電子決済の返金は?アメリカ事情(1)_1258

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1258回 弁護士 鈴木淳司
April 11, 2021

 アメリカではずいぶんコロナワクチンの接種が増えてきました。
私の事務所の比較的若い人たちも接種できるようになりました。
もちろん、どの程度有効なのか誰もわかりませんが、今後、劇的にコロナウイルスの罹患者数が減ることを願います。
日本ではワクチンの到着が遅れているようですが、一刻もはやく皆さんがワクチンを打てることを願っています。

電子決済の返金は?アメリカ事情

さて、今回から皆さんから頂いている新たな質問を考えていきたいと思います。

いただいている質問をまとめると「コロナ禍で、ビデオ会話を利用してダイエットプログラムに申し込みました。3ヶ月のプログラムで最初にクレジットカードで支払いをしました。そして、1ヶ月ほどやっても、効果がなく退会を申し出ました。私が申し込んだときには、いつでも解約が可能であると書いてありました。ところが、何度メールでやりとりをしても、退会は自由だが返金はできないと言われました。そして、あとになって確認すると、ウェブサイトの記述が変更されていて解約についての記述がなくなっていることに気づきました。このような場合、どのように返金を求めていけばよいのでしょうか」というものです。

加速するウェブビジネスと金銭トラブル

 コロナ禍で、ウェブ経由によるビジネスはかなりメジャーになってきましたが、今回の質問のように今までは直接人と対面して行うサービス業もオンラインで行うということも珍しくありません。
運動だけではなく、楽器のレッスン、セラピー、ヘルスケア関連などもオンラインでサービスを提供することがかなり増えました。

このような状況のなかで、もちろん金銭トラブルも発生しているようです。

運営会社がしっかりしているところであれば、もともと規約もしっかりできていることが多いでしょう。
私も、このような運営会社の規約に目を通す仕事も多くあります。

相手の特定が困難な個人営業

一方で、個人営業的なサービス提供者がいる場合には、金銭のやり取りも個人間の電子決済ということも多いでしょう。

電子決済は現金決済とほぼ同等の感覚ですから、いったん相手方の支払いが完了してしまうと、その金銭を取り戻すことは難しいのが現実です。
ですので、支払いが完了している場合には、相手方が自発的にお金を戻すことが必要になります。

まずは、今回質問されている方がすでに行動されているように、サービス提供者に対して返金を求めていくことになります。

ところが、個人事業主のようなサービス提供者は、なかなか真摯な対応をしてくれません。
訴訟を提起するとしても、相手方が本当に誰なのか、住所はどこなのか、わかりにくいこともあります。

もちろん、私もこの手の事件で弁護士の応援が必要な深刻なケースでは、相手方を割り出しますし、今のネット社会でも十中八九割り出しは成功します。
しかし、法的な手段を取らないでなんとか、お金を取り戻そうとしても、個人ではなかなか難しく諦めるか、泣き寝入りをするといった場合が少なくないと思います。
また、支払った金額と、取り戻そうとする労力を天秤にかけると割にあわないということもあるのかもしれません。

連邦政府や州の窓口を利用

このような事例では、すぐに結果はでないかもしれませんが、州や連邦の政府に問題をレポートする方法があります。

たとえば、カリフォルニア州においては、消費者局があり、オンラインフォームも用意されています。
https://www.dca.ca.gov/webapps/gencomplaint.php

連邦政府でも、消費者のためのクレームフォームを用意しています。
https://consumercomplaints.fcc.gov/hc/en-us/articles/115002206106-Internet-Complaints

このような政府機関に対するクレームの届け出はすぐには結果はでないかもしれませんので、あまり期待しないほうが良いかもしれませんが、クレームの数が増えれば、なにか大きく動くこともありえます。

大手プラットフォームに申し立て

次に、たとえばサービス提供者が、大手のプラットフォームを使っている場合には、そのプラットフォーム、たとえばYoutubeなどに申し立てをしてみることもありえます。

これらの申立に対する対応は十分ではない可能性がありますが、やるべきではあると思います。
こういったプラットフォームは利益を得る方向でのビジネスは積極的ですが、法的問題の対応は後回しという倫理的な欠如は現状で恒常的ではあります。

このように直接的ではないですが、返金に対応がない場合には取れる対策があると思います。
ただ、どの程度の実効性があるのかは直接的には判断できません。

次回は、クレジットカード会社を通した対応、訴訟に関する対応を考えていきたいと思います。

もう、八十八夜が近いのではないでしょうか。
まだ春ですから、春を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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