法律ノート 第1059回 弁護士 鈴木淳司
May 28, 2017
北朝鮮がミサイルを頻繁に発射していますが、もう実際に被害がでる可能性も出てきました。なんでも、低空で飛ぶミサイルだとなかなか撃ち落とせないという現実もあるようです。もちろん、日本政府は抗議を繰り返していますが、実際に対応は可能なのでしょうか。なんでも、ある詳しい人と飲んでいて憂慮を伝えると「日本は、アメリカ任せのところがあるんだよね」という話をしていました。本当に心配になってきます。
術後の経過が悪い。医療機関の法的責任を追及したい[3]
さて、前二回考えてきた、「私の配偶者がある病院で腹部の手術を受けました。手術のあと、あまり回復もせず、再度手術をしなくてはならない状況が発生しています。医療機関に対して、不信感を抱いています。もちろん、最初の手術の前に、色々説明を受けていて、全快する可能性も高くはない、とは聞いていました。しかし、再手術が必要とは聞かされていませんでした。夫婦で悩んでいるのですが、やはり法律的に責任をはっきりさせたいと思っています。医療機関に対する訴訟というのは一般的に難しいのでしょうか。」という質問を続けて考えていきましょう。
過失の評価は主観だけでは足りない
前回「ミス」があった、「ポカ」があった、という評価は、自分の主観だけでは足りず、第三者がどのように思うのかが法律的には重要である、ということを考えました。難しい手術で全治しないから、不満がある。そうすると、すぐに訴えられるとは言えないわけです。
その難しい手術をしたり、経験があったり、学識がある人がどのように考えるのかが重要なのです。
そうすると、弁護士としては、医療過誤があった、と相談を受けた場合、その場で判断はできず、協力してもらえる医師と良いネットワークを持っていることが重要です。私が知っている医療過誤をよくやっている弁護士は、いつも医師のネットワークとつながって情報交換をしています。どの弁護士でも医療過誤ができるわけではなく、ちゃんと医師や医療関係の人たちとネットワークを持っているかどうかが、カギとなります。
また、医療過誤については、一人の弁護士の意見を聞くだけではなく、できることなら色々な意見を聞いて、冷静な判断をすることも重要だと思います。
訴え出るときのルールー出訴期間は短い
さて、「ミス」があった、「ポカ」があったであろうと、いうことになると、過失や契約の不履行を求めて出訴することになります。
出訴については、各州でまちまちに法律で決められていますが、カリフォルニア州では、損害が生じてから1年間以内、というのが原則です。例外的に場合によっては、損害が生じてから3年間以内、ということになっています。どちらにしても、あまり長期の設定がされていませんので、注意が必要です。
慰謝料額の上限
それから、交通事故のような一般的な過失を問う事件とは違う制限が医療過誤の事件には設けられています。すなわち実際に手術から生じた損害以外の、慰謝料(Pain and Sufferingなど)については、最高で25万ドルに上限設定されています。この上限設定は1970年代に設定されたまま、変わっていません。
また、弁護士費用も成功報酬で原告側弁護士が報酬を受ける契約がされている場合、弁護士報酬についても上限が細かく設定されています。
医療過誤事件は、通常の過失を基礎とする訴訟に比べて、かなり制限されている部分があるのです。
この医療過誤事件の制限は、医師や医療機関が安定して業務に専念できるための法制度であると言われていますが、実際に利しているのは、保険会社であるといった批判も存在しています。また、70年代に決められた慰謝料の上限は、額が現在でもまったく変わっていないため、実際に被害に遭った人たちの損害の回復が充分ではないのではないか、という疑問も出ています。
総じて難しい面が多い医療過誤訴訟
上記でわかるように、医療過誤訴訟というのは、簡単ではなく、様々な制限もあるのです。
また、もともと、「ミス」があったのか、「ポカ」があったのか、といった問題についても、協力医師を探すという必要性もでてくるのです。
今回質問されている方についても、ご家族の再手術が必要である、という話ですが、質問の内容だけを見ても、なかなか「ミス」があったか、判断することは難しい状況です。やはり、医療過誤については、協力医師のたくさんいる弁護士の意見を具体的に聞いて、どのように対応するのかを考えていかなければならないと思います。
次回また新しくいただいている質問を考えていきましょう。夏のような日もでてきましたが、まだまだ春の花も楽しめますね。できるだけ外出して、自然を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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