法律ノート 第1108回 弁護士 鈴木淳司
May 8, 2018
週末は良い天気でしたね。私は、今は弁護士、元インターンの結婚式に出席するために南カリフォルニアにいました。暑いくらいでしたが青空の見える結婚式場で、本当に「晴れの舞台」に立つ新婚夫婦を見るのはとても気持ちが良いものでした。全体的にとても心が温まる素敵な会でした。
しかし、私は焦りました。実は、スピーチを頼まれていたのですが、直前まで英語で考えていました。しかし、出席者はなんと全員日本人。酒気帯びの状態で、その場で日本語に修正しつつ、内容を付け加えるなど、法廷にいるよりもスリル感を味わいました。皆さんはどのように週末を過ごされたでしょうか。
勤務態度の悪い従業員への対応(2) _1108
さて、前回から考えてきた「日系企業のアメリカ支社で社長として赴任している者です。最近、当社の人事担当に、素行が不自然な従業員がいるということを、他の従業員を通して情報が入りました。情報を集めていると、どうも当社の仕事以外にも仕事を掛け持ちしていることがわかりました。他の仕事をしているため、日中集中できないこともある様子です。本人に問いただすと、何も言わず数日無断欠勤をしました。その後また出社してきたので、ミーティングを持ちたいと人事担当が告げたところ、弁護士同席でないと嫌だと拒否されました。こういった場合、どのように対応するのが会社側としては妥当なのでしょうか。」という質問を続けて考えていきたいと思います。
就業規則を練り直す
前回は、兼業は禁止されていない限り許されている、というところまで考えました。ここで、今回質問があるように、「当社の仕事」に兼業が影響していると思われる場合はどのように考えたら良いのでしょうか。会社側としては、就業中に集中せずに生産性が落ちるのは良くないことですよね。
こういった場合には、就業規則の練り直しが必要です。就業規則が存在しなければ、作成をすることも必要かもしれません。就業規則において、業務内容以外の私的な電話、メール、ウェブ閲覧など就業時間中は禁止することを義務付けることは法律的に許されています。したがって、そのような仕事にかかわらないインターネット使用を制限することで、就労の生産性は確保できるかもしれません。他にも、色々な方法論はありますが、職種によっても異なりますし、就労の内容によっても異なってきます。
ノルマを課して生産性を確保
禁止事項をつくるだけではなく、別の面からの対応も可能かもしれません。生産性をちゃんと確保して欲しいと思えば、就労の内容によって、いついつまでに、何を終わらせるのか、という時的な制限と結果の期待を明確にしておくと、会社側の心配は軽減されるかもしれませんね。いわゆるノルマを課すということでしょうか。
面談に弁護士を同席させる権利があるか
次に、今回質問にある弁護士の同席について考えていきたいと思います。今回は、会社側と無断欠勤をした人との面談において、この労働者が弁護士を伴いたいと言ってきているようです。まずこういった場合に、労働者側として、権利があるのかどうかを考えたいと思います。
弁護士というのは、依頼者を「代理」する権利があります。弁護士の代理というのはその人に成り代わって法律業務を行うことを言います。そうすると、法廷に弁護士を伴ったり、法的な内容が関わる交渉などには弁護士が同伴することは一般的によくあるわけです。訴訟になれば弁護士が代理として訴訟を遂行するわけですし、契約の締結であれば、その契約書の整備を兼ねて弁護士が交渉などもしていきます。
ですので、一般論ですが、「法律的な紛争」がでてくると考えられる場合全般に弁護士が同伴したり、参加することはあります。ゴッドファーザーの映画を観ていると、いつも弁護士が出てきていましたが、あればある意味法律的な紛争を予定しているのでしょうか。
弁護士の守秘義務
もう一つ、弁護士が参加する意味は、弁護士には守秘義務というものがあります。クライアントとの交信等はすべて強制的に開示させられないという強力な義務があります。しかし、今回のように、労使面談で弁護士が出てくれば、クライアントだけでなく会社側も同席するシチュエーションですから、守秘義務というのは今回は問題にならなそうです。
ここから次回続けていきたいと思います。天気が良いので、外出で気分転換しながら、また一週間がんばっていきましょうね。
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