントです。
どちらのチームを応援するかはまだ決めていませんが、皆さんはいかがでしょうか。
また、一週間運動も怠らずにまたがんばっていきましょう。
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